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Phase.384 『大型の魔物 その2』



 スマホに入っている『アストリア』のアプリ。これを見ると、自分の現在のレベルが表示されていた。


 今の所、このレベルはスマホ所有者のレベルって事で間違いないんだけど、俺達の直接的な強さを示している訳ではなかった。


 例えばこういうファンタジー世界が主な、ゲームなんかじゃレベルを上げると、腕力や魔力、体力などそういったものが上昇する。しかし、このアプリに表記されているレベルは、上げたからと言って自分自身の能力が実際に向上するという効果はないようだった。少なくとも俺自身もそうだし、翔太や北上さん、皆もレベルがあがったから強くなっていると感じている者は誰一人もいない。


 だから今の所、このレベルの意味は、運営によるサービスなどを受けられる条件の1つだと思った。例えば俺は10万円、現金で支払いスマホに入れてもらった能力だけど、【鑑定】の能力。バウンティサービスなどもあるけれど、それはきっと金さえ払えば誰でも受けられるサービス。


 そして一週間後にやってくる転移サービス休止期間。この期間中は、一切の転移ができないそうだけれど、その間にこっちの世界にいてると、とうぜんながらもとの世界へは戻れなくなるらしい。


 それで運営が考えたのだろう。レベル5以下の者は、転移サービス休止期間がやってくれば、強制的にもとの世界へ戻される。ただアプリがないとそもそも転移は使用できないので、【喪失者(ロストパーソン)】は、当てはまらない。


 うちのクランのメンツの気持ちは既に全員確かめたけれど、転移サービス休止期間中は全員こっちの世界に残るらしい。つまり条件に該当しない【喪失者(ロストパーソン)】以外の者は、レベルを5まで引き上げておく必要がある。その時が来るまでにだ。


 …………


 なぜこんな時に、こんな事をいきなり思い出して考えているのかというと、ちゃんとした理由があった。


 俺達のクランには、例えば大谷君達などレベル5に達していない者がいる。俺は因みにレベル6で翔太も5になっていた。因みに北上さんと大井さんにも聞いてみたけど、2人共6になっていて、今不在中の鈴森は俺より一つ上の7だった。


 大谷君達は、レベルが足りていないし、この世界には残りたいと言ってくれている。彼らをこの世界へ引きとどめる為にはレベル5に到達しなくてはならず、その為の方法として今確実に解っている方法は魔物を倒す事だった。


 だからもし、今この拠点の近くにウルフの群れが沢山いるのなら、これは願ったりかもしれないと思った。拠点近くを徘徊するウルフの群れを放置するのは、安全面においてこのままにもしておけないし、退治すればレベルアップも稼げる。


「おい、ユキー!! あれ見ろよ、景子ちゃんが言っていた奴だぞ!!」


 バリケードの向こう。外の世界。草原の更に先に見えるなだらかな丘。そこに姿を現した何十匹ものウルフ。それらを率いているのだろう、とても大きなウルフが俺にも見えた。


「た、確かにデカいな! ヒグマよりも大きく見えるな」

「ああ、やばいぜアレは。あっ、そうだ! もしかして」


 翔太はそう言って、スマホを手に取りいそいそと何かを調べた。いや、間違いなく向こうにいるウルフの事を調べているんだろう。堅吾が翔太のスマホを覗き込む。


「あった? 何か書いていた?」

「ああーー、ちょい待ち! あった! やっぱあれ、懸賞金ついているぜ。なんとその額、500万だ」

『ご、500万!?』


 全員で一斉に聞き返してしまった。俺にとってもそうだし、堅吾やモンタにとっても、大金。現役高校生である大谷君達にとってなんていうのなら、もうとてつもない金額に思えているだろうか。


 びっくりしてひっくり返る堅吾とモンタ。今度は俺が翔太のスマホを覗き込む。


「マジか。ほんとだな。名前はなんだ? ウルフ亜種とか?」

「いや、ちゃんと書いてあるぜ。ブルーファングっていうウルフの上位種だな、ありゃ。しかも懸賞金つきの、やべー奴だ。どうする、ユキー?」

「どうするって、やるしかないだろ。できれば夜は戦いたくないけど、だからといって昼とかなら俺や翔太とかは、必然的に会社があるから参戦できないしな。とりあえず、来るべき日までの課題だったレベル上げもできるかもしれないから、レベルの低い者をここへ集めよう」

「解った、じゃあ……」

「任せてくれッス! トイチとか、俺、急いで呼んで集めてくるッス」

「じゃあ、僕達も行ってきます!」


 モンタと大谷達が挙手して、現在のアプリに表記されているレベルの低い仲間を呼びにいってくれた。


「そうだ、モンタ、大谷君! 北上さんや大井さん、成田さん達にも一応知らせておいてほしい。助けてもらいたい時には、声をかけるからって。あと、南エリアにいるだろう豊橋専務にも同じように知らせて、絶対に拠点から外へ出ないように伝えてくれ」


 モンタ達は、「わかりました」と言って、方々へ駆けて行った。


 さて、どうするか。


 見えたウルフ達は、さっきよりもこっちへ更に近づいてきているような感じもする。またそれに比例して、びりびりとなにか殺気のようなものも感じる。それもそうか。あいつらは、俺達を餌に見ているのだから。


 はっ!


「どうした? ユキー!! なんかあったか?」

「いや、それより出羽さん。ちょっと頼める?」

「え? うん」

「今から羊の住処エリアに行って、言葉は通じないだろうけど、なんとかジェスチャーとか駆使して、ストレイシープ達にも警戒するように伝えてくれ。羊なんて、狼の格好の的にされそうだから。どうしても伝わらなければ、メリーを探してくれ。メリーなら、きっと出羽さんの言いたい事をくみ取ってくれる」

「わ、わかったわ! それじゃ行ってくる!」


 全員に指示し終えると、俺と翔太と堅吾の3人は、バリケードの真ん前に立ち、外をうろつくウルフ共との睨み合いを続けた。

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