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Phase.352 『他の拠点へ向けて』



 まだ昼にはなっていなかった。だけど昼飯は、もう食べた。外に出る準備は、できている。


 まずは一番近い場所、尾形さんの拠点から行ってみる事にした。一緒に同行してもらうのは、翔太と北上さん、それにトモマサ、小貫さん、郡司さんがついてきてくれる。郡司さんと行動するのは初めてか。


 俺達が拠点を留守にしている間は、ここの事を大井さんと成田さんに任せた。本当は、長野さんと鈴森についてきて欲しかったんだけど、2人は準備が整うと俺よりも早く拠点から旅立ってしまった。行動が早い。

 

 予想はしていた事だけど、長野さんが鈴森に話をすると、鈴森は俺が了承している事を確認すると二つ返事だった。


 主戦力と言っていい頼りになる仲間、2人が不在となると結構心細い。だからトモマサを引っ張ってきた。腕っぷしはナンバーワンだし、拠点の外へ行くのに一緒に来てくれると頼もしいから。


 後は、よそ様の拠点にお邪魔するのに、北上さんか大井さんがいてくれればいいなって思った。2人は、慣れているから。だから北上さんが一緒に来てくれて良かった。


 全員、俺と同じく昼ご飯はもう済ませている。俺達は草原エリアに集まると、北の外との境目に移動した。


 バリケードを潜る。拠点の中はある程度、草木を刈ったので見渡せるようにはなったけど、外の世界は相変わらず鬱蒼としている。


 成田さんや松倉君が、外にボーボーと生えている草木も刈ろうかと言ってくれたけれど、やっぱりバリケードの外は心配なので、とりあえずは内側を重点的にとお願いした。


 でも、いつかは外の伸びきった草木も少しは除去しなくちゃいけないだろう。


「それじゃ行こうぜ、ユキー。とりあえず、まずは河近くの拠点に向かうんだっけか?」


 翔太が言った。そう、そこに向かう予定。そして可能ならばもう二つ程、別の拠点も回れればいいなと思っているけど、実際はいいとこもう一つかな。


 だいたいの場所は、既に長野さんが知っているという事で聞いているし、俺達の拠点からも少し時間はかかるものの、歩いていけるとの事。


 クエックエックエ!!


 空を何羽かのカラスのような鳥が飛び去って行った。俺達のいたもとの世界に生息するカラスの一回りか、二回り位の大きなカラスで、じっと見ると何か背筋がゾっとする感じがする……そんなカラス達だった。


「今翔太が言ったように、まずは河近くにあるという拠点に行ってみようと思う。そこには廃村があるみたいなんだけど、今は尾形さんという人がリーダーのクラン『魔人の拳』が、拠点としているらしい。あと、皆も知っていると思うけど、『魔人の拳』には問題児の市原、池田、山尻もいる。よそ様とのもめ事は、できる限り避けたいからそのつもりでいてくれ」


 俺の言った事に、翔太が続けた。


「あと、魔物もだよな。今、俺達の拠点の周辺にゃ、えらくヤバイ魔物が集まってきているんだろ?」

「そうだった。懸賞金付きのやつらだ。でも正確に言うと、周辺って言ってもこの世界はとてつもなく広いからな。俺達の拠点もそうだけど、ここら一帯――つまり尾形さん達のいる廃村も含まれているし、続けて見に行ってみたいって言っている他2カ所の拠点もその範囲に入るだろう。そこいら一帯付近に、懸賞金のついた危険度の高い魔物がうろついている。十分に気をつけて欲しい」


 ここから北へ向かって歩き始める。そこには河があるから、それが目に入れば東へ向かっていけばいい。


 川下方面に向かえば、尾形さんの拠点がある。時間がもったえないので、歩きながらも話をしていると、今度はトモマサが真後ろから声をかけてきた。


「まあ、魔物が出てきたら俺様の出番だな。この斧でぶっ叩いてやっつけてやる。だから、心配はいらんぜ」

「そうだな。戦闘に関しては、トモマサを一番頼りにしているよ」

「おう、任せろ」


 トモマサはそう言って、自信ありげに拳を鳴らした。


 草木がかなり生い茂っている場所へと足を踏み入れる。道なき道。この世界へやってきた時から、道なんてものはなかった。でも丸太小屋という、人が作ったものはあったけど……


 ガサガサッ! ガサッ!


 草の音を立てる。鉈を取り出すと、それを振って道を作った。先頭を俺と翔太、その後ろにトモマサと北上さん、更にその後ろに小貫さんと郡司さんが続いた。


「椎名さん」


 小貫さんが後ろから俺の名を読んだ。振り返る。ついでに、全員ちゃんと揃っているかを確認する。


「どうした?」

「これだけ草木が生い茂っていると、何か潜んでいるかもしれないし、襲われたらヤバい。どちらにしても周囲の状況が解らないなら、もう少しペースを上げた方がいいかもしれない。どうだ?」


 小貫さんの言う事は確かにそうだと思った。危険な橋は、一気に渡ってしまおうって事だ。


「解った。それじゃ、もう少しペースをあげよう。このまま北へ進めば、どちらにしても河へはぶつかるはずだから、道に迷う事もないだろうしな。よし、そうと決まればペースあげていくぞ翔太!」

「おう! まっかせろー!!」


 鉈をブンブンと振る。歩くペースもあげて直進する。


 俺と翔太が無心になって鉈をひたすら振るっている後ろで、北上さんやトモマサ、他の皆は周囲を警戒してくれていた。


 途中から流石に疲れてしまって、鉈を振るう腕が動かなくなってきた。くっそー、まだ20代そこらの時は、もっとやれてた気がするんだけどな。


 ザ……ザーーーー……


 水の音?


 北上さんが、勢いよく前に出る。


「ちょ、ちょっと北上さん! 一緒にいないと、危ない!」

「うん、ちょっと前に出て見るだけ!」


 俺達がいる場所より、ちょっと前に駆けて行く北上さん。そして立ち止まって何かを見渡すと、直ぐにこっちへ戻ってきた。翔太が聞く。


「あった?」

「あったあった! 河があったよ! 大きな河!」


 ピョンピョンと嬉しそうに跳び上がって、はしゃいでいる北上さん。翔太が声をあげる。


「うおおおお!! 河かーー!! 本当にあったんだな、そんな河!! でもどれ位大きいんだ?」

「もうそこに見えているよ。だから自分で見てみればいいんじゃない?」


 俺は翔太と顔を見合わせると、北上さんが指す方へと駆けた。草木が生い茂る中を駆け抜けて、拓けた場所へ飛び出すとそこには大きな河が俺達の目の前に現れた。

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