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Phase.275 『救出 その2』



 メエ!


 大谷君が言っていた、ゴブリンの巣。そこまでメリーが案内してくれた。


 メリーは魔物だが、俺達に友好的だった。そして当然だけれど、この『異世界(アストリア)』に俺達よりも慣れている様子だった。だからこんな草木が生い茂って、周囲がどうなっているのか解らない状況でも、俺達なら迷っていたかもしれない状況で、ちゃんとここまで案内をしてくれた。


「偉いじゃねーかっ!! やるなあ、羊!!」


 ビクッ!!


 トモマサの圧に、明らかに怖がるメリー。まあ、トモマサはゴブリンなんか相手でも、掴んで首を軽く捻って殺す程の男だから、怖がるのも無理はないかもだけど。


 俺は、メリーの頭に軽く触れた。


「大丈夫、俺達は味方だ。お前が俺達に友好的なら、俺達はお前の敵じゃない」


 メエ……


 洞窟の前まで近づく。すると入口に、ゴブリンが4匹も立って見張っていた。グリーンスネークやブルボアと違って、ゴブリンやコボルトにはこういう知能がある。それが油断ならない。翔太が小声で耳打ちしてくる。


「どうするユキー。捕まっている奴らって、今も拷問真っ最中なんだろ? じゃあ、ちょい力ずくでも急いだほうがいいよな」

「そうだな。どう思いますか、長野さん」


 俺達クランの一番の年長者であり、最もこの世界の経験者でもある長野さんに意見を求める。


「そうじゃな。ならちょっと弾代は痛いかもしれなんが、銃で一気にやってしまった方がいいかもしれなんな」


 それを聞いて鈴森はニヤリと笑うが、翔太と小貫さんは、とても長野さんらしからぬ発言にぎょっとした。


「それいいのか? ヤバくねーですか!! コボルトん時みたいにサっと忍び寄って、アサシンしていった方がいいんじゃねーですか?」

「秋山君の言う通りじゃ。しかし、さっき話した通り時間がない。ゴブリンは儂ら人間よりも残忍じゃ。笑いながら獲物を切り刻み、いっそ殺してくれと懇願する者を見ては、笑い転げる。そんな奴らじゃから、捕られている者の指を切断したり、目をくりぬいたりと躊躇いなくやる。だからいっそ、奴らの意識をこちらに向けさせた方がいいと考える」

「な、なるほど。敢えて派手な銃声をさせて、注意をこっちに引き付ければ時間稼ぎになるわけか」

「しかもゴブリンという魔物は、残虐でずる賢いが同時に臆病でもある。矛盾しているかもしれんが、追い詰められると平気で腹をさらし、泣き叫んで許しを請う。だがそれこそが奴らの演技。情けをかければ、それはそのまま刃となって返ってくる」


 翔太は、腕を組んで唸り声をあげた。


「うーーん。じゃあ、このまま真正面から行った方がいいんですか?」

「そうじゃな。銃を使用すれば、その音で間違いなく奴らは怯むかビビる。上手くいけば銃声と、仲間が弾一発で死んでいく姿を見れば、四散するかもしれない。自分達の巣に、突如として現れた儂ら8人を見ても、得体の知れない脅威には感じるだろう」

「解りました。それじゃ、長野さんの言う通りにしよう。じゃあ、銃を持っている俺と翔太、長野さんと鈴森でゴブリンの方へ出て行って射殺する。そしたら、トモマサと堅吾、小貫さんも後に続いてくれ」


 メエ!


「ああ、メリーは一番後ろからな。どこに仲間が捕らえられているかを教えてくれ」


 皆、自分のやるべき事を理解すると頷いた。


 走る。勢いよくゴブリンの前に、躍り出た。


 ギャギャ!!


「撃て!!」


 ダンダンダーーーンッ


 ギャアアアッ!!


 一瞬の迷いもなく、俺達は銃を発砲した。衝撃が手から腕に、腕から肩へと伝わってくる。


 だけど気にしたり、あれこれ考えるのは拠点に無事に戻ってからでいい。頭の中のスイッチを切り替えるんだ。今は、ゴブリンを殲滅して、捕まっている者達を助け出す。それだけだ。


 流石に四人で一斉射撃となると、圧倒的だった。入口のゴブリンを全て始末すると、奥の方から沢山の足音が聞こえてきた。


「皆、構えろ!! 来るぞ!!」

「俺らは行っていいのか?」


 トモマサが言った。俺は、直ぐに答えた。


「まず俺達が発砲するから、そしたら行ってくれ!!」

「よっしゃ、腕がなるぜ!! なあ!!」

「ああ、いつでも来いって感じだ!!」


 トモマサは堅吾の肩を叩くと、堅吾もトモマサの肩を叩き返した。頼もしい仲間だ。


 ギャギャーーーー!!


 見えた!! 暗闇の中に灯り。松明を手にしたゴブリン共が、大勢こちらに向けて走ってくる。もう片方の手には、棍棒や槍、更には斧。


 構えて撃つ、そう思った所で長野さんが武器をハンドガンからショットガンに変えた。そしてゴブリンに向けて撃った。


 ガウンッ!! ガウンガウン!!


 ギャアアアアア!!


 一番迫ってきていたゴブリン2匹が、後方へ派手に吹っ飛ぶ。更にもう1匹。


「撃て撃て撃てーー!!」


 長野さんに続いて俺と翔太と鈴森も、銃を連射した。次々と倒れるゴブリン。その横をすり抜けて、斧を振り上げてくるゴブリン。そいつの脳天に、トモマサが斧を振り下ろす。堅吾と小貫さんも、正面からゴブリンを圧倒する。突き崩し、倒しては串刺した。


 1対1じゃ、苦戦していたり危ない場面もあったかもしれない。だけどいつの間にか、俺達はチームとして息がぴったりと合い、連携がとれるようになっていた。


「いっけーーー!! 突撃じゃあああああ!!」


 剣を抜いて、振り上げて叫ぶ翔太。うん、いいぞ。それくらい相手を威圧してくれた方がいい。


 ゴブリンに舐められているから、こいつらは俺達の拠点を襲い人を襲う。だから俺達がとても危険な存在で、お前らの命を簡単に終わらせることができる、極めて危ない武器を持っている連中って事をしっかりと教えておかなければならない。


 ゴブリンを倒しながらも、洞窟を奥へと進む。


 ショットガンを撃つ長野さんに、何匹ものゴブリンを斧で潰して引き裂くトモマサ。このまま奥まで辿り着ける。

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