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Phase.301 『長閑なエリア作り その2』



 メリー達の住処にできる場所、スタートエリアの西側のエリア。


 まずは、この場所を確保する為に有刺鉄線を張って拠点の一部にした。でもただ杭を打って、それに有刺鉄線を巻き付けて張る単純な作業だとしても、結構な広さを確保してしまったので、とんでもない大変な作業になった。


 最初は、僕と小早川とカイと和希、それにメリーと他27匹のストレイシープ。一丸となって作業に当たるつもりだった。でも翔太さんと十河君と成田さんと松倉さんが、手伝いに加わってくれて、更にそこへ海さんやうららさんも手伝ってくれた。


 お昼ご飯を食べてから、いよいよ作業に本気で取り掛かる。これだけの仲間が手伝ってくれていると思うと、ちょっと欲が沸いてきて、どうしても今日中に拠点の確保までしてしまいたいと思った。


 因みに拠点の確保とは、有刺鉄線やワイヤー、バリケードなどで囲みを作って拠点とする事。しかもその作業は、草刈りと共に行う。


 草刈りや邪魔な木の撤去などしていると、それこそ何日もかかりそうなので、とりあえず拠点を区切っている有刺鉄線の周りだけは、それなりに周囲が見渡せるように重点的に刈って拓けた場所にした。


 そしてまた途中から、団頃坂さんや陣内君や成子君も手伝いに入ってくれて、想像していたよりも作業が捗った。


 夕方になり、空が暗くなり始めてきた辺りで、なんとかこのエリアの確保は終わった。後は、この中をどう作っていくか、じっくりと進められる。


 とりあえず、今晩ここで過ごせるように、このエリアの中心辺りに拓けた場所を作り、そこにメリー達の住む場所を作った。


 周囲にはまだまだ草木が生い茂っており、木材には困らないのでいつか学校の授業で習ったことのある、竪穴式住居のようなものを作ってみた。


 木を組み終えると、そこに草などを被せて作る。夜はそれなりに温かそうだし、昼間に降り注ぐ日差しや、雨などが降ってもこれなら防げると思った。


 それを皆で頑張って、10軒も作った。家はなかなかの大きさがある。その上に、ストレイシープはとても小さい身体をしているので、1軒につき数匹で寝泊まりできる。


 完成すると、メリー達は大喜びしてくれた。


 暫く、拠点の確保達成とメリー達が喜んでくれている姿を眺めて、微笑ましく思っていると、椎名さんが大量の何かの肉を持ってやってきた。


「大谷君。凄いな、これ全部君達が作ったのか」

「いえ、翔太さんや海さん、他にも大勢の皆さんが手伝ってくれました。そのお陰です」


 椎名さんと一緒に、メリー達の住処に目を向ける。ストレイシープ達は、未玖ちゃんとか志乃さんからもらった沢山の野菜と果実を、続々と住処に運び込んでいる。その光景が可愛くて、思わず笑ってしまう。


「あははは、可愛いなあ」

「はい、可愛いですね」

「でもメリー達は、魔物なんだよな」

「はい。でも、とても優しい魔物です」

「この『異世界(アストリア)』へ来た時に、俺はエルフやドワーフ、獣人とか異世界人に会えると思ってワクワクしていたんだけどな。未だに出会えていない」

「僕もですよ」

「色々と聞いてはみたけど、誰も会っていない。だけどメリー達のような友好的な魔物には、ようやく出会うことができた。これは、大きな第一歩として考えられるよな」

「はい、そうですね」

「所で、大谷君達はここのエリアの名前を考えた?」

「え? 名前ですか?」

「うん。だって、名前を付けないと不便だろ? 既にいくつかエリアを作ったし、何か名前をつけないと区別しにくい」


 確かにその通りだ。


「あの……僕がその名前をつけてもいいんですか?」

「ああ、いいよ。でも小早川帝国とかそういうのは、無しな」


 二人で笑う。小早川がいたら、物凄い面白い反応をして見せてくれたんだろうけど、今はカイや和希と一緒に、このエリア内で今日の夜、ゆっくりと過ごせる場所を探して回っている。


「それじゃ、羊の住処エリアっていうのは、どうですか?」

「あはは、羊の住処か。それ面白いね。よし、それにしよう! 羊の住処エリアかー。うん、なかなかのネーミングセンスだ」

「ほ、本当ですか?」

「ああ、絶対いいと思う。北上さんや大井さんが知ったら、手を叩いていいねって言うと思うよ。それじゃ、ここは羊の住処エリアという事で決まりだな」

「はい!」


 羊の住処エリアで決定してしまった。僕がつけた名前になるので、なんとなく嬉しいような恥ずかしいような感じになってしまう。


「因みに大谷君達は、明日からまた学校に行くんだろ?」

「え? ええ……」

「ここにはここのルールがあるし、向こうには向こうのルールがある。だからここで、学校に行きなさいとかそういう事は、言わないから安心して。個人的には、行った方がいいとは思うけれどね。俺と翔太、北上さんや大井さんも明日からまた一週間、会社に行かなくちゃだからなー。嫌になるよ」

「夜には、またここに来ていただけるんですよね」

「ああ。さっと仕事終わらせて、ここに戻ってくるから安心してくれ。それまでにもし何かあったら、成田さんとか鈴森とか頼ってくれ」

「はい、解りました」

「ああ、それとこれ。アルミラージの肉だ」

「ア、アルミラージの肉!?」

「うん。角が欲しくて、今日長野さん達と狩りをしに行ってきたんだよ。それで何匹か狩ったんだけど、長野さんが肉も美味しいっていうから、持ち帰ってきた。因みに下処理は終わっているから、このまま調理すればいいよ。特に、スープとかに入れると美味しいらしいけど……いるだろ?」

「はい、遠慮なく頂きます。それじゃ、後で皆で食べさせて頂きます!」


 椎名さんは、僕の目の前に持ってきた兎の肉を置いた。そしてきょろきょろと周囲を見回すと言った。


「このエリアは、もう俺達の拠点の一部となった訳だけど、周囲はまだ有刺鉄線で囲っただけだから、今夜ここで過ごすならちゃんと武器を持って、用心しないと駄目だからな」

「解りました。ちゃんと注意します」


 椎名さんは軽く頷くと、スタートエリアの方へと歩いて行った。


 大量の肉、とりあえずこれを皆の所に運ばないとね。


 …………それにしても、アルミラージの肉って凄い…………

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