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Phase.249 『アッキー&ミユキ その1』



「待って! 待ってくだされーーい、美幸姫!!」

「美幸さんね!」

「御意、美幸さん!」


 私よりもぜんぜん若いし、現役高校生なのにおじさんに見える。お腹もパツパツだし、息切れして動きも遅い。まったくもう、大丈夫なのかな。


 アッキーは、タオルを取り出すとそれで自分の顔と首を拭った。そして私の視線に気づくと、頬を赤らめてもじもじとした。


「ちょっとアッキー、大丈夫?」

「は? 大丈夫とは、何がでありましょうか?」

「ちゃんとついてこれる? これからコボルトと戦うんだよ。もしも怖かったら、戻った方が……」

「それでしたら大丈夫でありまっす!! 我は……いえ、僕は何があっても美幸さんを守ってみせますんで!!」


 お腹パツパツで、歩きすぎて足もフラフラしているし息も乱れている……そんな感じで言われてもねー。


 でもアッキーは、前回のコボルト討伐に行った時に、市原君達の友達が何人も亡くなった事を聞かされているはず。自分自身もトロルに遭遇して、死に物狂いで逃げたってユキ君に話していたみたいだし……


「覚悟ができないのか、どうかって話でありますか?」

「え?」

「それなら、残念ながらまだできていないであります! でも大谷氏や有明氏と、この異世界にいるのが楽しいのであります! 今のままじゃなくて、強くもなりたいであります! そ、そして美幸さんを守りたいんでありますよ!!」


 いきなり迫ってきたので、ビックリしてちょっと後ろにさがっちゃった、あはは。でもなんとなくは、アッキーの気持ちが伝わってくる。


「でも、なぜ私を守るってくれるの? 私、結構はっきりと言う方なんだけど、正直に言うとアッキーよりも私の方が強いよ。年上だしね」


 アッキーは、俯いた。あれ、高校生相手にちょっと大人げなかったりしたかな?


「アッキー?」

「女の子を守るのは、男のつとめ!!」

「え?」

「我……ぼ、僕はですね!! そう考えておるのであります!! 美幸さんの方が僕より強くて勇気があって、それでいて人としての価値があるのは解っているであります!!」

「アッキー、あのね。確かにアッキーより私の方が強いんだけどね、でも人としての価値は同じだよ」

「いえ、その……つまり何がいいたいのかというと……姫を守るは、家臣の務め的なその……」

「あはは、つまりアレだ。アッキーは私のナイト様って言いたいんだ」


 真っ赤になるアッキー。うんうん、悪い子じゃないんだ。っていうか、私の大切な仲間でもある。


「でも、この世界じゃ自分の事を最優先に守って。じゃないと……まあ、解っているよね。それより、さっさと秋山君と陣内君を探さないとね」


 草を掻き分けて進む。すると、いきなりアッキーが迫ってきた。


「美幸さーーん!!」

「え? アッキー、なになに⁉」


 いきなり抱き着いてきた。どうしよう!! アッキーとは仲間だし、抵抗して傷つけてしまったらどうしようかと考えてしまう。そうしている間に押し倒された。


「アッキー、やめて!」

「美幸さん!! はあ、はあ、はあ!」

「ちょっとアッキー!!」


 アッキーは、私の口を抑えた。どうしよう!! 敵なら、反撃するけど……どうすればいいの、ユキ君!!


 次の瞬間、アッキーは私に向かって人差し指を立てる。そして向こうを指した。目をやると、アッキーが指示した辺りの草が揺れている。そして見えた。


 そこには、なんと二足歩行で人と同じく防具を身に着け、槍や短剣を持つ犬の魔物がいた。そう、あれはコボルト。


 そうなんだ。アッキーは、私より先にあれを見つけたから見つからないように……


 私はアッキーの手を優しく握ると、頷いた。アッキーは私の口から手を離す。


「ありがとう、アッキー。あのままだったら、コボルトに先制攻撃されていたかもしれなかったね」

「いきなり押し倒したりなんかして、ももももも申し訳ありませんでしたああ!!」

「声、大きいよ。でもありがとう。これで、こっちが先手を打てる」


 私のセリフに驚くアッキー。


「えっ⁉ 先手を打てる……ってまさか」

「このまま放置すれば、拠点を見つけて襲撃してくるかもしれないし、そうでなくてもユキ君達と遭遇するかもしれない。もしくは秋山君達と鉢合わせして、秋山君達を傷つけるかも。だから、ここで仕留めておくの」


「ぼ、ぼぼぼ、僕らだけでありますか⁉」


「そう、僕らだけ、アハハ。でも、見た所4匹だね。例の賞金首もいないし、それなら私一人でも倒せる。アッキーは、逃げて」

「にににに、逃げるだなんて!! そ、そうだ!! そうだった、我はナイトなり!! ナイトは姫をガードするものぞ!! なので、美幸さんを置いては、逃げないのでありますよ!!」

「それじゃ、ここで待ってて。それでもし私に何かあったら、逃げてね」


 アッキーは、返事をしなかった。こっそりと忍び寄るには、ちょっと距離がある。私は身を屈めて、コボルト達の方へ近づいて行った。


 周囲の頭の上まで伸びきった草をできるだけ揺らさないように、慎重に。気づかれないように。


 コボルト達は気づいていない。寄り集まって、何か話しているようにも見える。だけどコボルトの言葉なんて解らないし、言葉なのかも解らない。


 コンパウンドボウに矢を装填する。先手でまず、1匹。


 実を低くしている所から、サッと直立して弓を構える。そして矢を放った。


 矢は命中し、コボルトのこめかみを射貫いた。相変わらず、強力な貫通力を誇るコンパウンドボウ。それを再確認した。

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