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Phase.339 『他の拠点について』



 北上さんと大井さんも、テントやら荷物をこの場所へ運んできた。っていう事は、2人も今日はここで過ごすという事かな。


「ふあーー、しかしものっそい、強烈な雨だね。なんとか濡れないように運んでこれたけど、勢いが全く弱まらないよね」


 髪や服についた、雨露を払う北上さん。大井さんも、延々と降る雨を見つめて言う。


「これだけ朝からずっと雨が降っていると、ちょっと心配になるわよね」


 翔太が、ポケっとした顔で振り向く。


「え? なんで?」

「だって、川とかあるなら、氾濫する可能性だって考えられない?」


 氾濫か。その可能性は、あるのかな。


 翔太はなぜか俺の方をチラリと見た。なんだ? それについて、何か答えろって事なのか。


「今までこの周辺で、大雨が降る事はあったけど、そういう心配は今の所はないかな。確かにこの川エリアにある川を見に行ったら、水量は増えていて勢いも強くなっている。けど、氾濫する程でもないしな」


 なぜ、そう思うのか。その理由についても、想像はついていた。


「まだ見てきた訳ではないけど、ここから北に行ったところに大きな河があるらしい。その近くには廃村があって、今そこをクラン『魔人の拳』の尾形さんが拠点にしているらしいけど。そしてここを流れる川は、その大きな河に向かって流れ込んでいるんだと思う」


 翔太は、唸り声をあげた。


「なるほどなー。流れ出る大量の雨水は、そこへ流れていっているんだな。ってか、その廃村を利用した拠点、尾形さんがいるっていう事は、市原や山尻、池田の野郎もいるって事かー」

「そうだ。尾形さんとは既に話もしたけれど、いい感じの人には見えた」

「ぶっているだけかもしんねーけどな」

「そうだな、確かに心の内側までは解らない。市原達以外にも、尾形さんの所にはあまり良くない人達も出入りしているみたいだし……そういう面では、ちょっとアレかもしれないな」


 良くない人達――その言葉に、北上さんが反応する。


「良くない人達って、ヤンキーとかそういう人達の事?」

「多分そうだと思う。要は、ガラの悪い連中って事かな。ここから近い距離にあるし、転移アプリ休止に突入したら、尾形さんのクランとは、もしかしたら協力しあわないといけない事があるかもしれないしな。他の拠点も含めて、近々行ってみようかなって考えているよ」


 翔太は目をぱちくりさせる。色々と考えているようで、手は相変わらず晩に食べる焼肉の準備を進めている。


「他の拠点ってなんだ? 他にも拠点があるのかよ」

「あるらしい。少なくとも3つ。尾形さんのいる廃村も合わせれば4つって事になるのかな。可能なら今のうちに、コンタクトをとっておきたいと思っている。だって選択肢は多い方がいいだろ」


 転移サービス休止の3週間から1ヶ月。何が起きるか解らない。期間も約って感じで言ってみれば曖昧だったし、ぴったり3週間で終わるかどうかは怪しい。


 今この拠点の近くには、懸賞金のついた恐ろしい魔物共が徘徊もしている。


 つまり何かあった時、もちろんこの俺達が創り上げた拠点を失うつもりは毛頭ないけれど、それに匹敵するピンチに陥った場合、何処か別の拠点のクランに助けを求める事ができるという選択肢は、確立させておきたい。


 もちろん、向こうがピンチの時はこちらが助けなくてはならないだろうけど……それは望むところ。



 ザーーーーーッ!


「ちょっとラビ! こっちに来てよ!」

「アイちゃんが呼んでるよ。行ってごらん、ラビ」


 向こうに目をやると、未玖とアイちゃんがラビと遊んでいる。


「そうそう。あと川が氾濫するかどうかって話だけど、ここの近くで最上さんと小貫さんがずっと釣りを続けているよ。だから、川に何か異常があれば、すぐ知らせに来てくれると思うよ」


 翔太がケラケラと笑った。


「そういや、モガさんっていっつも川にいるよな。もう住んでいるよな」

「いや、住んでいるだろう。まあ、そう言えば長野さんも草原エリアにばかりいるよな。大谷君達やメリーも、いい感じの住処を手に入れたみたいだし、それぞれ自分達にとって一番いい居場所を見つけたんだろうな」

「孫いっちゃんも、今は南エリアの方に行っているしな」


 そう言えば、そんな事を言っていた気がする。でも大丈夫なのだろうか。


 南エリアと言えば、一応有刺鉄線で囲って拠点の一部としてみなしてはいるけど、あの植物が異常に成長し、増殖した日から何も手をつけてないエリア。今はきっとジャングルのようになっている。


 拠点全体がそうなった時に、俺達が知らない間にバリケードをくぐって、ラビはここへ入り込んでいた。だから余計に心配になった。


 南エリアは、特に草木で凄い事になっている。何かが外から入りこんできたとしても、気づけない。翔太は、俺が険しい表情をしているのに気づいて、またケラケラと笑った。


「大丈夫、大丈夫。そういうサバイバル的なんは、孫いっちゃんの得意とするところだし」

「そうだな、鈴森なら心配ないかもしれない。でもさっきの話……別グループの拠点の事もそうだけど、早速明日見に行ってみようと思う」

「見に行く? 会いに行くって事か?」

「まあそうだな。別の拠点に接触するという事だ」


 大井さんが、心配そうな声をあげる。


「大丈夫かな。今、この拠点の周辺って、懸賞金のかかった凶暴な魔物がうろついているんでしょ? ゴブリンの巣だって近くにあったわ。闇雲に行動するのは、危険じゃない?」

「うーん、そうだな。行動は明日だし、それまでにどうするか考えよう。でも転移アプリが使えなくなるのは、一週間後だ。そうなる前に、他の拠点の連中との接触は、どうしてもしておきたいんだ」


 どうせ、晩飯位の時間になれば、鈴森は俺達の様子を見にやって来る。俺や翔太は、今この拠点に揃っているけれど、俺達が留守の時は、鈴森に未玖とこの拠点の事は任せている。鈴森は、口は悪いけど頼りになる男だ。


 ここへ来たら、明日どうするか……あいつの意見も聞いてみよう。

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