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Phase.356 『廃村 その2』


 

 ギシャアアアア!!


 ゴブリン共の雄叫びが聞こえた。複数。何十匹という数のゴブリンが森の中から飛び出してきて、廃村へと迫る。


 俺達は武器を抜いて、廃村を襲撃しようとしているゴブリン共を迎撃するべく向かって行った。翔太が叫ぶ。


「ユキーー!! 行くぜー!!」

「ああ、白兵戦だけど、こうなったら仕方がない!! ゴブリン共に廃村に入られたら厄介だ!! このまま迎撃して、1匹残らず倒してしまおう。だがくれぐれも皆、気を付けてくれ!! 敵1匹に対して常にこちらは、2人以上であたるんだ。いいな!!」


 全員が返事をした。まずは、射程距離に入ると、北上さんが足を止めてゴブリンに向けて矢を射った。命中。1匹2匹と倒していく。やっぱり彼女の射手としての力は凄まじい。


 今更ながら、北上さんと大井さんを失った『幻想旅団』というクランは、かなりの痛手だなと思った。うちのクランの仲間としても、もう彼女達2人は欠かせない大事な戦力となっている。


「だりゃああああ!! ゴブリン共がああ、片っ端から粉微塵にしてやるぜえええ!!」


 トモマサがゴブリンに向かって突っ込んでいく。両手には、斧。あれだけ1人で行くなって言っているのに……チラリと小貫さんと目があった。すると彼は、俺が気にしている事を理解してくれたのか、軽く頷くとトモマサの後ろを追っていってくれた。流石は小貫さんだ。佐竹さん達と、よく連携して魔物と戦ったりしていたんだろうけど、手慣れている。


 俺は翔太、郡司さんと共に並んでゴブリン共に突撃した。


 ギャギャアアアア!!


 ガン!! ギン!!


 ゴブリンとぶつかり戦闘になる。俺と翔太は剣、郡司さんは鉈を振った。ゴブリンとは何度か戦った経験もあって、倒せると思っていた。


 子供位の身体に、力もそれ程強くない印象がある。だが人と同じく武器を使うし、動きはすばしっこくて、ずる賢かった。なかなか思うようには倒せない。


「くそっ!! このゴブリン共めーー!!」


 ギャハハハ!!


 ギン!! ガガン!!


 動揺しているのが見透かされているようだった。知らず知らずのうちに、ムキになってゴブリンを倒そうと攻めていると、逆に隙をつかれて短剣で腕を軽く斬られた。血が滲む。焦りが生じる。ゴブリンは俺の心の内側を見抜かすように、ニタニタと笑い始めた。


「ユキーー!!」


 俺が焦っている事に気づいた翔太が、俺の名を叫んだ。


「ああ、解っている!! 大丈夫!!」

「ほんとかよ。腕、ちょっと斬られて血がでてんじゃんか!!」

「大丈夫だって、これくらい!! さあ、さっさとやるぞ。早くやっつけて片付けてしまわないと、向こう側にいる奴らも集まってくる」


 ざっと見ても30匹以上はいる。散らばっている。


 刹那、後方から大勢の声がした。振り返ると、廃村から尾形さんを筆頭に30人程が武器をかかげてこちらに駆けてきていた。


「うおおおおお!! ゴブリン共を狩りつくせーー!! ここへ攻めてきた事を後悔させてやれえええ!!」

『うおおおおおおお!!』


 大勢の歓声。人数も圧倒的で、臆している者もいない。それを見たゴブリン共は、形勢逆転されたとばかりに尻尾を巻いて逃げ始めた。


 尾形さんはこちらに気づいた。他の者達に、ゴブリン共の追撃を任せると俺達の方へ近寄ってきた。


「おおおー!! 椎名さんじゃないか!! こいつは驚いた。どうしたんだ、こんな所で?」

「尾形さん」


 北上さんと小貫さん、そしてトモマサをこっちへ呼び戻す。尾形さんは、快く俺達を廃村へ招いてくれた。


 廃村に足を踏み入れると、ここには更に人がいる事が解った。これだけいるとなると、全体で50人以上はいるかもしれない。驚いている俺の顔を、尾形さんは覗き込んで言った。


「どうしたー? ああ、さてはこの人の数に驚いているな。ここはついこの前までただの廃村だったのに、今はこんなにも人がいるからな」

「ああ、大勢いる。もしかして皆、尾形さんのクランメンバーなのか?」


 尾形さんは、大笑いして俺の背中をバンバンと叩いた。


「まあ、ちょっと落ち着いてから話そう。後、そうだ。俺達の拠点をついさっき襲撃してきたゴブリン共から守ってくれたよな。その礼もまだだしな。兎に角、こっちへ来てくれ」


 翔太や北上さん、そして小貫さんと顔を見合わせた。まあついて行っても問題ないかな。自分達以外の拠点がどうなっているのか、今日ここへ来た理由はそれを見にきた訳だし。


 村の中を歩いた。途中、出くわす者達と尾形さんは気さくに挨拶をする。この人達全員が、本当に尾形さんのクランの仲間なんだろうか。


 廃村には沢山の家があった。ほとんどが一目で解るような古い家。朽ちている。昔異世界人が使っていた家だろうか。家というよりは、屋敷といった方がいい程の大きな建物の前までくると尾形さんが言った。


「ここがリーダーの家だ。つまり俺が使っている。さあ、どうぞ入って」

「ありがとう、それじゃお邪魔します」

「お邪魔しまーーす」


 俺の言葉に翔太が続き、そして皆が続いた。俺達は、尾形さんの拠点に入り、彼の住処に招かれた。


 屋敷の中へ入ると、びっくりした。想像を越えて、本当に広かったからだった。

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