Phase.399 『捜索者 その4』
草原エリアに現れたモンタと、小田。2人から小貫さんが、先ほどまでパブリックエリアの方にいたという話を聞いた。そしてその後、スタートエリアに向かったと――
だからスタートエリアに向かった。追いかける。その途中、草原エリアとスタートエリアの中間にある森路エリアで、小貫さんを捕まえる事ができた。
小貫さんと佐竹兄は、これまで面識はなかったようだ。だけどお互いに存在は知っている。小貫さんは、かつての仲間だった佐竹さんに、兄がいる事を知っていたし、佐竹兄も弟の友人であり、職場の同僚に小貫、戸村、須田という仲の良い3人がいる事を知っていた。
草木が生える鬱蒼とした森路エリア。そこで佐竹兄は小貫さんと出会い、暫く互いに黙って見つめ合っていた。小貫さんは、佐竹兄の顔を見続け、ようやく何かに気づいた。実の兄弟なのだから、とうぜん面影がある。
小貫さんが何かを言おうとした瞬間、佐竹兄は猛ダッシュして、小貫さんに迫ると胸倉を掴んで近くの木に叩きつけた。
「ぐはあっ!!」
「てめーが、小貫かあああ!! この野郎!!」
慌てて翔太、岩城さんと3人で佐竹兄を止めに入る。だが凄い力だ。引きずられて、押しのけられる。小貫さんの苦悶の顔。
「やめろ、佐竹!!」
「おいおいおい、やめろって!!」
佐竹兄は岩城さんと翔太を押し倒して、小貫さんに更に迫った。腰の辺りにしがみついていた俺は、なんとか耐えているけれど、どちらにしても俺の力だけじゃ佐竹兄を止める事なんてできなかった。
「おい、小貫!! お前、俺の弟を見捨てたんじゃねーだろーな!!」
「うっ! 離してくれ!」
「離せだって? なら、答えろ!! 弟や戸村、須田が死んだのに、なぜお前だけが生き残ったんだ? お前らはいつも一緒に行動をしていた。なのにお前だけが生き残っているって事は、お前は弟達を見捨てて1人だけで……」
「うわあああっ!!」
首を掴まれて身動きできなかった小貫さんだったが、力を振り絞って思い切り佐竹兄の顔を殴った。佐竹兄は、ビクともしなかったが、小貫さんの首を掴んでいた手を離した。その隙をついて、翔太と岩城さんが再び佐竹兄に掴みかかる。
「ごほっ! ごほおおっ!!」
「おい、どういう事だあああ!! 小貫!!」
「どうする事もできなかったんだ!! 俺にはどうする事もできなかったんだよおおお!!」
唐突に小貫さんが叫んだ。
俺は立ち上がり、2人の間に入る。そして佐竹兄を睨みつけて言った。
「佐竹さん。約束したな。ここでは問題を起こさないって」
「そうだが、これは仕方がないだろ。こいつは弟を見殺した」
「見殺してはいない」
「なに?」
「小貫さんからちゃんと、話を聞いていないのに決めつけるな。それに俺とあんたは、約束を交わしたのにあんたはここへ来て、いきなりその約束を破った。理由がどうであれだ」
「なんだと⁉」
「佐竹さん……あんたの弟なら、もっと理性的に話をするだろうし、一方的に物事を見たりはしないと思う。実の弟がこんな事になったんだ。つらいのは解るし、誰だってそうなったらそうなる。だけどだからって、そのどうしようもない気持ちを小貫さんにぶつけるのは、筋違いってもんだ」
そうだった。
小貫さんは、佐竹さん達を見殺しにしてはいない。全て、小貫さんから話を聞いた。あの時、小貫さん達を襲ったブルボアは異常だった。それで小貫さんだけが生き残ったのは、はっきり言って奇跡だった。
生き残った後も、誰より苦しんだのは自分の目の前で仲間が死んでいった光景を直面した小貫さんだったはず。
それは言葉にならない位、悲痛だったことだろうと思う。
「じゃあ、どうすればいい。何かいい方法でもあるのか?」
「話をすればいい。もっと理性的に落ち着いて、2人で話をすればいいんだ」
「解った。それじゃ、話を聞いてやる」
佐竹兄がそう言ったので、俺は小貫さんにもそれでいいか聞いた。小貫さんは……頷いた。俺は2人だけで話をさせる前に、もう一度佐竹兄に迫って言った。
「佐竹さんのお兄さん」
「佐竹でいい。弟も俺も佐竹だからな」
「それじゃ、佐竹さん。一応、もう一度あなたに言っておきたい事がある。だから、しっかりと聞いて、その意味をちゃんと理解してくれ」
「ああ、なんだ」
「俺はあなたがあの佐竹さんのお兄さんで、弟さんを探して困っていた。更に言うと、いい人そうだったからこの場所にも連れてきたし、ルールを守れるなら仲間に迎えたいと言った」
ここで佐竹兄は、言葉を挟んでこようとした。だけどさせずに、俺は続けた。
「弟さんや、小貫さんの事も正直に話した。あなたが信頼できる人だと思ったから。だけどあなたは、ここへ来て早速俺との約束を破った。小貫さんに掴みかかった」
「それは……」
「でも、そうだった。それだけ今、言っておきたかった」
佐竹兄と岩城さんは、俯いてしまった。俺は小貫さんの肩をポンポンと触る。
「小貫さん、もう一度だけ彼と話をして欲しい。もう一度だけでいいから」
「ああ、解った」
「翔太、そっちに行こう」
「え? おお、そうだな。うん、そうだ」
鬱蒼とした森の中、俺と翔太は小貫さん達の話が聞こえない辺りにまで移動すると、見つけた倒木に腰をおろした。すると翔太も同じ倒木に、「これいいな」と言って子供みたいにはしゃいだ感じで座った。




