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Phase.262 『懸賞金コボルトを探せ』



 落ち着いて、慎重にゆっくりと近づいて殺した。


 最初に仕掛けたのは、鈴森。予め何度も訓練している兵士かのように、サササと素早く草陰を移動して、狙ったコボルトに後ろから忍び寄ると、ナイフで首を一突き。


 突いたナイフは抜かずに、そのまま横に切り裂いた。そして音がしないように、絶命したコボルトの身体をゆっくりと優しく地面に転がす。


 鈴森は、ミリオタだと翔太から聞いていた。そしてこの異世界へ来た時、ザックいっぱいの改造エアガンとナイフ、そして迷彩服だったのを見て、本当にそうなんだと理解した。


 だけど鈴森は、別に特殊な訓練を受けた者でもないし、もと自衛隊とかそういうのでもなんでもない。ネットで知り合った者どうしで集まって何回か、サバゲ―をしたとは言っていたけれど……


 それにしても鮮やかな暗殺(テクニック)


 そういや、死んだ婆ちゃんがよく言っていたっけ。好きこそものの上手なれ――


 好きな事は、上達しやすい。得意になりやすいって意味だと思うけれど、確かにそうかもしれない。『異世界』に初めてきた時に、俺は物凄く動揺していた。だけど内心では、こうすればいい、ああすればいいってどんどんシュミレーションをすることができた。


 それは俺が、こういったファンタジー世界が好きで、そういうのに関連するアニメやゲームも好きだから。だから適応しやすかったのかもしれない。


「よっし、じゃあ次は俺ね」


 鈴森に続いてトモマサが行く。同じようにコボルトに近づく。真後ろまでは行けたが、そこでコボルトに気づかれる。コボルトに叫ばれては面倒だと、トモマサは慌ててコボルトの顔をつかんで、そのまま力任せにひねった。


 ゴキっという首の骨の折れる音とともに、ぐらりと横たわるコボルト。トモマサも直ぐにコボルトの身体をささえると、ゆっくりと地面に転がした。


 トモマサは親指を立てると、上手くやったってこっちにアピールする。だけど、今のはきわどかったぞ。


「小貫さん、俺達も行こうか」

「ああ、そうだな。気づかれないように、手際よくだな」


 確認した残るコボルトは、2匹。その2匹に俺と小貫さんはそれぞれ忍び寄る。そしてサっと倒した。


 とりあえず、4匹全部倒した。鈴森は、最初に1匹目を仕留めた後は、ずっと周囲を警戒してくれていた。5匹目のコボルトがいないかどうかも――


「鈴森、他にコボルトは?」

「いない。だが、ここは異世界だからな。気配を消すスキルとか、透明になる魔法があったとしてもおかしくはない。コボルトがそういうのを使わないだろうというのも、俺達の勝手なゲームやらの知識からの決めつけだし、断定はできない。だが、少なくとも俺には、確認できなかった」

「そうか。それならいい。トモマサ、小貫さん。悪いけどコボルトの身体を調べて欲しい」


 トモマサが怪訝な顔をする。


「ああ? どうやって? 何を調べる?」

「北上さんと大井さんが、魔物はその体内に魔石を持っている場合があるらしい。使い道は今のところまだはっきりとはしていないけれど、こういうのはゲットしておいた方がいい」

「ゲームとかの知識か」

「そうだけど、魔石がある個体がいるのは本当だ。既に北上さん達はいくらか集めているし、俺や未玖も持っている。おそらく心臓の辺りにあると思うから、気持ち悪いと思うけどナイフでえぐってみてみてくれ」

「ふうーー。了解」

「解った。調べてみよう」


 トモマサと小貫さんが倒した4匹のコボルトを調べる。


 その間、俺はスマホを取り出して、懸賞金のかかったコボルトの位置を再び確認し、皆がそれぞれの事に集中できるように鈴森には辺りを警戒してもらっていた。


 拠点を出発したときは、12人。後でまた合流するとしても、今はたったの4人。


 だけど少なくとも俺と今一緒にいてくれている3人は、俺達のクランでも精鋭なので心強いと思った。翔太は俺とそんなに変わらないけれど、あと北上さんが追いかけてくれば、戦闘に関しては完璧なパーティーだな。


 鈴森の目はきょろきょろと周囲を見回しているが、何かの危険を感じている様子はない。


「どうだ? コボルトの位置は解ったのか?」

「ああ、もう少し先だ。でもそれほど距離はない。おそらく10分位あっちに進んだら、接触できる」

「どっちだ。どっちと接触する」


 懸賞金5万と、50万のコボルトがいる。言うまでもない事だが、金額が大きいほど危険度も高いという事だろう。それと、50万の方は、正確に言うとコボルトではなくコボルトリーダーという、コボルトの上位種だという事。


「なんとも言えない」

「ああ、なんだそれは?」

「両方近くにいるからな。片方とまず戦闘っていうパターンもあるし、両方をいっぺんに相手しなければならないかもしれない」

「アサシンすればいいんじゃねーの?」

「さっきの4匹みたいに、可能ならそれが一番危険も少ないし、いいかもしれない。コボルトリーダーなんて、その名前からいって確実に子分のコボルトを引き連れているとみていいと思うし。コボルト自体がゴブリンと同様に、複数で行動している場合が多いからな」

「どちらにしても、俺達に害を与えるなら皆殺しだな」

「賛成ーー。皆殺しだ」


 いきなり、血のついた顔でぬっと目の前に現れるトモマサ。その隣には小貫さん。


「どうだった?」


 首を振るトモマサと小貫さん。駄目だったかー。


「それじゃ、先に進もう。あっちへ10分ほど進めば、目標がいるはずだ。あと、これだけ草が生えまくっているから、ゆっくりと慎重に目的地に向かった方がいい」


 小貫さんがうなずいてくれる。


「そうだな。それにペースが遅い分、秋山さん達も、もうじき追いついてくれるかもしれないし、いいと思う」

「うん、それじゃ行こう」


 目の前に生い茂る草を払い、さっきと同じように一歩一歩前へ進む。なんとしても、今日ここであのコボルトとの決着をつけたい。

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