表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
271/471

Phase.271 『メリー その2』



「うわあああああ!!」


 バギャアア!!


「うおおおおおお!!」


 バギャアアア!!


 メエエエエ!


「よ、よし! 檻を壊せた。これで、外に出れるよメリー。だけど僕は君を助けたんだ、絶対に僕を襲わないって約束してくれよ」


 メエ!


 メリーは檻から出ると、じっとまた僕の目を見つめた。


 このまま見つめ合っていても仕方がない。それに直ぐに逃げないと……そう思った所で、身体がよろける。


「うっく……」


 踏ん張ろうとしたら、出血している方の足に激痛が走った。駄目だ。こんな状態でここから逃げる事ができるのだろうか?


 メエエ!!


 メリーは急に周囲を見渡し始めた。そしてまた僕の方を見て、鳴く。


 メエエエエエ! メエエエエ!!


 相変わらず魔物の言っている言葉なんて解らない。だけどなんとなく伝えようとしている事は解る……気がする。


「他の仲間は、助けらない。助けている時間もないし、体力もない。見ろ、僕は怪我をしているし血も流している。それにぞろぞろと歩けば、簡単に見つかってしまう。僕はまだ死にたくはないんだよ」


 メエエ……


 言葉が通じたのかは、解らない。いや、やはり通じてはいない。だけど僕と同じで、メリーもなんとなく僕の言っている意味は察したようだ。


 メエ!


「お、おい! ちょっと、何処へ行くんだ!」


 諦めたのか、メリーは何処かにサッと駆けて行った。僕が仲間を助ける事ができないと解ったから、僕を放って何処かに行ってしまったのだと思った。


 だけど違った。


 メリーは、直ぐに僕のもとに戻ってきた。手には、長い棒を持っている。しかも差し出してきた。


 メ!


「え? もしかして、これを杖に使えって言っているの?」


 じっと見つめてくるメリー。その差し出した手は、小さくてとても可愛らしかった。邪悪な魔物には見えない……


「ありがとう。でも、ごめんね。君の仲間は救えない。とても残念だけど、救う力が僕にはないんだ。だけどせめて僕と君だけでも、生きながらえよう」


 メエエ……


 メリーにもらった棒を杖にして、歩く。錆びたナイフは、懐に入れて杖を持つ手と逆の手には斧。檻を破壊してまで逃げたんだ。今度捕まれば、確実に命はない。だったらやれるだけやってやる。


「こっちだよ、メリー。ついてきて」


 空洞の中を歩いて、出口を探す。すると扉を見つけた。きっとあの恐ろしいホブゴブリンが入ってきた扉。


「か、鍵はかかってないのかな」


 扉を軽く斧で押すと、ギイっと音を立てて簡単に開いた。

 

 だけど、開いた扉……目の前には1匹のゴブリンが立っていた。僕と目が合った瞬間、僕は声も発しないで、そのゴブリンの脳天に斧を振り下ろしていた。


 ドサリッ!


 腕に、頭を割った感触が伝わってきた。


 僕は直ぐに、倒したゴブリンの身体を掴んで引っ張った。物陰に隠しておいた方が、騒ぎにならないだとうと思ったからだった。


 すると、メリーも察してくれたのか一緒に倒したゴブリンを掴んで引っ張ってくれる。それでメリーは、ぜんぜん腕力がないのが解ったけれど、いないよりは多少マシだし、手伝ってくれた事は素直に嬉しかった。


「よ、よし。あそこに大きな岩があるから……はあ、はあ……あの陰にこいつを隠そう」


 メ、メエ……


 ブルブルと震える僕とメリー。負傷している僕と、腕力のないメリーじゃ当然の事だった。でもゴブリンの死体は、ちゃんと隠せた。このまま先を急ごう――


 ギャギャーーーー!!


 ギャハハハ!!


「ぎゃあああ!! や、やめて!! やめてくれえええ!!」


 ギャハハ!!


 手さぐりに洞窟を進んでいくと、数匹のゴブリンと誰か男の声が聞こえた。道はそちらに向かっているので、慎重にメリーと進んでいく。そして僕らの目にしたもの。


 出口までの途中、また空洞があった。小さな空洞で、そこにも扉がついていた。だけど雑な作りで半開きになっていて、中の様子が見て取れた。僕とメリーは、いったい何がそこで起きているのか覗き込む。


 するとその部屋では、数匹のゴブリンが男を椅子に縛り付けていたぶっていた。男は僕と同じく日本人で、服装から転移者という事が解った。だけどもう助ける事は、できないと思った。


 男は既に、手足を失っていて、周囲にいるゴブリン達は男の身体の肉を明らかに切れ味の悪い錆びたナイフでこそぎ落として食べている。まさに地獄絵図。僕はまた吐きそうになってしまった。


「ぎゃあああ!! 殺して!! もう、殺してくれえええ!!」


 ギャハハハハ!!


 駄目だ、吐いてしまう。僕はなんとか耐えつつもメリーの手を引っ張った。するとメリーは、男が地獄のような目にあっているのを目にして漏らしてしまっていた。


「メ、メリー! しっかりして! 早く、早くここから離れないと!!」


 小声だけど、強く囁きかける。するとメリーは我を取り戻したのか、僕の目を見つめて、こっちについてきた。


 ……た、大変だ。僕は改めてゴブリンの残虐性や恐ろしさを知った。


 それからも何匹かのゴブリンに遭遇するも、なんとかやり過ごせた。僕は相変わらず出血しているし、メリーはお漏らしをしてしまった。だけどゴブリンは気づかない。なぜならこの洞窟が、ゴブリンのせいでかなり汚染させているっていうのもあるけれど、鼻はそれほど良くないみたいだ。


「メリー! こっち! 早く!! 良かった、見張りはいないみたいだよ。このまま一気に駆け抜けよう!!」


 メエエ!


 ゴブリンの巣から、脱出する事が叶った。出口付近までくると、外からの陽の光でもうそこが外なのだと直ぐに気づけた。


 見張りはいない。そして洞窟の外は、森になっていた。しかも朝からの異常事態で草木が増殖し伸び放題になっている。


 これなら直ぐに、草木に紛れ込んで逃げきる事ができる。僕はもう一度、メリーを見るとメリーは僕の目を見つめ返してきた。


「さあ、さっさと逃げよう!!」


 メリーの小さな可愛い手を握り、右太ももの痛みをこらえて草の生い茂る中へと飛び込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ