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Phase.225 『落下 その1』



 ――南エリア。


 ここは、林のような場所。草木は生い茂ってはいるけれど、森路エリアや川エリアみたいに草木が沢山生い茂っている森っていう感じでもないし、荒地のようにその辺に岩がゴロゴロとしている場所も目に付いた。


 小早川とカイと和希、4人で歩いていると目の前に大きな岩を見つけた。


 その岩の後ろにもまた同じような岩がいくつもあって、表面は苔むしていた。そしていくつも重なり合っているものもあって、こんなものが僕達の拠点内にあるのだと思うと面白いと思った。


 大きな岩に、近づいてみる。そして触ると、苔むしているからかザワザワとした感触が伝わってくる。和希が目をキラキラとさせて、顔を近づけてきた。


「え? 何かいた? もしかして、何かいたの?」

「え? ううん、別に……でも凄い苔むした岩だよね。あっちも重なって洞穴みたいになっているし、中を調べたらもしかしたら、何かいるかもしれない」

「ひ、ひいいいい!! な、何かいるかもしれないって何がいるんだよおおお!!」

「そ、それは解らないけど、ただなんとなく何かいるかもしれないなあって」


 そう言って僕と和希、そしてカイは岩でできた洞穴に近づいた。すると、そんな僕達3人から小早川は距離をとった。


「し、知らんぞ!! 何が出てきても知らんぞ!! きっと、あれだ!! あれ!! その穴からトロルが出てくるぞ!! 足を掴まれて引きずりこまれるんだ!!」


 怯える小早川を見て、カイが笑った。


「ハハハハ、それは大変でござるな。でも生憎と、この穴だとトロルにとっては、ちくとキツくて入り込めないでござろうな。ゴブリンやコボルトならあるいは……」


 ゴブリンやコボルトと聞いて、また小早川は距離をとる。そして少し離れた所にある岩の陰にコソコソと隠れた。


 コボルトには、襲われて痛い目にあった。だからコボルト、トロルと聞くと確かに僕も未だにビクッとしてしまうのは確か。


 小早川を気にしている間に、先に和希とカイが洞穴の中を覗き込んだ。待って、僕も見たい。


「おおー、これは良継殿、河北氏。この中は、結構ひんやりして気持ちいいでござるよ」

「確かにそんな感じだね。でも残念ながら、この穴の中には、魔物はおろか何かしらの動物も潜んではなかったようだ」


 僕は中の様子が気になって、二人の間に割り込もうと身を乗り出した。


「僕にも中を見せて。もしかしたら、じっとよく見ないと、解らない何かがいるかもしれないよ」

「え? じっとよく見ないと?」

「だってここは、異世界でしょ。僕は、ブロンズでできた生きた鳥を既に目にしている。そんな魔法のような生物がいる世界なんだから、探せばはっと驚くようなものがいるはず……だと僕は思っている」

「確かにそうだね。僕もそれが面白いと思って、色々とこの世界を調べてまわっているよ。外に出る時も、大して僕は戦力にならないから足を引っ張るだけなんだけど、外に出る時は無理を言って、椎名さんに連れていってもらっているよ。だから僕も大谷君と共感できるな」

「そうでござるな。であれば、この一見何もないように見えるこの辺りにも……」


 カイが手を伸ばしたので、僕も何があるのか気になって……というか、洞穴に入れそうだったので、入りたくて更に前のめりになった。そしてカイと和希の背に手を乗せて、二人を押した……その瞬間だった。


 二人は体勢を崩して前に倒れる……というか、両手は地についたんだけど……洞穴の中に二人は入ってしまった。まって、僕が先に入ってみたかったのに……


 刹那、二人の身体が更に前に崩れた。いや、違う、崩れたのは地面。悲鳴。


 ボゴオオッ!!


「うわあああああ!!」

「ひいえええええ!!」

「カイ!! 和希!!」


 咄嗟に二人を掴もうとしたけれど、間に合わない。と言うか僅かにカイの服を掴んだけれど、カイの小太りの身体は重くて、非力な僕の握力じゃどうにもならずに直ぐに手から離れてしまった。そして二人は、いきなり地面に開いた穴の下に落ちて行く。


 僕は穴の中に顔を突っ込むと、何度も叫んだ。


「カイーーー!! 和希――――!!」


 振り返るとダッシュで小早川が岩の陰からこちらに走ってくる。


「それみたことか!! それみたことか!! 我の予感的中なり!!」

「小早川君、そんな事より、どうしよう!!」


 目が激しく泳いでいる小早川。さっきまであんなに怯えていたのに、今はカイと和希の安否が気になって、自分が恐怖していた事を忘れてしまっている。


「とりあえず、我は誰か助けを呼んでこよう!!」

「うん、お願い。草原エリアなら成田さんがいるし、川エリアなら最上さんや団頃坂さんがいる。でも、成田さんがいいかも。とりあえず、誰でもいいから呼んできて!!」

「うむ、解った! 我に任せよ!!」


 小早川は振り返って、人を呼びに走って行こうとした。その時、穴の下の方で声が聞こえてきた。


「おおーーーーい、誰か返事するでござるううーーー」


 え? カイの声!! 


 僕と小早川は、顔を見合わせると急いで穴の方へ行きそこへ頭を突っ込んだ。


「カイーーー!! 大丈夫なのかあああ!!」

「有明氏!! 怪我はしていないかーー!! 助けは必要かああああ!!」


 僕らの声が穴の中に響き渡っていった。カイには、この声は届いているはず。

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