表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
245/471

Phase.245 『早々にバラバラ』



 シャララララ……


 グリーンスネークは、舌をチョロチョロと出した。俺達に向かって威嚇している。


 どうしよう……ってやるしかないんだけど、蛇系の魔物は初めて遭遇する。そう言えば、このグリーンスネークと小田を追って行った小貫さんは何処にいったんだろう。やはり、周囲が草ばかりで視界が遮られていると、状況を把握できない。


 シャアアアア!!


 グリーンスネークは、巻き付けている小田の身体を更に締め上げた。小田は悲鳴をあげるが、やはり圧迫されているからか声にならない。


 トモマサが飛び込もうとした刹那、先にこの光景に見かねた北上さんがコンパウントボウを構えて矢をグリーンボアに向けた。


「北上さん!!」

「大丈夫、絶対に小田君には当てないようにする!!」

「でも!!」

「小田君には、決して当てないって誓うから、私の腕を信じて!!」


 シャアアアアラララ!!


 北上さんがコンパウンドボウで狙っているのを気づいたのか、グリーンスネークは鈴森を殴り飛ばした長い尻尾を大きく振って、今度は北上さんに向けて放った。


「北上さーーん!!」

「きゃあああっ!!」


 咄嗟に矢を放ったが、いきなりの尻尾攻撃に邪魔されて狙いが逸れる。そしてその尻尾は、北上さんに向けて襲い掛かった。俺は叫んだ。


 次の瞬間、大谷君が北上さんを突き飛ばして尻尾攻撃は外れた。結果、彼女を救った。


「大谷君!!」

「ぼ、僕は大丈夫です! それよりも前!!」


 シャラララ……


 再び、強烈な尻尾攻撃。今度の狙いは俺だった。


「まずい、うおおおおお!!」


 剣を構える。かなり重そうな攻撃だけど、この剣で受け止める事ができるのか。もしそれがきれば、このまま距離を詰めて小田を助けられるのに!!


 飛んでくる尻尾!! 


 受け止めようとした所で、目の前に見慣れた巨体が現れる。なんとトモマサが俺の盾となって、グリーンスネークの攻撃を弾いてくれた。


「トモマサ!!」

「よっしゃ、受け止めてやったぜ!! 今度はこっちのターンだな!!」


 トモマサがそう言い放った直後、グリーンスネークの後ろの茂みから誰かが飛び出してきた。それは小貫さんだった。小貫さんは、剣をしっかりと握りグリーンスネークの身体に突き刺した。


 シャアアアア!!


 悲鳴をあげるグリーンスネーク。ここだ!!


「行くぞおおお!! ついてこい、蟻群! 小早川君、有明君!!」


 また再び尻尾攻撃がくる。しかし小貫さんの剣が身体に深く突き刺さっているせいか、先程までの鋭さがない。


 俺は尻尾攻撃を避けると、距離を詰めてグリーンスネークの身体に抱き着いた。同じように、続いて蟻群、小早川君と有明君も俺と同様に抱き着いて、小田を助けようとしている。


 どうだ!! いくら力が強くてしっかりと巻き付いていても、この人数が相手なら!!


 ビュンッ!!


 北上さんの放った矢が、グリーンスネークの身体を射貫いた。矢はグリーンスネークの身体を貫通し、向こうに消えていく。矢の通った穴からは血が流れ、グリーンスネークは明らかにぐったりとした。


「力を入れろおおお!! 小田を助けるぞ!!」

『おおおおお!!』


 トモマサと小貫さんも加わった。小田に巻き付いているグリーンスネークの長い身体を、どうにかしようと必死だ。もちろん俺も、思い切りグリーンスネークの身体を引っ張った。もう少しで助け出せる。


「畜生、なめやがってー!!」


 復活してきた鈴森。その手にはコンバットナイフと鉈が握られていた。


 俺達は大蛇と組みしながら、鈴森にも手伝うように彼に視線を向けた。もちろん、銃を使うなという事も含めてだ。


 すると鈴森は全力でこちらに駆けてきた。助走をつけて思い切り振りかぶり、手に持っていた鉈を投げるとコンバットナイフを振り上げる。


 投げた鉈は見事にグリーンスネークの頭を割り、更に接近して鈴森はコンバットナイフで何度もグリーンスネークの身体を突き刺した。


 やがてグリーンスネークは絶命し、自分の長い身体を使って小田にガッチリ巻き付けて拘束していたが、それを解いた。


「っしゃああ!! どうだ!! やってやったぜ!! 仕返しだ!!」


 グリーンスネーク。直訳すると、緑の蛇……だけどその血は赤く、鮮血が飛び散って鈴森の顔にも降りかかっていた。それが一瞬、狂気に満ちた顔に見える。


 だがよく考えてみろ。俺だってゴブリンに初めて襲われた時、ウルフにだってそうだけど、あの時無我夢中で生き延びようとして魔物の返り血を浴びていたはずだ。

 

 俺はザックからタオルを取り出すと、それを鈴森に向かって投げた。


「とりあえず、顔を拭け。殺人鬼みたいになっているぞ」


 タオルを掴んだ鈴森は、ペっと唾を吐くと俺のタオルで顔を拭いた。


 小貫さんが近づいてくる。


「さて、どうするリーダー」

「そうだなあ……」


 どうするって言っても……


 いつの間にか急成長している拠点や、その周辺の植物たち。そしていきなりグリーンスネークという魔物に仲間が襲われる展開。


 今日はコボルトを討伐する予定なのだが、コボルトを見つける前に既に色々なアクシデントが起こっている。気を引き締めなければならない。


 俺は皆を集めた。そしてグリーンスネークから解放されても、その場で倒れたままの小田に近づいて声をかけた。


「小田……」

「いてて、だ、大丈夫ッスよ。ぎゃああっ」

「少し触れただけで、この痛みか」


 鈴森も小田に近づいて、彼の腹辺りに軽く触れた。すると小田はまた悲鳴をあげた。


「これはアバラ骨が折れているかもしれねーな。どうする、椎名?」

「とりあえず、コボルトは追う。それで申し訳ないけど……」


 トモマサが慌てる。


「嫌だぞ!! 今度は俺も戦いに参加するからな!! 俺はそもそも戦いたくて、この世界へきてるんだからな!!」

「ふうー、じゃあ蟻群、大谷君、有明君。3人は小田を拠点まで運んでやってくれ。頼めるよな?」

「2人で大丈夫ッスよ。小田は、俺と大谷だけで拠点まで運べる」

「いや。兎に角、油断はするな。3人で行け。それと翔太と陣内が、未だ追いついてきてない」

「それなら私が見てくる」


 北上さんが言った。けれど、彼女一人に行かせるのは、少し心配だ。


「それじゃ、北上さんと小早川君に頼む。2人で行ってきてくれ。皆、もしもの時は拠点に戻れるな。来た方角はあっちだから、何かあったら拠点まで引き返してくれ」


 こうして意気揚々とコボルト討伐に出かけた俺達は、早々にバラバラになってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ