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Phase.300 『長閑なエリア作り その1』



「悪いなー。孫いっちゃんの奴、南エリアでなんかしているみたいでさー。俺とも遊んでくれないんだよなー。まあその代わり、この俺が手伝ってやっからよ、任せろやい!!」


 翔太さんは、快く僕たちの拠点作りに手を貸してくれた。更に、十河君にも会ったので声をかけてみると、手伝うと言ってくれた。


「おおーーーい、君達!! 拠点を作るんだってなーー!! 小早川君に聞いたよ」

「成田さん、松倉さん!!」


 成田さんの手には、なんと草刈り機が握られていた。松倉さんも持っている。2台の草刈り機――こんなの使えば、あっという間に草は刈れる。


「椎名さんから話を聞いてね。草刈りと、邪魔な木の伐採だけだけど、僕たちも手伝うよ。いいかな?」

「あ、ありがとうございます!! 成田さんも松倉さんも、ありがとうございます!! お願いします」

「よーーし、それじゃ始めるぜ!!」


 翔太さんがそう言うと、作業がスタートした。草刈りが始まると、辺りを2台もの草刈り機の音が鳴り響き渡る。


 ブイイイイイイイン!!


 バリバリバリバリ!!


 小早川とメリー達も、有刺鉄線やワイヤー、それに杭やハンマーなど持って戻ってきた。


「おおお!! ついに帝国造りが始まったな、ワハハハハ!! 我が理想の国家建国まであと僅かだ!!」


 小早川がそう言って笑うと、カイが茶々をいれる。


「まだ始まったばかりでござるからな。建国するにしても、今日中にはとても終わらないでござるよ。それに帝国って言っても、小早川氏一人でござるしてな。あっはっはっは」

「うぬぬぬ、何をおおお!! 配下はここにおるわーー!! 我が精鋭28人があああ!!」


 小早川はそう言ってメリー達、ストレイシープを指した。


「さて、それじゃ作業に戻ろうか」

「待て、貴様らあああ!!」


 バリケードの外へと出る。バリケードを越えて外に出ただけだけど、拠点の外というだけで、なんだか緊張をする。だってここは、もう何か魔物に襲われてもなんら不思議ではないエリアだから。


 まずは小早川が持ってきてくれた鎌を手に、草を刈って行く。周囲には翔太さんがいて、魔物の気配がないか探ってくれている。こうやって見張りをしてくれる人がいないと、僕らは安心してとても作業をしていられない。


 昼を過ぎた所で、バリケードの内側から声がした。あれは、うららさんと海さん。


「おーーい、野郎ども!! 飯ができたぞーーー!! 昼飯だーー!!」


 うららさんのセリフに、十河君が鼻で笑う。


「あいつ、いっつもあんなだなー。まあ、元気でいいけどよー」

「元気なのはいい事だよ、トイチよ。その意気で午後もガンバ!」


 うららさんの言葉を聞いて、隣で爆笑する海さん。本当に綺麗で可愛い人だなー。


「うらら、お前もこっちきて手伝えよ!」

「やだよ。うらら、しんどい作業、苦手だもん!」

「なんだよ、飯持ってきただけかよ」

「え? そんな事言って、ご飯いらないんだ?」

「いるよ! おいこら、うらら! 渡せよ、その握り飯!!」

「きゃはははは」


 うららさんと、十河君が知らない間にこんなに仲良くなっていたなんて。考えてみれば、僕達だって例外じゃない。美幸さんや和希とも、凄く仲良くなっている。


 そうか、最初は僕と小早川とカイの3人だけだったけれど、そういえば今はもっと仲間が増えたんだった。椎名さんのクランの一員だった事を改めて思い出す。


 翔太さんが叫んだ。


「それじゃあ、これから1時間!! 飯休憩にしまーーす!! 拠点内に戻って休憩をしてもいいけど、俺はここで見張っているから、外はここから離れなければこの場所でとってもいいぞー!! あと、魔物に襲われるような事があれば大声で叫んで知らせろよーー!! それじゃ、一旦解散!!」


 翔太さんは皆にそう伝えると、海さんの方へと駆けて行った。そして彼女に何か嬉しそうに話しかけると、一緒に近くの転がっている大きな石に腰をかけてお昼ご飯を食べ始めた。


 …………


 もしかして、翔太さんは海さんの事が好きなのだろうか……


「あの人は、女の子なら誰でも分け隔てなくああですよ」


 和希君が、まるで僕の心の中を読んでいるかのように言った。


「そ、そうなんだ。でも、言われてみればそうかもしれない」

「はい、どうぞ」


 和希に、お弁当を渡される。買ってきたものではなくて、手作りのお弁当。その上には、大きなおにぎりが2つ。


「美味しそう!! でも、これは……」

「うん。どうやら女の子達が僕たちの為に、おにぎりとかお弁当を作ってくれたみたいで。一緒に食べませんか」

「そうだね、食べよう!」


 小早川とカイも呼ぼうと思った。けれど小早川は、何か野菜を手に取ってメリー達に配っている。カイも十河君やうららさんと何やら楽しそうに会話をしながらも食事を始めている。


 僕は近くにある、大きな岩を指さした。


「あそこの上にあがって、食べようよ」

「うん、いいね」


 僕と和希は、指した岩の上によじ登った。一面、草木が生い茂っている田舎のような風景。


「うわーー、綺麗だね」

「うん、綺麗だね」


 暫くその景色に目を奪われるも、お腹が鳴って折角の気分に水を差す。僕も和希も、大笑いするとお昼ご飯を食べ始めた。


 草の香りに、長閑ないい天気。そして気持ちのいい風が吹く。


 ここは最高の世界『異世界(アストリア)』。この場所に、メリー達が安心して暮らせる場所を見事に作り上げてみせる。

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