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Phase.287 『大谷達とメリー達』



 メリー達がゆっくりと休んだり、住むことができる場所を、拠点内に作ってやりたいと思った。その為には、どの場所がいいか――


 焼肉を楽しみながらも、大谷君、小早川君、有明君、和希の5人であれこれと意見を出して考える。小早川君が、声を絞るようにして言った。


「むふー。むふむふー。パブリックエリアは……駄目ですよね」

「駄目だな。パブリックエリアは、他の転移者である客を招きいれる場所だからな。万が一でも、メリー達を見かけた転移者が、魔物が拠点内に侵入したと勘違いして攻撃してしまう可能性もあるし」


 今度は有明君。


「で、あるなら、その隣の草原エリアも駄目でござるなー。草原エリアには、畑が沢山あるし、メリー達にも農作業を手伝ってもらえるかもと未玖殿と話をしていたのでござるよ」

「そうだな。畑をメリー達に手伝ってもらうっていうのは、名案だと思う。自分たちの食い扶持を稼ぐって事もできるし、いいんじゃないかな。でも住む場所はもう少し、ゆっくりできる場所がいいかな」


 そうなってくると、この森路エリアかスタートエリアって所だろう。スタートエリアは、草原エリア、森路エリア、川エリアの3エリアに囲まれている場所だし安心と言えば安心かもしれない。


 頷いている大谷君。だけど彼は、また新しい考えを言った。


「いっその事、スタートエリアの南西に新しくエリアを広げませんか?」

「え? またそうなると、また拠点が広がってしまうけど……」

「駄目……ですかね。面白いと思ったんですけど……」


 明らかに肩を落とす大谷君。うーーん、確かに若い意見も大事にしないとだとは思うし、拠点がまた拡大してしまうっていう問題はあるけれど、新しく開拓するというのは面白そうではある。


「うん。解った、いいだろう」

「え?」

「じゃあ、新たな場所にエリアを作ってくれ。成田さんに相談すれば手伝ってくれるかもしれないし、有刺鉄線とかバリケードとかも用意してくれるかもだし」

「い、いいんですか!?」


 大谷君だけでなく、他の3人も驚いた顔をする。


「拠点を新しく広げる訳だから、その作業の際には、拠点の外に出なくちゃならない。だから4人とメリー達全員で協力してその作業をしてくれ。成田さんにも協力をお願いして、他にも誰か手が必要なら頼むんだ。できるかな?」

『はいっ!!』


 まさかに4人揃って、元気いい返事をもらった。


「それじゃ、4人に任せた。メリー達がゆっくりとできる住処を作ってやってくれ」

「いつから始めればいいですか?」

「いつでもいいよ。できるまでは、別にスタートエリアでも森路エリアでも、メリー達にはいてもらってかまわないし。メリー達も解っているよな」


 メリー達の方を向いてそういうと、メリーと他何匹かが片手をあげて返事をした。こんなの北上さんとかが目にしたら、また可愛いとかいってメリー達に抱き着くんだろうな。そう思って、笑ってしまう。


 なんにしても、素敵な仲間ができた。


「それじゃ、楽しんでくれ」


 大谷君達にそういうと、俺は今度は草原エリアの方へと歩いた。


 …………しかし、あれだな。この拠点もかなり広くなったし、クランメンバーも増えたな。でも以前、大空を飛んでいたワイバーンを思い出す。


 この世界にはあんな魔物もいるし、トロルのような強力で危険極まりない奴もいる。ならもっと、拠点を強化して仲間を増やすというのは、重要な事だと思った。


 パブリックエリアについた。周囲に焚火やランタンの灯り、それに笑い声。


 もっと草でボーボーだと思っていたけれど、どうやらここにいる転移者達がキャンプしやすいように周囲の草を刈ってくれたようだ。


 パっと見ても、30人位はいるな。


 どんな人がいるのだろうか? 色々と参考に他の転移者チームを観察してみたかったけれど、先に店の方へ行ってみた。するとそこには、松倉君がいた。


 俺は店に入ると、客席に座って松倉君に声をかけた。


「よっ!」

「あっ、椎名さん! あれ? スタートエリアで皆、宴をしているんじゃ……」

「ああ、様子を見に来たんだ。それより、ここは俺が見ているから松倉君も、焼肉パーティーを頼んでくれば?」

「マジで? でも、椎名さん、料理とかそういうのできないでしょ? ここ任せられる?」


 うっ、確かにそうだった。店の事は未玖達に全面的に任せてしまっているから、解らない。


「まあ、大丈夫じゃないかな? 後で、大井さんがこっち来るって言っていたしさ。まあ、ドリンク程度なら俺でも作れると思うし……」


 要は、このパブリックエリアに誰かいればいいってこと。このエリアは、他の転移者であるお客さんに開放しているエリアだから、一応一人はうちのクランの誰かがいて見張っていた方がいいだろう。


 もう来るなと言ってやった市原達も、ちゃっかりと尾形さんと仲良くなって、勝手にここへ入ってきているようだし。また何かしでかさないか、心配はある。


 大谷君達や、モンタ達と何か問題を起こされても困るし用心をしておいた方が吉だろう。


 コトッ


 目の前のテーブルの上に、ホットコーヒーが置かれた。


「え、ありがとう、松倉君」


 にこっと爽やかに笑う松倉君。


「それじゃ、ちょっと椎名さんのご厚意にあまえて、俺も焼肉パーティーに参加してこようかなー」

「ああ、いいと思う。皆、結構盛り上がっているよ。スタートエリアでやっているから、翔太や未玖がもし俺の事を探しているようだったら、ここにいるから気にしないで楽しんでくれって言っておいて欲しい」

「りょーかい。それじゃ、椎名さん。後は任せましたんで」


 松倉君はエプロンを脱ぐと、そう言って俺に向かって片手をあげた。俺もそれに応えて片手をあげると、彼はそそくさと宴の方に行った。


 俺はおもむろに立ち上がると、さっきまで松倉君が身に着けていたエプロンを身に着けてまた客席に座った。ホットコーヒーを一口飲んで、気合を入れる。


「さてと、それじゃ営業を再開するかな」


 店はいつも、やりたいって言う他の誰かに任せていたので、なんだかとても新鮮な感じがした。

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