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Phase.285 『狩りの約束』



 長野さんと、暫く川のせせらぎを耳に酔いしれながら会話を続けた。


 話の内容は、もちろんアルミラージの事。そして三鷹にお店を持っている九条さんとは、別にこの『異世界(アストリア)』で転移者に銃など武器を売ったり商売をしている人の話。


 その人は、この拠点からは少し離れた場所に居場所を構えているという。


「とりあえず、あれかの。それじゃコボルト討伐も無事にできたみたいじゃし……椎名君達は、明日は休みなんじゃろ?」

「はい、仕事は平日なので土日祝は休みです」

「それなら明日、アルミラージを狩りに行ってみるか」


 アルミラージ。普通の兎よりも体格が大きくて、頭部には角が生えている。


 なぜ、角が生えているのか……それは少し考えれば解る。敵を突き刺すため。つまり、危険性のある兎の魔物。だけど無事に狩る事ができれば、恩恵はでかい。アルミラージの角は、不浄なものを浄化したり、草木などの植物から農作物まで急成長させる効果がある。一度その効果を知ってしまったら、アルミラージの角無くしてはやっていけない。


「狩りには、行ってみたいです。でもこの辺にいるんですか?」


 にこりと笑う長野さん。煙草を吹かすと、頷いた。


「ああ、おる。椎名君とここで初めて出会うその前に、何匹か見たよ。それにその後もここに居るようになってから、草原エリアにテントを張っていたんじゃが、その辺りでも拠点の外で何匹か見かけたよ」

「ほ、本当ですか⁉ でも俺は見た事ないです!」


 いや、それはちょっと違うな。確かにまだ見た事は、ない。でも未玖がアルミラージの角を持っている。それは未玖が俺と出会う前に、アルミラージの死骸を見つけてそこから角を手に入れたもの。


 未玖が俺と出会う前にいた場所にも、アルミラージが生息していたって事になるし、俺が見つけていないだけで、この辺りに生息しているかもしれないし、そうだとしても不思議ではない訳だ。


「アルミラージは兎の魔物じゃが、狂暴じゃ。人間に襲われると襲い掛かってくる。もちろん、角での。しかしゴブリンやウルフみたいに、自ら襲い掛かってくる事は稀じゃ。そもそも肉食ではないし、他の生き物を殺す事に、喜びを感じている残忍な魔物でもないからのう。何もなかったこの場所に、いつの間にやら儂らの立派な拠点ができあがり、それを見て驚いて様子を見にきたのかもしれんな」


 長野さんは、そう言ってワハハと笑う。


 未玖も言っていたな。今朝からの異常事態で、拠点の中も外も植物という植物が増殖して急成長していた。そしたらいつの間にか、拠点内に兎が侵入していて、それを捕まえたと。


 この辺には、スライムやウルフ、ゴブリンにコボルト。あとコケトリスにグリーンスネークと、実に様々な魔物が生息していた。そういうや、巨大な線虫なんてものも南エリアにはいたな。


 俺達がまだ気づいていないだけで、この辺りだけでも、まだまだ異世界の動物や魔物が潜んでいるのかもしれない。


「アルミラージは儂らのいた、もとの世界にいる兎に似とる。穴を掘って、巣をつくる。じゃが、地中には餌はないからの。出てきた所を仕留めればいい」

「でもどうやって……」

「アルミラージの粉末をやったろ? あれは全て、儂がアルミラージを仕留めて角を砕いて粉末にしたものなんじゃ。だから、狩りの仕方は心得ておる。じゃが、油断は禁物じゃ。奴らは追い詰められたり、脅威を感じると攻撃的になって襲ってくる」

「それって、危険ですよね」

「危険じゃ。奴らはのお、だいたいここじゃ。太ももや脹脛を角で狙ってくる。儂も何度か突き刺されて、えらい事になった事がある」


 太ももや脹脛を角でって……聞いているだけでも、ゾっとする。


 長野さんは、煙草の煙をフーーっと吹くと、いきなり川に手を突っ込んだ。


「うおっ、流石に冷たいのお!」

「あはは、そりゃそうですよ。この辺は夜は結構肌寒いですもんね。川の水なんて、冷え切ってますよ」

「ははは、そうじゃな」


 タオルを取り出して手を拭く長野さん。そして言った。


「それじゃ、アルミラージ狩りに明日、出かけてみるかね?」

「拠点の周辺ですよね」


 にっこりと笑って、頷く長野さん。


「そう言えば、ゴブリンの巣に行った時に、逃がしてしまったホブゴブリン。あれを逃がしてしまったのは、マズかったかもしれん。アルミラージ狩りのついでに、見つければ仕留める事ができるしの」

「確かにそうですね」


 なんとなく、スマホを取り出す。そして『アストリア』と表記されたアプリを起動して、バウンティサービスを確認する。


 ざっと見て行くと、ある魔物が目に留まった。


「長野さん、なんとなく確認してみたんですけど……これ見てください!!」

「おお、これは!!」


 ゴブリンの巣にいたホブゴブリン。おそらく……いや、絶対こいつだろう。なんと、あのホブゴブリンが賞金首としてバウンティサービスに載っていた。懸賞金は……


「長野さん、こいつ1匹で50万もしますよ!!」

「あのコボルトリーダーと同じという訳か。あのホブゴブリンは、一般的な奴より強いやつかもしれん。それにゴブリン達の巣のリーダーでもあったからな、妥当かもしれんな」

「長野さん、できれば俺はこいつを仕留めたい。こいつは、またいつ俺達に襲い掛かってくるかもしれないし、50万が手に入れば、ここの運営資金にもあてられる。あと……皆の了解が得られればだけど、大谷君達やモンタ達の『アストリア』の月会費にもあててやりたい」

「いいと思う。なんせ、『異世界(アストリア)』へ転移し続けたいなら、月10万という会費が必要になるしな。学生にとっても、大金じゃ。だから儂は賛成だ」


 以前は、夢の異世界生活の中で、もしも金を稼ぐ事ができれば、今の惰性で続けている仕事を早く辞めてこっちへ集中したいって……それだけを思っていたけれど、大谷君達が仲間になってその考えもまた少し変わってきた。


 可能ならば、仲間全員の月会費を、クランで負担できるようにしたい。


「それじゃ、明日はそれで決定じゃな」

「はい」


 長野さんと、狩りの約束をする。そしてまた暫く、夜の川辺で長野さんと色々な話をした。

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