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Phase.22 『剣』



「こ、これって、異世界もののゲームやアニメでよく見るやつ……」


 見れば見る程、ポーションに見える。


 ポーションと言うのは、異世界物のゲームやアニメなんかで登場する回復アイテム。回復ポーションともいうけれど、要は薬。魔物とかと戦って傷ついた時に、使用する回復アイテム。青っていう色も回復ポーションとしては、鉄板の色だった。


 しかし、これを飲むのは勇気がいる。なぜなら、ポーションだろうというのは憶測であってもしかしたら、毒薬かもしれないから。


 もしも誰かの罠なら、きっとポーションに似せて置いておくだろう。それに、もう一つ。この丸太小屋は何十年って放置されていた可能性があると思うけど、消費期限は大丈夫なのだろうか?


「うん。とりあえず、今はこれをしまっておくか」


 とりあえず、これを判別するのは先送りにしてもいいと判断した俺は、ポーションのようなものを木箱に入れて物置に戻した。


「よし、今日はこれ位にしようか」


 物置にあった斧は、全て小屋の外に出した。小屋の壁に立てかける。それから、他の出した物も物置に戻して扉を閉めた。


 クーラーボックスからビールを1本取り出すと、それと買って持ってきたビーフジャーキーを持ってまた小屋の外へ出た。


 焚火の前、ウッドデッキに座り込むと晩酌を楽しむ事にした。ビールの缶の蓋を開けて、まずは一口。ビーフジャーキーの入っている袋を開けて、1枚取り出すと齧る。


 モッチャモッチャモッチャ……うまい!


 周囲は、真っ暗。俺のいるここだけが、焚火とランタンの灯りで照らし出されていた。夜空を見ると、二つの月。少し雲がかかっていた。


 明日は、またこの辺りを調査したい。あんな川も見つけたし……ゴブリンともあった。


 ……ゴブリン。


 腰に装備しているホルスターからおもむろにサバイバルナイフを取り出すと、焚火の前――椅子に座ったまま構えてみたり突いたり振ったりしてみた。


 もしもまたゴブリンと遭遇し、見つかるような事があればきっと戦いになる。鹿を仕留めていたゴブリン。食べる為に狩りをする事は当然だろうけど、あの時のゴブリン共からは確かな残虐性が見えた。俺を見たら、きっと恐ろしい形相をして襲い掛かって来るだろう。


 ゲームやアニメなんかじゃない。あの棍棒で頭を思い切り殴られたり、槍で腹を刺されればとんでもない事になる。


 もう何度かナイフを振って見ると、それをホルスターに納めて立ち上がった。


 焚火はそのままにして、小屋に入ると俺はランタンを持って寝室へと向かった。そして、生まれて初めて寝袋に入ると横になった。


 目を閉じると、やっぱり疲労していたのかあっという間に意識が途切れた。


 




 ――――スマホのアラームで、目覚める。寝袋から出ると、アラームを止める。時間は、朝3時。そして、今回の異世界生活二日目、日曜日だ。


「う、さっむ!!」


 薄っすらと吐く息が白く見えた。この俺のいる異世界は、昼間は夏みたいな気温だが夕方になると次第に気温が落ちて夜になると肌寒くなる。それはもう体験済みなので知っていたが、今日は特に冷えている感じがする。


 気合を入れると、覚悟して寝袋から起き上がった。


 ガスッ


「いってっ! な、なんだよ!」


 腰の辺りに何かが当たった。


 寝袋から出て確認して見ると、寝袋を置いた寝台と壁の隙間から何かがはみ出していた。


「なんだこれは?」


 それを手で掴む。お、重い! しかも、何か長さもある。片手で掴み上げようとしたけれど、それじゃ無理なので寝台に飛び乗って両手でそれを引っ張り出した。


 そして窓を覆っている板をあげて、月明りでそれが何なのか確認した。


 ――剣!!


「うおおお!! け、剣!! これは剣じゃないか!!」


 異世界好き。そういうゲームやアニメが好き。しかも男なら、剣を手にしてテンションのあがらない奴なんているのだろうか? この瞬間、さっきまで感じていた寒さも眠気も一気に吹っ飛んだ。


 剣を大切な我が子のように抱きかかえると、寝室を出る。念の為持ってきていたコートを羽織り、小屋の外に出た。


 焚火の火はもう消えていたが、棒で穿ると奥の方にある炭が僅かに赤くなったので、直ぐにそこへ小さくした薪を放り込んで火を燃え上がらせた。


 ヤカンに水を入れて火にかける。湯が沸くまでの間、俺は思わぬところから手に入れた剣を焚火に照らして眺めた。立派な鞘に納められている。


 思い切って鞘から剣を抜いて見ると、焚火の灯りで剣が輝いて見えた。錆びてもいないし、欠けてもいない立派な剣。思わず顔がニヤける。


「すげーー、すげーーな!! 剣だ!! 本物の剣だぞこれは!!」


 振って見る。剣は結構な重量があり、片手で振ると直ぐに手首を痛めてしまいそうだった。


「いてて……これは、剣を使う為の練習をしなければまともに使えないな。筋トレもしないと、とてもじゃいけど素早く振れないし、両手で使うにしても思い切り振ったら俺が剣に振り回される」


 お湯が沸いたので、マフカップを用意して珈琲を入れた。それを一口。


 とりあえず、折角剣を手に入れたのだから剣を使いこなしたい。そうすれば、きっとあのゴブリン共に襲われたとしても正面からでも戦えるかもしれない。よし、決めた。まずはこの重さに慣れる所からだな。


 俺は、剣を鞘に収めてそれをベルトに通して腰に吊るした。ベルトには他に、鉈と4本のサバイバルナイフも付けているが、剣は特に重くてその状態で焚火の周りを試しに歩いて見ると、物凄くズッシリときた。


 でもまずは、これに慣れる所から。そう決めた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 話は異世界を手探りで探索しようとしていて面白いと思います。 まだ22話なのでこれからどうなるか楽しみです。 が、ビーフジャーキーを食べるシーンで 『モッチャモッチャモッチャ……うまい!』…
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