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Phase.265 『対コボルト その1』



「にゃろおおお!! こんにゃろおおがあああ!!」


 ガルウウウウッ!!


「こんにゃろ、こんにゃろ!!」


 ギャンッ!!



 翔太が、まさかの5万クラスのコボルトを倒した。でも今の騒ぎで他のコボルトが、ここへやってくると思い、皆に警戒するように指示を出した。組み合いになったコボルトと、地面に転がっていた翔太に駆け寄ると、すぐさま手を貸してやった。



「サンキュー、ユキー!」

「おい、気をつけろよ!」

「すまーーん。ちょっと、音を立てちまったな。他のコボルトがこっち来るかもしれねーよな」

「それもあるけど、それだけじゃない。今のは、かなり危なかったぞ。今みたいにもつれ合って倒れた拍子に、腹でもナイフで刺されたら……いや、首とか心臓なら、終わっているぞ」

「確かにそうだった。すまそーーん、もうちょい気を付けるわ」

「頼むぞ」


 翔太との関係は、今ままでは善き友人であり同僚だった。


 嫌な上司、山根のような奴にいびられて、虐められても隣のデスクに座っている翔太が一緒に怒ってくれたり、文句言ってくれたり共に怒られてくれた。だからあえて口にはしないけれど、俺にとってはとても大事な存在。


 だけど『異世界(アストリア)』へ来て、一緒にクランを結成してからは、それに加えて相棒でもある。決して、代わりのいない相棒。


 もしも翔太の身に、何かあったらと思うと……だから、十分に注意をして欲しかった。この気持ちがわずかでも伝わってくれている事を願う。



 グルルルル……


「ユキ君!」



 北上さんに呼ばれて見に行くと、さっきの騒ぎを聞きつけて、コボルトが5匹もこちらに迫ってきていた。どうしよう、やるか……そもそも俺達は、ここへコボルト討伐に来たんだ。やらなくてどうする。


 剣を強く握ると、北上さんと翔太、そして後方にいる陣内と小早川君にも合図を送る。


 5匹はさっきの騒ぎでここへやってきている。なら、このまま一斉に襲い掛かって数で圧倒してしまえばいい。それが一番、事故が起きなくていいと思った。


 でも俺が合図する前に、鈴森とトモマサが5匹のコボルトに襲い掛かる。


 グガアアッ!!


 気づいたコボルトが応戦に出る。俺は北上さんに矢を放って援護するように言うと、他の皆を連れてコボルトに襲い掛かった。


「行け!! このままやってしまえ!!」


 翔太と共に、勇ましく剣を振りかざして突進した。陣内や小早川君も、後に続いてくれた。


 だけどコボルト共の目の前にたどりついた時には、5匹いたコボルトは鈴森とトモマサ、そして後方からの北上さんの射撃で全滅していた。よく見ると、鈴森の後ろには小貫さんがいて、辺りを警戒してくれている。


 うーーん、これ……俺と翔太、いらないんじゃないか……なんてちょっとスネてしまう位に皆、精鋭だった。まあ、いい事なんだけれど。


「鈴森、トモマサ、小貫さん……凄いな。もはやコボルト5匹なんて一瞬かよ」

「ガッハッハ! まあ、コボルトなんぞ俺にしてみれば雑魚よ、雑魚!」


 思い通りに暴れる事ができたからか、トモマサはご満悦。それを見て鈴森が突っ込む。


「まだだろ、油断するなよ」

「何がまだなんだよ。こんな雑魚、何匹いようが変わらんだろ。さっさとこの辺にいる奴らを全滅させて、拠点に戻って祝杯といこうぜ」


 溜息をつく鈴森。鈴森の代わりに俺がトモマサに言った。


「まだだって。コボルトリーダーが残っているだろ? 戻るのは、それを倒してからだ」

「あん? ただの雑魚のリーダーだろ? 簡単簡単」


 こんな事を言うから、変なフラグが立つんだ。いくら、トモマサがでかい身体と怪力を持っていたとしても、ナイフで後ろからプスっとやられれば致命傷になるんだ。


「兎に角、トモマサは特に油断しないでくれ。雑魚だと思ってもだ。それに狙いは懸賞金50万の奴だ。通常のコボルトと同格とは到底思えない」


 翔太が、カカカと笑う。


「でも5万の奴は、それほど他の奴と変わりがある感じしなかったけどなー」

「油断大敵。それでも50万だぞ。きっと、それだけの懸賞金がかけられる理由が、そのコボルトにはきっと何かあるんだ。それじゃ、先に進むぞ。ターゲットは近い!」


 噂のコボルトリーダー。そいつがもうここから近い場所にいる事を言うと、皆顔を引き締めた。小貫さんがサササと草を掻き分けて先行すると、振り返り手招きをして俺達を呼んだ。


「小貫さん、コボルトか?」


 頷く小貫さん。視線の先、坂になっていて、その先は窪地になっていた。その場所を見て、俺達は驚いた。


 なぜ、そんなに驚いたのか。そこにはなんと、枯れ木や枯草で作り上げた家がいくつもあったから。


「ユキー、これもしかして……」

「コボルト共の集落だ。見た感じ、まだできたばかりだろう……だけど」


 言葉の続きを、小貫さんが言った。


「俺達の拠点の直ぐ近くに、こんなものを……到底、放置しておけない。これはやるしかないな」


 確かにその通りだ。そしてコボルト共の集落の真ん中辺りには、他のコボルトよりも少しだけ身体の大きい奴がいた。身に着けている装備はさほど変わらないようだけれど、持っている湾曲した剣は、遠めに見てもいいものだと解る。


 なるほど、あいつがコボルトリーダーだ。


「ユキ君。あいつね、あいつがコボルトリーダー」

「そうだな、あいつを仕留めれば任務達成って所だ。やるしかないな」

「そうね。それじゃ、これからどうすればいいか指示して。ユキ君」


 北上さんがそういうと、皆俺の方を見てくれていた。今度は、鈴森やトモマサも先走らずに俺に注目してくれている。俺は皆の期待に応えなくてはならないと、コボルトの集落にどう攻め込むかを頭をフル回転させて考えた。


 どうすればいいか――


 よし、これで行こう!! 俺は皆にコボルト討伐の作戦を伝えた。

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