Phase.303 『これからの俺ら』
――――羊の住処エリア。
丸太小屋と井戸のあるスタートエリア、西側に新たに拡張したエリア。その中央には、既にメリーとその仲間、27匹のストレイシープが木や枯草、大きな葉を使って竪穴式住居のような住処を造り始めていた。例えるなら、僕達の拠点内にある、ストレイシープの村である。
そこから少し、北西にずれた所を僕達の住処にした。っていうか、小早川とカイと和希が、先にそこを探し当てて決めたんだけど……
3人はもう僕のも含めて、寝泊まりできるように、その辺りにテントを設置してくれていた。使っていた荷物なんかも移動してきている。
和希に至っては、少し離れた場所にも大型のテントの他に、タープを張って自分のテリトリーを広げている。何かを採取したり、置いておいて調べたりするって言っていたから、自分自身のさながら研究所のような場所を作り上げようとしているのだと思った。
だけどここでは、僕らの自由にしていい場所。椎名さんには、許可をすでに得ている。
アルミラージの肉を3人に見せると、やっぱり皆びっくりしていた。そしてスープにして食べると美味しいらしいというと、カイが丁度今晩はクリームシチューを作ろう思っていたらしく、この肉を使う事にした。
結果は大成功。ほんの少しクセがあるような気がするけど、アルミラージの肉はとても美味しいし、未玖ちゃん達が育て上げた野菜たっぷりのクリームシチューは、何度もお代わりしたくなる程の素晴らしいできだった。
もちろん、お米も自分たちで炊いた。
そう、そういえばこの羊の住処エリアには、実は水があったのだ。丁度、僕らの住処とメリー達の住処との間に、小さな小川が流れているのを発見した。水浴びできるかできないか解らない程の、こじんまりとした小川だけど、それでも水は流れているし澄んでいる。
拠点内では、4番目に見つけた水の手に入る場所になるらしいけど、南エリアのは川ではなく池で、水も濁っていて透明ではない。だから、飲み水にできるのであれば3番目に該当すると思った。
アルミラージの肉を使ったクリームシチューをお腹いっぱいに食べて、仲間と一緒に焚火を囲んで語らって笑い合う。とても楽しい時間。
すると後ろから気配がした。僕達は武器を手に取り、懐中電灯でそちらを照らし出す。すると暗闇の中から現れたのは、なんと陣内君と小田君、それに成子君だった。僕達と彼らは、今は同じクランで仲間なのだけれど、もともとはいじめられっ子といじめっ子の関係だった。
和希は、それを知らないので特に変わった様子はないけれど、僕達は陣内君達を見て緊張していた。
すると、陣内君が言った。
「あの……」
「え? は、はい!」
「あの、椎名さんにこの場所の事を聞いて……」
「へえ、そうなんだ」
更に近づいてくる陣内君達。僕達3人は、顔が引きつる。
「あの、俺らもそっちへ交ぜてくれないか? 駄目か?」
「え?」
「えええ!!」
僕達3人は、明らかに目が泳いで困惑した。だけど椎名さんが言っていた。ここは『異世界』で、もと世界ではないと。
それに陣内君達は、もう僕達と同じクランの仲間だし、仲間同士で喧嘩とかそういう諍いを起こしてもいけないと。小早川もカイも突然の事で、どうしていいか解らないでいるけれど、このまま陣内君達を立たせたままにしている訳にもいかないので、僕が代表して答えた。
「う、うん、いいよ。こっちにどうぞ」
「え? いいのか! それじゃ、邪魔するぜ」
許可が下りると、陣内君達は嬉しそうに僕達の横に座り、一緒に焚火を囲んだ。僕ら3人だけが、なんだか複雑な感じでとても緊張している。だって、それはしょうがない。陣内君達は、もともと市原の仲間だったんだから。
……だけど、今はもう違う。それはもう解っているつもりだけど、緊張はしてしまう。
「よ、良かったらクリームシチュー食べてみてね。僕らはもう食べてお腹いっぱいなんだけど、作りすぎちゃって……」
「え? いいのかよ!! やったー、腹減ってたんだよ!!」
「おいおい、なんだそりゃ。陣内が大谷とかいる場所に行けば、食い物にありつけるかもって言っていたんだろーがよ!」
「あははは、でも当たったじゃねーか!! しかし、本当にうめーな、このクリームシチュー!! 絶品だ!」
「あ、ありがとうでござる」
夢中になってクリームシチューを貪る陣内君と成子君。それに応えるカイ。固まってしまっている小早川を、にこにこと見ている和希。
あれ? そう言えば小田君は食べていない。そう思った瞬間、彼は僕の両肩をぐっと掴んだ。何かされると思って、身体がビクっと反応した。
「ひいいい!!」
「大谷!! それに有明!! あと、小早川もそうだけど……助けてくれてありがとう!! 俺を拠点まで運んでくれて!!」
え?
「あのものすげえデカい、緑色の蛇に締め付けられた時に、本当に死ぬかもって思った。身体の中の全部が、飛び出ると思った。でもなんとか助かって……でもそのあと、自分じゃどうする事もできなくなってしまった!」
「ほ、骨が折れていたらしいから」
「そうだ!!」
『っひいいいい!!』
僕ら3人は怯える。だけど小田君は、僕らを恐怖させるつもりは微塵もなかった。そう、あの時の御礼を言いにきてくれたのだ。
「気にしないで。それに僕らは仲間でしょ。もしも僕があの蛇にやられたりしていたら、小田君だって助けてくれたでしょ?」
「正直言うと解らない。俺らはクズだったから。でも今なら、絶対助ける! それは約束できる! これからは、信じて欲しいんだ!」
小田君は、そう言って小早川やカイとも握手をした。
小田君達とこんな関係を築けるなんて、夢にも思わなかった。小田君を助けたのは、椎名さんが仲間だと言ったから。だけど助けて良かったと改めて思い知らされる。
助けたからこそ、彼らとも信頼関係を築くことができたんだし、その後にゴブリンに連れ去られた時は絶望で張り裂けそうになって、恐ろしくてしょうがなかったけれど、メリー達とも出会う事ができたから。
今日は日曜日。明日からまた平日だ。辺りももう真っ暗になってしまったけれど、煌々と燃え続ける焚火の前で、僕ら7人は遅くまでこれまでの事やこれからの事など、色々と話し合い盛り上がってしまった。




