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Phase.242 『再び討伐へ』



 ――――翌朝、土曜日の早朝。


 起床すると、テントから這い出して早速焚火をする。そしてカップラーメンと缶詰を開けて食べた。


 未玖の店に行って、朝食をとってもいいかとも思っけど……腕時計を見ると、まだ4時過ぎ。昨日は遅くまで店をやっていたみたいだから、今日は流石にまだ寝ているだろうと思っての事だった。


 それにしても……気持ちのいい朝だ。空気も済んでいるし、今日はいい天気になりそうだと思った。因みに、今はスタートエリアにいる。


 スタートエリアにいるなら、丸太小屋で眠ればいいのではと思うかもしれないが、なんとなくテントで寝ようと思って、昨日はスタートエリアの丸太小屋から少し離れた場所にテントを張って眠った。


 なんとなくだけど、周囲に生えている草が急成長しているというか……あれからまだ僅かしか経っていないのに、かなり伸びてきているなと思った。


 またここへ初めてきた時のように、草刈りをしなければならないな。


 ズルズルズル……


 そんな事を考えながら食事を終えて、焚火に水の入った鍋をかける。井戸の水。


 沸騰したら、それでインスタントコーヒーを入れて飲んだ。一息ついた所で、北上さんが近づいてきた。


「おはようございまーす」

「ああ、北上さん。おはよう。早いね」

「うん、早いよー。だって今日は、これからコボルト退治に行くんでしょ? 私も行くからね」


 お見通しか。討伐しきれなかったコボルトリーダーと、もう一匹の賞金がかけられたコボルト。それをこの土日……というか、今日決着をつけてしまいたかった。


 そんな危険な魔物が、まだこの拠点の周辺をうろついているっていうのが気になって仕方がないっていうのもあるけれど、あのブルボアや他にも危険な魔物がなぜか集まってきている。そしてその危険な懸賞金をかけられている魔物を狩りに、他の転移者――冒険者たちがこの拠点に集まってきている。それがまた、なんだか落ち着かなかった。


 さっさと、やろうとしていた事を片付けておきたい。そんな思いもあった。それにコボルトの討伐は、俺達にとってもこの世界で生きていく、大きな挑戦の第一歩であると考えていたから。


 尾形さんは、他の冒険者にも伝えておいてくれると言っていたが、あの獲物は俺達が仕留めたい。


 憎たらしいヤンキー共だったとはいえ、何人もがあのコボルトには殺された。そういう意味での決着でもあるんだ。


「それで、他には誰がいくの? あの不良君達も連れていくの?」

「どうだろう? もう十分に命のやり取りっていうのは、理解しているだろうし、ついて行きたいって言えば連れていくつもりだけど……そう言えば、大谷君達が昨日、一緒に行きたいって言っていたかな」

「へえ、そうなんだ」


 北上さんも、止めはしない。大谷君達ももう十分に理解しているし、彼らはスマホを持っているし、もとの世界へは転移できる。なのにここにいると言う事は、俺達と思いは同じ。


 北上さんに珈琲を勧めると、もう飲んできたからと断られた。俺は立ち上がり、焚火を消してザックを背負い剣を腰に吊り下げて、お手製の槍を手に持った。


「それじゃ、行こうか。翔太達も行くと行っていたから、迎えに行こう」

「ふーん。ユキ君と私、二人だけじゃないんだ。残念」

「え?」

「ううん、冗談だよ、冗談。だって私とユキ君二人だけで、コボルト達の潜んでいる場所に行く度胸なんてないもん。コボルトって結構、危険なんだよ。ゴブリンもそうだけど、人間と同じで武器を持っているから、剣や槍なんかでお腹とか刺されたら、それでもう終わりだもんね」

「ああ、そうか。そうだよね」


 一瞬ドキっとする冗談を平気でいう。いい歳をしたおじさんを、からかわないで欲しい。


 俺と北上さんは、翔太達のいる川エリアに向かった。そこで翔太や鈴森と合流し、コボルト討伐の為のメンツを集めた。


 俺、北上さん、翔太、鈴森、トモマサ、小貫さん、蟻群、小田、陣内、そして大谷君達3人が集まってきた。翔太が声をあげた。


「おーおー、全部で12人か。これでもまだクランメンバー全員じゃないもんな。こうして見ると、俺達の仲間もかなり増えたな」

「そうだな。とりあえず、拠点には他のグループの転移者もいるし、俺達が留守中にまた魔物の襲撃があってもおかしくもない。だから、ある程度戦力は残さないといけないからな」


 北上さんがクスリと笑う。


「未玖ちゃんもいるしね」

「ああ、でも大井さんや堅吾、それに長野さんとか頼りになるメンツも残しているから、まず大丈夫だろう。これで安心してコボルト討伐に迎える」


 今度は、トモマサが言った。


「へっへっへ。楽しみだぜ、今度こそ退治してやるぜ。コボルトって例の奴だろ?」

「そうだ。ターゲットは2匹。5万と、その十倍の50万の懸賞金が懸けられた奴で、コボルトリーダーっていう種だそうだ」


 新メンバーの不良君達――蟻群、小田、陣内の3人が首を傾げた。


「コボルトリーダー?」


 説明しようとすると、小早川君がしゃしゃり出てきた。


「ふむ。我が教えてしんぜよう。コボルトリーダーっていうのは、その名の通りコボルト達のリーダーなのだ。だが、油断するでないぞ。コボルトリーダーは、単にコボルトのリーダーという訳ではなく、コボルトの上位種なのだ。つまり、かなり強いと思っていいだろう」

「何が思っていいだろうだ! 偉そうにー」

「ヒ、ヒイイイ!! よ、よせ、仲間だろ!」

「この野郎、生意気なんだよ!!」

「やめろ、小田!! おい、蟻群も止めろ!」

「ヒイイイイ!! 皆、小田氏を止めてくれ!!」

「うるせー、こんにゃろ、こんにゃろ!!」


 しゃしゃり出た所から、ふんぞり返ってえらそうに小田達に向かってうんちくをたれる小早川君は、確かにちょっとアレだった。


 それにムカついてか、小田は小早川君につかみかかろうとする。それを慌てて蟻群と陣内、そして大谷君と有明君が止めた。


 まったく……といった感じだが、つかみかかろうとした小田は、単にムカついただけで、もう虐めとか陰湿的なものは何も感じない。


 こいつらは、俺達のクランに入る条件として言った事を、ちゃんとしっかりと覚えていてくれているんだなって思った。


 翔太とトモマサは、そんな高校生たちの様子を見てケラケラと笑っている。


 よし、拠点の事は大井さんと長野さんと成田さんに任せているし、問題はない。今度こそ、コボルトを討伐するぞ。


 俺達は拠点を出ると、スマホでコボルトの位置を再度確認して北側の森に入った。

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