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Phase.291 『アルミラージ その2』



 草が動いた。何者かが俺達の後をつけてきている。


 ゴブリンかもしれないと思って、剣を抜いた。長野さんは散弾銃(ショットガン)、北上さんは未玖を後ろにかばいながらも、コンパウンドボウを構える。


 草が動く。そして飛び出してきた。


「ゴブリン!?」

「ひいいい!! ちょ、ちょっと待って!! ちょっと待ってくれっス!!」

「え? モンタ!! それに、茂山か!!」


 二人とも両手を挙げて、降参のポーズ。直立する。


「おい、いきなり出てきて危ないだろ!! 見ろ、長野さんと北上さんを!! もう少しでモンタはショットガンで頭を吹っ飛ばされて、茂山は片目を矢で射抜かれていたぞ!!」


 俺の言葉に、長野さんと北上さんが顔を見合わせる。


「も、申し訳ないッス!! なんか、リーダ―達が武器を手にいそいそと拠点を出ていく姿を見たので、何かお手伝いできないかと思って……」

「それで、ついてきたのか?」


 二人とも頷きながら、自分の後頭部を摩った。


「まったく……困った奴らだ。兎に角、注意してくれ」

「うッス!」

「ちゅッス!」


 どーもこいつら、ちょっと頼りないんだよな。だから危うさもある。もっと注意深く行動をしてもらわないと、この危険な世界じゃ命がいくつあっても足りなくなるぞ。


 それに何かお手伝いって言っているけど……きっと、こいつらの事だから、なんだかおもしろそうだと思ってついてきたに違いない。


「ついてくる来るのはいいけど、俺達は今日は狩りをするんだぞ」

「え? 狩りっスか!!」


 二人とも驚いた顔をする。だけど同時に嬉しそうな、なんというかワクワクとした顔をした。そして俺に縋るように言った。


「じゃ、じゃあ俺達もお手伝いしたいッスよ。なあ、モージ」


 え? モージ? 思わずきょとんとしてしまった。すると茂山が恥ずかしそうに言った。


「あっ、モージって俺ッス。茂山蒙治(もやまもうじ)が本名で、仲の良い奴らにはモージって呼ばれているんス」


 モンタにモージか。なるほど。北上さんは、モージというあだ名がよほどツボにハマったのか、ケラケラとお腹をかかえて爆笑している。そんな北上さんに未玖が、笑っちゃ駄目ですよと言っている。本当に、未玖はいい子だな。どうやったら、こんないい子ができるのか……


 俺にも妹はいるけれど、仲は悪いし最悪の妹だ。だから俺の妹が未玖なら、どれほどいいだろうかと思った。だけど未玖は、今の俺にとってこの世界で家族みたいなものだしな。


「それで……ついて行ってもいいッスかね?」


 モンタの言葉に、俺は眉間に皺をよせた。


「だからこれから狩りに行くって言ってんだろ?」

「何を狩るんスか?」

「狩りかー、めっちゃおもしろそうじゃないッスか。何を狩るんスか?」

「アルミラージだよ。危険な魔物なんだぞ」

「アルミラージって、なんスか?」

「戦うんスよね。それなら、俺ら一緒に戦うッスよ。これでも不良なんで……ってもう、今はあれか。じゃあもと不良なんで」


 うーん、なんだこいつら。どうして? なんで? って、なんでも返してくる子供みたいだな。でも、こいつらも今は俺達の仲間である事は間違いのない事だし。同じクランで仲間だという事は、家族みたいなもの。少なくともこの『異世界(アストリア)』では俺はそう思っている。


「解った、じゃあ一緒に行くか」


 二人ともまるで花が咲いたように、嬉しそうな顔をする。


 俺はアルミラージの角が必要なので、それを手に入れる為に狩りに出た事、それとそのアルミラージが長野さん曰く危険な魔物だという事を2人に伝えた。


「それで、お前ら武器は持っているのか?」


 モンタは手に棒、そしてモージも棒を持っていて、それを見せてきた。おい、正気か……って人の事は言えない。俺だって、初めてこの『異世界(アストリア)』へやってきた時の事を思い出してみれば、ウルフの群れとかに木刀で挑もうとしていたんだ。でもそれでも、他にナイフとかも装備していたぞ。


「ナイフとか、そういう殺傷力の高い武器は持ってないのか?」

「モージ、見せてやれよ」

「ああ、そうだな」


 自身満々の2人。ランボーが持っているようなとんでもないデカいナイフか何か登場するのかと思った刹那、モージはバタフライナイフを出してそれを得意げにシャカシャカと巧みに振ってみせた。


 そして最後にかっこよくキメた後に、自慢げに俺の顔を見てニヤリと笑った。溜息。


「一応言っておくと、ナイフはそんなんじゃなくてサバイバルナイフとかコンバットナイフがいいぞ。それと、いざ敵を前にしてそんなシャカシャカとパフォーマンスなんて絶対するなよ。その間にやられるからな」

『う、うーーーッス』


 俺に褒められると思っていたのか、少し不満気な2人。まあ、いいか。ここにいたいっていうのも本当のようだし、俺達と仲間になりたいって気持ちも本心だと、俺が感じているのは確かなんだから。


「それじゃ、長野さん。どうしましょうか?」

「おお、そうだったな。それじゃ門田君」

「う、うッス!」

「君と美幸ちゃんは、後方から未玖ちゃんを守りながらについてきてくれ。アルミラージはこの辺りにいると思うから、少し広がって探そう。儂はこっちに広がるから、向こうは椎名君と茂山君じゃな」


 全員返事をして、各々の配置についた。


 ところでアルミラージって、普通にゴブリンとかウルフみたい、その辺に普通にいたりする魔物なのだろうか。もう一度、長野さんにそのことを確認しておこうかと思った。


 刹那、目の前の草の茂みの間から大きなモコモコとした毛玉のようなものを見つけた。

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