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Phase.341 『焼肉と飲み会』



「イエーーイ!! 美幸ちゃん、そっち肉ある? タレもそっちに回してくれる?」

「あーーーっい!」


 翔太と北上さん。


 時間もすっかり夕方になっていた。雨は降り続けていて、どんよりと暗い。


 だけど広く張った大きなタープの下、仲間とワイワイしながら食べる焼肉は、とても楽しかった。


 最初は俺と未玖。そこにアイちゃんが加わり、翔太と北上さんと大井さん。更に、近くで今日は、一日釣りを楽しんでいた小貫さんと最上さんもやってきてくれた。


 いよいよ肉を焼き始める。人数が思ったよりも多くなったので、肉を焼くための焚火というか、竈を3カ所も作った。でもこれで、それぞれが好きなものを好きなタイミングで焼いて食べる事ができる。


 こっちは、俺と小貫さんと最上さんの大人チーム。そして向こうは、翔太と北上さんと大井さん。更にその隣、未玖とアイちゃん。2人の間にラビがいて、さっき食べたトウモロコシの残りや、未玖の育てたニンジンやらを齧っている。


 席は別に決まってはないので、それぞれ好きなようにまた食べ始めたら、移動して回ればいい。


 最上さんが網に肉を置き始める。するとジュジュジューっという美味しそうな肉の焼ける音と共に、煙と美味そうな匂いが辺りに充満する。あー、この匂いを嗅いで、自分がかなり空腹だった事に気づく。


 最上さんが焼肉を焼いていると、翔太や北上さん、アイちゃんの楽し気な声も聞こえてきた。宴が始まった。


「それじゃ、とりあえずこれからでいいかな?」


 小貫さんはそう言って、缶ビールを人数分出してきた。


「ありがとう。それじゃ、向こうにも配ろうか。アイちゃんは、歳って……」

「19歳です。でも、お酒は別にいいかな」

「そうだね。一応、やめておこうか。それじゃ、翔太! はいっ!」

「うおっと!! サンキューー!!」


 翔太に向かって、缶ビールを投げる。北上さんと大井さんの分も合わせて。


 さあ、これでいきわたった。未玖やアイちゃんは、それぞれ自分用にジュースを用意している。あれも翔太のクーラーボックスに入っていたもの。あいつ、本当に用意がいいな。


 肉が焼けてきて、飲み物が全員にいきわたった所で翔太が声をあげた。


「はい、静かに静かにー!! 全員、源の静か(みなもとのしずか)にーー!!」


 …………さっきまで楽しかった時間が、一瞬にして凍り付く。もしかして国民的アニメ、ドラヤーモンに登場するヒロインの事か!? 翔太は後頭部を摩って誤魔化すと、言葉を続けた。


「よ、よし読み通り!」

「どこが!!」

「そ、それじゃ、静かになった所で……我らがリーダー、ユキー!! お願いします!!」

「お、お願いしますっつったって!!」


 翔太のせいで、全員が俺に注目している。周囲には、雨の激しく振る音だけ。


「え……えーー。今日は、この未玖と始めた集まりに、皆さんご参加頂きましてありがとうございます」


 翔太が何かサインを出す。なんだ、あれ……もしかして、巻きって言っているのか、あいつ。この野郎!


「えーー。まあそんな訳で、今日は俺の職場の同僚で良きオタ友の翔太が沢山、牛肉やらを用意してくれました。これからの『異世界(アストリア)』生活、挑んでいく為にここで美味しい焼肉を食べて、力をつけていきましょう!!」


 何言ってんだ、俺は!


「いいぞーー!!」


 翔太と思ったら、まさかの最上さんだった。


「それじゃ、皆さん!! そろそろ、お肉を食べたいと思いますんで……カンパーーーイ!!」

『カンパーーーーイ!!』


 焼肉を食べ始めると、俺は一回立ち上がって未玖の方を見た。すると未玖は、アイちゃんと仲良く何か会話をしながらも、食事を楽しんでいる。良かった、かなり人見知りする子だけど、アイちゃんともかなり打ち解けられたようだ。あれ、北上さんも混じりだした。そうなると早速、皆は思い思いの場所へ移動する。


 最上さんも「あっち、イカとかホタテとかやりだした。ちょっといってきます」と言って、翔太と大井さんの方へと向かった。そんな訳で、俺は小貫さんと2人で焼肉を食べて、酒を飲む。


「プハーーー、美味い! 美味いね、小貫さん!」

「ああ、美味い。これも全部、椎名さんや秋山さんのお陰だな」

「え? どうして?」

「あのデカい、ブルボア。あいつに佐竹、戸村、須田。皆、無残にもやられてしまった。あの時、皆がいなければ、俺はあの時に死んでいた。その後も、椎名さんに助けてもらわなければ、スマホを壊してしまってもとの世界へ戻れない俺は積んでいただろう。この拠点に招きいれてもらったから、今がある」


 小貫さんは、早くもちょっと酔い始めているようだった。


「それは、俺もかな。小貫さんには、いつも助けられているし、俺達の仲間になってくれて凄く心強い」

「そうかな。佐竹達が生きていれば、もっと俺なんかより力になれただろうけど」

「佐竹さんや戸村さんや須田さん。皆に、拠点作りを手伝ってもらった。そして今は、小貫さんが俺達の仲間だ」


 小貫さんは照れ臭そうに笑うと、小さく頷いた。


「俺は何処までも椎名さんについていくよ」

「ありがとう。是非、よろしくお願いします」

「こちらこそ。それで、次……明日からどうするか考えているのか? 一週間後には転移アプリの休止が始まる。それに対して何か、対策を考えているんじゃないのか?」


 対策なんてものは何もない。どうなるかも解らないし。だけど、やっておきたいことはいくつかあった。

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