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Phase.387 『レベル上げ その1』



 大谷君達を、バリケードの前に呼び集めた。


「よーーーっし! 野郎ども集まったか!! 翔太、点呼!!」

「えらい偉そうだなー、トモマサ!」

「そりゃそうだ。このチームのリーダーは、俺様だからな。ワッハッハ」


 そう、結局トモマサの意見を受け入れてしまった。


 だけど驚いたのは、その後に言った大井さんの案。そっちの方が、びっくりする出来事になってしまった。


 トモマサ一人で、こんな夜に拠点の外へ出す事はできない。だけど俺、翔太、堅吾が一緒についていけば……っていうのと、拠点からはあまり離れない。目視できる範囲で、あくまでもウルフを追っ払う。そういう事で許可したつもりだったんだけど……


 大井さんの案というのは、そのトモマサに大谷君達も加えるという事。トモマサは、戦いを望んでいるんだし、どうせ追っ払うというよりは、戦闘になる。それなら丁度今、拠点付近にウルフの群れがいるのだから、ついでにそいつらを倒せば、沢山経験値が入るんじゃないかという案だった。


 以前、クランの仲間全員に確認をしたけれど、来るべき日にはこの拠点にいる全員が、仲間と一緒に行動を共にするという回答だった。でもそれならそれで、スマホ内に入れてある『アストリア』のアプリに表記されている自分のレベルを、5以上にアップさせておかなければならなかった。


 今の時点では、大谷君達――特に高校生部隊はレベル5に到達していないものが多い。だからこそ、これからウルフを追っ払ったり倒すというのであれば、拠点も守れて経験値稼ぎもできて、両得だと大井さんは考えたみたいだった。


 俺としては、どちらにしても今週以内にスマホを持つ、【喪失者(ロストパーソン)】以外の者はレベルを5に到達させていないといけない訳で、何処かで魔物の討伐に向かわなければならないと思っていた。だからその問題も解決する事ができて、尚且つトモマサの気持ちも解消してやることができるという理由から、この大井さんの思いきった案はとてもいいと思った。


 賛成すると、早速大谷君、小早川君、有明君、和希、モンタ、トイチ、小田、モージ、蟻群が集められた。大谷君は、あのメリーやアイちゃん達を助けたあの時に、レベルがあがっていたらしくて、以外にも現在4だった。もうあと一歩という所だけど、彼と仲のいい和希は3……他の者は揃ってオール2だった。それでもまだ来たるべき日までには、時間的に猶予もある。十分にレベル5には、到達できるだろう。


 因みに、成田さんや松倉君、不死宮さん、三条さんだって現在レベル5には届いていないので、この先何処かでレベルアップをしなければならない。


 新メンバーの2人は、竜志がレベル5で安藤さんが6。まったく問題がなかった。


「それじゃ、トモマサ。皆の事を頼んだぞ。翔太と堅吾は、トモマサの援護と他の皆を守ってやってくれ」

「おお、本当に俺がリーダーか! てっきりユキがついてくるかと思ったけどな。そうでなくても、翔太がリーダーとか」

「俺も参加はするけど、誰かが拠点側で待機していた方がいい。その方が、そっちも安心して行動できるだろ。だから俺と北上さん、大井さんはここに残って、何かあれば援護に回る。それにこれから長い目で見ても、翔太だけじゃなくて、トモマサや堅吾にもこれから誰かを引っ張っていってもらわなくちゃならないかもしれないからな。いい機会だろ」

「そういう事か、なるほどな。解ったぜ! それじゃ、翔太、堅吾! そして野郎共、俺についてこい!! ウルフを狩るぞーー!!」

『おおおーーー!!』


 トモマサは、意外と皆を統率できていた。これなら問題はないかな。それに翔太と堅吾もついてくれているし。翔太の近くにいくと、囁くように言った。


「頼むぞ、翔太。トモマサがもしも暴走するようなら、お前と堅吾が止めるんだぞ」

「な、何だって!? そりゃ無理だろ。どうみても、蟻とマンモスだ。トモマサみたいなデカい筋肉ダルマを、俺達だけで止められる訳ないだろ?」

「大丈夫だ。トモマサもお前の言う事は聞いてくれる。一目おいてくれているからな。あと堅吾は空手家で有段者だ。死に物ぐるいになれば、お前と力を合わせてトモマサを止められるかもしない」

「おいおい、マジかよーー」


 冗談のつもりで言ったんだけど、翔太は不安そうな顔をした。


「それでもヤバくなったり、何かあったらこっちに手を振れ。助けにいくから」

「本当だな、ユキー。信じているぞ」

「ああ、当たり前だ」


 拳を互いに合わせる。すると翔太は、にこっと笑ってトモマサのもとへ行き、大谷君達皆を集めていざバリケードの外へと出た。大谷君達は、とても不安そうな顔で武器を持つ手も震えている。逆に小田やトイチ達は、「やってやる」「俺が倒してやる」などと言ってやる気になっている。


 俺はもう一度、大きな声で皆に対して大きな声で言った。


「くれぐれもあまり拠点からは、離れるな。ウルフは、向こうから襲ってくる奴から狙って倒すんだ。突出してくる奴を囲んでな。それと丘までは行くな。あのデカいのがこっちへ来る気配を見せたら、絶対に戦おうとせずに全員拠点に向かって全力で逃げてくるんだ。いいな」

『おおおーーー!!』


 全員が返事をしてくれる。そう言えば、こんなのでも俺は一応リーダーだっけか。


 バリケードをもとに戻し、そこで俺と北上さんと大井さんは皆を見守る。対してトモマサは、皆を率いて徐々にウルフの群れがいる方へと前進を始めた。


 これだけ人数がいるんだ。だけど、油断は禁物だ。いくら月明りがあるといっても夜には変わりはないし、昼間よりは視界も悪く見えていない部分もある。いきなり死角から、とびかかってくる事だってあるんだから、十分に気をつけないといけない。


 拠点から離れて行くトモマサ達の後ろ姿を、俺はじっと眺めていた。

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