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Phase.250 『アッキー&ミユキ その2』



 1匹射貫いた所で、他の3匹が狙われている事に気づいて振り向く。そこでまた別の1匹の首に、矢が突き刺さる。


 そこでようやく残ったコボルトは、私を見つけて武器を振りかざし、こちらに向かって駆けてくる。だけどもう一発。最後のコボルトと私の距離が3メートル程の所で、全部倒した。4匹のコボルトに、4本の矢。理想通りの結果。


 隣にいたアッキーは、口と目を大きく開けて呆然と立っていた。そしてコボルトを全部倒したのだと解ると、飛び跳ねた。


「凄い凄い!! 凄いですよ、美幸様!! いや、姫!! 美幸姫!! 姫は絶世の美女というだけでなく、武勇までお持ちでありましたなんて!! まるで、ローバスト戦記のエルフ、ビュートリットであらせられるーーう!!」

「やめてって! 絶世の美女って言われるの恥ずかしいし、様とか姫もやめてって!!」

「えーー、姫は知らないであらせられるか? まさにローバスト戦記に登場するエルフ、ビュートリットまんまであらせられましたー!!」

「だーかーかーらー。それ、恥ずかしいってば!」

「知らぬであらせられますか?」

「何がよ」

「ローバスト戦記」

「……まあ、知っているけど」


 ローバスト戦記を知っていると言った途端に、アッキーの顔は明るくなり目もキラキラと輝き始めた。


「おおおお!! 流石……流石は我が姫!!」

「だから、姫は恥ずかしいって!」

「いんや、姫であらせられよーぞ!!」


 駄目だ、今は駄目! 知られたらちょっとこうなるかもなーって思って、あまり出さなかったんだけど……知られてしまった。アッキーの私を見る目は、本当にキラキラとしている。ど、どうしよう、話を反らさないと。


「姫!! それで、姫はローバスト戦記をどの程度知っているのであらせられるのか? 是非、教えて欲しいであります。因みに我は……」

「はいはいー! ちょーっと待って!!」

「はい?」

「はいじゃない! 今、私達何しているかちゃんと理解しているのかな、アッキー」


 はっとするアッキー。やっと解ってくれたかな。


「そうだよね、私達、秋山君と陣内君を見つけて、合流したらユキ君の後を追わないといけないんだよ!」


 やっと、我を取り戻した感じのアッキー。


「そそそ、それでは、これから我はどうすればよろしいでありますか? 姫!! 我が姫よ!!」

「って姫は……まあもういいか。それじゃ、ちょっと申し訳ないんだけれど、一つお願いしていい?」

「よよよよ、喜んでーーい!!」

 

 居酒屋かよ! って突っ込みかけた。魔王なのか勇者なのか騎士なのか、アッキーはなーんかそういうキャラを造り出して演じているようだけど、今のは居酒屋の店員だったよ。そう言いたかった。だけど、今は急いでいるからパス。


 はあ……このアッキー節に圧倒されて困っている私と、それに自分では気づいていないアッキーを海が見たら、お腹を抱えて爆笑するんだろーな。


 ふと、拠点で待ってくれている海の事を思い出して一瞬気が抜ける。


 そう言えばヨッシーやカイ君達、大丈夫かな。無事にに拠点に戻っているといいんだけど。


「それで、そそそ、その我に頼みというのはなんでありましょうか?」

「そうだった。今、私が倒したコボルトなんだけど、もしかしたら魔石をもっているかもしれない」

「魔石?」

「うん、この位の大きさの黒い石。ナイフ、持っている?」


 アッキーは、自分の模造刀に目をやった。材質は金属だけど、切れるようにはできてはいない。私は持っていたナイフを1本、アッキーに手渡した。


「素早くすれば、5分もかからないから。それじゃ、そっちの2匹をお願い」

「え? いや? その、魔石と言われましても……何処に……」

「そうね。コボルトやゴブリンは、だいたい魔石を持っていれば心臓の辺りにあるから。そこを思い切りズバっとやって、切りひらいてみれば解るから」

「き、きききき、切りひらく⁉」

「はーーい、それじゃお願いします。さっとやれば、すぐ済むから。それやって、秋山君を連れに行こう」


 草の上で横たわり絶命しているコボルトをじっと見つめて、石像のように固まって動かないアッキー。


「アッキー」

「…………」

「アッキー!!」

「ひっ! え? え?」

「急がないと!」

「で、でも……」

「『異世界(アストリア)』で生きていくなら、こういう事にも慣れておいた方がいいよ」

「でも刺したら血が……それに心臓の辺りを切り開くって、内臓とかそういうのが……」

「アッキー、私の事を姫って言ったよねー?」

「え? あ、言いました。言いました」

「アッキーは私のナイトだよねー?」

「え? ももも、もちろんでありますぞ! 我は、美幸姫のナイトであります!!」

「じゃあ、お願い! 姫のお願いを聞いてください! ちゃんと、お礼もするからさ」

「お礼?」


 そこまで言うと、アッキーはついに観念してコボルトの胸を斬り裂いた。その際に、気持ち悪さや怖さを打ち消す為にやっているんだろうけど、刃を入れる度に奇声をあげるので、他のコボルトや魔物を呼び寄せないかなと思ってしまった。


 集中してサッと済ませると、二人で10分かからなかった。魔石は小さいの1個。アッキーが見つけた。


「やったー! ありましたぞ、姫!! 1個、見つけましたぞ!」

「良かったー、じゃあ記念してその魔石、アッキーにあげるね」

「へ?」

「価値のあるものだから、大事にしてね。それじゃ、秋山君達を見つけよう」

「は、はひ! それではいざ参りましょうぞ!!」

「ちょっと待って、アッキー。顔を拭いてあげるから」

「はひいいいいい!!!!」


 コボルトの胸を引き裂く作業をさせてしまったので、顔に血が飛んでいた。それをハンカチで拭いてあげると、アッキーはいきなり変な雄叫びをあげた。


 うーーん、面白いキャラ。でも、頑張ったからね。

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