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Phase.321 『トイチと成子 その3』



 ――――金曜日。やっと週末がやってきた。


 会社から帰宅すると、速攻で『異世界(アストリア)』へと向かった。何より、トイチと成子の容態がどうなったか心配で仕方がなかった。頼むから、ゾンビになんてならないでくれ。


 不死宮さんを頼りにするしかなくて、あれから彼女にまかせっきりだ。今日からまた連休。これからちゃんと力になれる。あの二人が助かるのなら、俺はなんだってするつもりだった。


 『異世界(アストリア)』。拠点に転移すると、騒ぎになっていた。


 早速こっちに不死宮さんを先頭に、鈴森とトモマサと堅吾がこっちに向かってくる。4人の表情から、何かよくない事が起きたのだと察した。俺は、まず鈴森に向かって言った。


「何かあったのか?」

「ああ。あのゾンビに噛まれたかもしれない二人、十河と成子が消えた」

「えええ!!」


 流石に驚いた。それって、どういう事だ。二人がいないだと⁉


「あの二人が休んでいた小屋には、不死宮と青木がいたみたいだけどな。二人供、少し離れる事があってな、その時にいなくなったらしい。ゾンビに変わっていたとしたら……誰かを襲いに出た。もしくは、なってなかったとすれば、恐ろしくなって逃げ出した。そんな所だろう」


 トモマサを見る。


「もう皆には、知らせている。早く見つけねーとな」


 見つけてどうする? 見つけてゾンビだったら、殺すのか? そんな事を思ったけれど、口にはしなかった。トモマサのせいでもないし、誰のせいでもない。不死宮さんや青木さんだって、トイレとか何か食べにとか小屋を離れる事はあるんだ。


 誰のせいでもない。


 鈴森が続ける。


「とりあえず、翔太や北上達、青木もそうだけど全員で拠点内を探し回っている。もしも俺達の楽園にゾンビがうろついていたら、ゆっくりおちついてもいられないし、拠点を囲んでいるバリケードも、なんの為にあるのかもわからねーからな」

「そ、そんな。まだそうなった訳じゃないし。あいつら、怖くなって逃げ出して、何処かで震えているかもしれないんだ。ゾンビになってしまっているとか、そういうのはまだ早いんじゃ……」


 鈴森のきつい言葉を聞いて、堅吾がそう言ってくれた。


 俺は堅吾に「確かにそうだ」と同意を示すと、皆に言った。


「それじゃ、手分けして探して回ろう。あと、今探し回ってくれている者を含め全員が、最悪の事態も考えて十分注意する事と、少なくともペア以上で見て回ってくれ」


 皆、頷く。堅吾も納得したようだ。


「よし、解った。それなら自分がこれからクランメンバー全員に、注意してくれって言って回るッスよ」

「頼む、堅吾。それじゃ、探しに行こう」


 いきなりいなくなったトイチと成子を探しに、全員向かった。でも不死宮さんだけは、その場に残って俺の顔を見つめていた。後悔の念みたいなのを感じる。


「どうした? 不死宮さん。あいつら、探しに行かないと」

「ごめんなさい。目を離してしまって」

「無理もない。何日もあそこにずっと不死宮さんと青木さんを縛り付けておくなんて、そんなのはできない。誰だって不可能だ。それより、二人供よくやってくれたよ」

「でも……」

「誰が悪いって話をすれば、俺が一番悪い。なんせ、こんな頼りなくても一応、俺リーダーな訳だしな。もっとよく考えていれば……って言っても今は仕方がない。まさか、いなくなるなんて思わなかった訳だし」

「…………青木君は、二人がいなくなって、ずっと探してくれているわ」

「そうか。それじゃ、俺達も探そう。ここでずっと、ああしておけば良かったとか悔いていられる場合でもないしな」


 頷く不死宮さん。


 俺は彼女の肩をポンと軽く叩くと、一緒にトイチ達を探しに向かった。


 二人が休んでいた場所。スタートエリアにある、不死宮さんの小屋。いきなり行方不明になったんだから、その周辺は既に皆探してくれているはず。いるなら、一番そこにいそうだし。


「椎名さん」

「え? はい」

「それで何処から探せばいいかしら。二人がいた小屋の周辺、スタートエリアは既に美幸と海が、くまなく調べてくれたみたいだし……」

「そうだな。それじゃあ、とりあえず羊の住処エリアに行ってみよう。トイチと成子は、もともとは不良グループだ。小田や蟻群達の所に行って一緒にいるかもしれないし、大谷君達とも仲がいいからな。可能性はある」

「ついでにメリー達のいる場所も、異常がないか見てもいいわね」

「そうだな。急ごう」


 俺と不死宮さんは、羊たちの住処エリアにある大谷君達のいる場所へと急いだ。


 スタートエリアを西に突き抜けて、エリアとエリアの間を隔てるワイヤーをくぐる。もともとは有刺鉄線だったが、羊の住処エリアを作って拡張した時に、一応エリアとエリアを区切っておいてもいいかもしれないとなったが、その場合外の世界との境界ではないので、有刺鉄線よりも危なくないワイヤーの方がいいのではと思った。そして成田さん達が、張り替えてくれたのだ。


 張ってあるワイヤーを越えると、そこは草木が生い茂る森。


 もともとここら一帯は、北西の方から草原エリアの方までは大きな森なのだ。そこにスタートエリアという、ぱっかりと拓けた場所があって、周囲はやはり森路エリアと川エリアという森に囲まれている。


 森の中を北西に歩く。確かこのエリアの中央辺りに、メリー達の住処があってその更に北西に大谷君達がいたはずだから。


 向かって歩き続けていると、向こうから一人。森の中、こちらに誰かが歩いてきた。

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