Phase.206 『モンタ その2』
俺達の拠点にいきなりやってきて、水や食料や傷の手当てをしろと言ってきた市原率いる不良軍団。
俺はそいつらに、草原エリアの一部に専用の場所を作る。そしてそこで大人しくしてられるなら、願いを聞いてやると言った。それで不良達は、条件を呑んだ。
それから早速、不良達19人のうち3人が怪我の治療をして欲しいと言ってきたので、渋々ながらも診察テントや不死宮さんの小屋があるスタートエリアまで連れていって治療を受けさせた。
治療後、3人のうち2人を先に、団頃坂さんが草原エリアの彼らのいるスペースへ送ってくれたので、残る1人を俺が送っていく事にした。
そして草原エリアに行く途中に通りかかる森路エリアにて、その俺が連れ歩いていた不良と話をしてみる事にした。
なぜなら、彼は他の奴らに比べて友好的な感じがしたからだった。どちらにせよ、もとは同じ人間で日本人だ。互いに理解し合えば、仲良くなれるはず。
ただ、俺達や大谷君達にとって問題があるようなら、この先こいつらにここを出て行ってもらえるようにするしかない。
「モンタ」
「ッス!」
「それで、なぜモンタはここにいるんだ?」
モンタは余程、この真っ暗な森の中が恐ろしいのか、キョロキョロと落ち着きなく周囲を見回していた。
「大丈夫。俺はゴブリンともウルフとも戦った。それにトモマサ……でかいやつを見ただろ? あいつは、現役のプロレスラーでとても頼りになる奴だ。拠点には、銃を持っている者もいる。だから大丈夫だ」
「ッス! 解ったッス!」
「それで、モンタはなぜここにいる?」
「そ、それは……市原君が、ついてこいって言ったから……」
「なぜついてこいって?」
「大谷や小早川や有明が、消えたって。それで夢のような世界があって、そこへ逃げ込んだって。最初は、夢のような世界って言うから、からかっているのかと思ってたッスけど、市原君が証明してやるからついてこいって。それで商店街にあったメイドカフェに行ってスマホにアプリを入れて……10万はキツかったっすけど、逆らえなくて」
小早川君からそこの話は既に聞いていた。きっと市原は大谷君を捕まえてる為に、後を追ってあのメイドカフェを見つけたんだ。俺達が秋葉原で入った店と、同じ系列の――
それで後はスマホにアプリを入れて、こっちへやってきた。それで彷徨って、魔物に襲われ怖い目にあいながらも偶然にこの拠点へたどり着いたという訳か。
「モンタはじゃあ、市原のつきあいで来たんだ」
「まあ、あと面白そうだったから。実際、こんな夢のような世界があるなんてマジで、ビビりましたし!」
「それでどうやって帰る?」
帰り方を聞くと、モンタは俯いた。
「解らないッス。俺達、市原君に言われるがままに何も深い事考えずにこっちに来ちまったんで、よく解らないッス」
「もしかして、お前ら女神像で帰る事を知らないのか?」
「え? 女神像……なんスか、それ」
市原は、何も試さなかったのか。そのまま仲間を集めて、勢いで転移してきた。皆、一応に武器を持っているのは、きっと異世界なんてあるわけはないから、転移できなかった場合……嘘だと解った場合に店の子たちを脅す為に所持してきていたのだろう。
結果、その武器はこの世界で身を守るためとしてや、道具として役にはたっただろう。だけど思いもしなかった転移で、万全の準備もしていなかった。水……そして食べ物も無く、ひもじい思いをしたに違いない。
転移してきた直後にそのまま振り返って、女神像の前でアプリを使用していれば、いくらでももとの世界へは戻れたのに……こいつらは全くそれらに気づいていない……と言うか知らない。
「それでお前らの目的はなんだ? まさか、大谷君達を虐めにこんな異世界までやってきたのか?」
「…………」
俯いて足元を一点に見つめるモンタ。やはりそうか……俺の学生時代にもクラスには、不良と呼ばれる奴らがいた。
今の不良と比べて、また種類も違うけど確かにねちっこい奴はねちっこい。そして大谷君達が本当に弱い者かどうかは別として、いいカモを見つけると必要以上に攻撃するんだ。弱い1人に対して、大勢で。本当に弱い奴らはどっちなんだと思ってしまう。
「一つ言っておくが、もとの世界での事に関しては、特に俺達は関わる気はない。だけどこの異世界では、大谷君達は間違いなく俺達の身内だ。身内に危害を加える奴らがいるなら……お前らだってそれ位解るだろ?」
「ッス!」
「そうか、良かった。くれぐれもここで問題は起こさないでくれよ。それじゃ、皆の所へ戻ろう」
立ち上がる。そしてモンタに、こいと合図をすると、モンタは思いつめた顔で詰め寄ってきた。
「あの……俺らもとの世界へ戻れるんスか!? もしかして、このままずっとこの世界に……」
顔を左右に振って否定する。
「今、俺達の安全上、モンタ達が脅威でない事が解れば、全面的に力になる。だけど、今はまだ無理だ」
「じゃあ、椎名さん達に認めてもらう為には、俺達はどうすりゃいいッスか?」
「それは……具体的な事を俺が言ってもそれは意味が無いし、誠実さと……どう見てもお前らのかっこはヤンチャに見えるけど、それは見せかけだけで本当は優しくて信頼に値する奴らだって証明してくれ」
モンタは、また俯いて俺に言われた事に対して色々と考えているようだった。
俺は「ほら、こっちだ」と言って、モンタを市原達が待つ草原エリアへと送って行った。




