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Phase.233 『不良達のその後』



 コボルトを討伐に行った日曜日の翌日――――つまり月曜日。翔太と北上さんと大井さんと、3人で昼休みにラーメンを食べたあの日からもう2日が過ぎていた。今日は水曜日だ。


 平日なので、もちろん会社に行かなくてはならなかった。


 そして今はもう、一日の仕事を終えて練馬にある我が家へ帰宅し、さっさと『異世界(アストリア)』にやってきている。


 今日は新記録。仕事を定時で終えて、ハヤブサのように急いで帰ってきたから、19時前にはもう『異世界(アストリア)』入りを果たしている。フフフ。


 そして未玖や同じくもとの世界へ戻ること出来ない女子達、出羽さんやうららの為にケーキを買ってきている。これを見たら皆、とんでもなく驚いて喜ぶぞ。なんせ、1人3個なのだ。奮発はしたけれど、どうせサプライズするならこれ位豪勢にした方がいい。


 それで早速皆に会うなり、ケーキをプレゼントしたんだけれど……皆の喜びようは俺が予想していたよりも遥かに上回っていた。


 出羽さんには何度もお礼を言われたし、うららはずっとケーキの歌を歌っている。しかもアコースティックギターで、ひきがかりでだ。


 そして未玖に関しては、ケーキを再び口にできる喜びで、泣き出してしまう始末だった。それには、俺も驚いて戸惑ってしまった。


 でもこれ程皆喜んでくるなら、また買って来るしかないなー。そう思った。


 そうそう、話は変わるけれど、あれからこの拠点に変化が起きた。格好をつけて言うなら、この場合に新しい風が吹いたとでもいうのだろうか。兎に角、変化があったのだ。


 拠点の防衛強化、畑作りや拠点の設備、パブリックエリアと店舗の開発、ゴブリンの襲撃、コボルト討伐、南エリアの調査と、大谷君達が見つけた穴とそこにいたセンチュウの駆除、佐竹さん達を襲った大型のブルボア、長野さんが言っていた銃の入手先の件、市原達不良グループの事。


 考える事、やることは山積みだけどその中でも早速、変化があった事。それがパブリックエリアの事だった。


 未玖達にケーキを届けた後、俺は早速そこへ向かった。草原エリアの先――そのスペースに新しく拡張して作ったエリア。順番で言えば南エリアの次に広げた、今うちの拠点で一番新しいエリア。


 早速日曜日に、成田さんにパブリックエリアの開発の話をした。俺達みたいな転生者を誰でも迎え入れられるエリアを造り、そこに様々な店舗を作って収益を稼げる場所を作りたいと。


 それを話した時の成田さんの表情は、実に明るいものだった。とても面白い。是非、やらせてくれと。俺は、成田さんに早速その件を一任した。


 すると成田さんは、直ぐにパブリックエリアの開発に取り掛かった。作業には、松倉君や三条さん、団頃坂さんにトモマサに堅吾、更には大谷君達も月曜日は学校から帰ってくるなり作業に参加してくれた。もちろん、俺や翔太も出来る限りは、協力したつもりだ。


 そして何より驚いた事もあった。その作業をしてくれた大谷君達の事だ。


 大谷君達と言ったが、大谷君と小早川君と有明君のトリオだけの事ではない。その他に、市原軍団のモンタや十河、小田、茂山、陣内、成子、蟻群――つまり市原、山尻、池田以外の不良達も含まれているのだ。


 市原達、不良グループとはある取引をした。


 もとの世界へ戻らせてやるかわりに、もう二度と俺達にはかかわらない事。それでこの拠点の女神像の存在を教え、使用する事を許した。


 この女神像を使用するという事は、普通ならまた『異世界(アストリア)』に転移すればこの女神像に戻ってくる。つまり、また俺達の拠点に足を踏み入れるという事だった。だから俺との約束は、もとの世界へ戻れる代わりに、もう二度と『異世界(アストリア)』には転移しない事を意味していた。


 北上さん達が使った方法を使えば、こことは別の女神像に転移する事もできるけれど、その知恵を不良達は知らない。だからもう異世界にはかかわらない、そういう条件だと言えた。


 不良達は市原を始め、皆頷いて家に帰った。だけど、月曜日の夜……市原、山尻、池田のトリオを除く、コボルト討伐で生き残った不良達は、俺との約束を破りもう一度だけ話をしたいとここへ転移してきた。


 もう一度だけ……そう言うなら、話位は聞いてもいいと思った。


 それで不良達が言い出した事、それはこの拠点のルールを厳守するから、俺達の仲間になりたい。このクランに入れて欲しいという事だった。


 びっくりはした。びっくりはしたけど、俺は、それならばと不良達に三つの条件を出した。


 一つは不良達から申し出た事。この拠点のルールを厳守すること。それができない場合は、クランから出て行ってもらう。


 二つ目は、大谷君達の事だった。


 この中には、かつて大谷君達にひどい事をしたものがいるかもしれない。ならここで、一度ちゃんと謝って、その蟠りを完全に清算する事。そしてこれからは、もとの世界でも彼らに二度と酷い事をしない事。皆で協力する事ができなければ、クランの仲間としてはとても迎え入れられない。


 そして三つ目は、もう一度よく考えて決断して欲しいという事。

 

 コボルト討伐で、亡くなった市原の仲間達を思い出して欲しい。この世界には、コボルトやゴブリンなどの危険な魔物たちが生息している。そいつらと遭遇すれば、殺される可能性だってある。


 でもこの拠点にいる皆は、それを解っている。だからその覚悟があって、俺達の仲間になりたいと言っているのかどうか……本当の気持ちをもう一度自分で確かめて欲しい……と。


 結果、モンタ達はそれでも俺達のクランに入りたいと言った。


 ゲームやアニメなど、こういう異世界に興味のあるオタク趣味のある者なら解るけど、正直不良がこの異世界に興味があると言って、命を賭ける意味が俺には理解できなかった。


 だけど、それでもかまわないというのなら、俺はモンタ達を受け入れる事にしたのだ。まあ、理由は人それぞれだしな。


 そんな訳で、また新たなクランの仲間も増えて、パブリックエリアは完成とは言えないけれどそれなりに形ができてきた。


 ――火曜日。またびっくりする事が起きた。昨日の夕方、俺達とは別の転移者が俺達の拠点にやってきたのだ。


 早速、彼らをできたばかりのパブリックエリアに迎え入れる。転移者達は、この『異世界(アストリア)』で冒険を重ねているみたいで、自分達の事を冒険者だと名乗っていた。

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