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Phase.200 『拠点内の拠点 その1』



 異世界の川魚は、最高に美味しかった。なんせ空腹だったから、いつもより大げさに舌が反応していたからかもしれない。だけど、まぎれもなく美味しかった。


 そして、小早川が釣り上げたというウナギも最高だった。


 小早川は美幸さんに言われたとおりに、未玖ちゃんのもとへ行った。すると未玖ちゃんは、志乃さんという人や他の女の子達と、丁度ご飯の支度をしていたらしい。それで米が炊き上がっていたので分けてもらった。


「ああー、やっぱり流石未玖ちゃんだね。ちゃんと皆の分、どんぶりにお米を盛ってくれているなんて」

「へ、へへへ」


 褒められているのは未玖ちゃんなのに、なぜか顔を赤らめて頭を摩りながら照れている小早川。この拠点にいる人達は皆優しいし、凄く居心地がいい。そして美幸さんのような綺麗な人もいるから、特に小早川にとっては天国みたいな場所だなと思った。


「さあ、できあがりー、本当はインスタントでいいから、何か汁物もあったら良かったんだけど……そんなこと言っていると、いつまでたっても晩御飯食べられないから、今日はこれでいいかな。はい、君達も食べなさーい」


 美幸さんは、それぞれ炊き上がったばかりのお米が盛られているどんぶりに、焚火で焼きあげたなんとも言えないような、食欲を掻き立てられる香ばしいニオイに包まれたウナギを盛り付ける。そしてそれを、僕達に配った。


 3人で美幸さんの顔を覗き見ると、彼女はにこにこっとして、「温かいうちに食べて食べて」といってくれた。3人一斉に、合掌して頂きますと言う。


「焼き魚は沢山あるから、適当に好きなだけ食べていい事にしようか」

「は、はい」


 モシャモシャと食べる。味は最高。


「それはそうと、君達はいつもとの世界に戻るの?」

「帰る予定は、明後日……月曜の朝にしようかなって思っているんですけど……その間って、ずっと美幸さんや椎名さん達と行動を共にさせてもらえないですか?」


 思い切ってそう言うと、カイが続けてくれた。


「そ、それとよければ拙者らを美幸殿たちの仲間に入れて欲しいでござるよ。駄目でござろうか?」

「ううん、カイ君達なら間違いなく椎名さんもいいって言うに違いないよ。皆、いい子だし。でもまだ皆、高校生でしょ? ここには未玖ちゃんみたいな小学生くらいの子や、和希君っていう中学生もいるけど……この世界は危険なんだってちゃんと理解しているのかな?」


 美幸さんの質問に僕達は、「はい!」とはっきりと答えた。そしてこれまでこの世界であった事などを、食事をしながら話した。


 小早川は確かに絶品だとは思ったけど、自分で獲ってきたウナギがよっぽど美味しかったのか、耳はこちらに傾けつつも食に徹していてて、ほとんど僕が話していた。


「なるほどねー。解った、了解。じゃあ私からもこの後すぐにでも、椎名さんに君達のメンバー入りの事を話しておくわね」

「あ、ありがとうございます」

「それはそうと、あなた達はミケさんの店で転移アプリを手に入れたんだね」


 !!


 美幸さんの言った、『ミケさんの店』という発言に驚く。一番驚いていたのは小早川だったけど、僕も美幸さんがミケさんを知っていた事に対してかなり驚いた。


「椎名さんと秋山君は秋葉原だし違うけど、私と海はミケさんのお店からなの。だから余計に君達とは、なんか親近感を感じるんだ。もしまだ晩御飯食べてもお腹が減ってたら、後で私達の所にきて。お菓子とかそういうのを沢山もってきているから、それを分けてあげるから」

「あ、ありがとうございます!! 美幸様!!」


 まるで家臣のようにひれ伏す小早川を、全員で笑う。そして僕はもう一つ気になっていた事を聞いた。


「あ、あの」

「なに?」

「それで僕らは、このまま月曜の朝までここにいてもいいのですか?」

「うん、いいよ。でも問題を起こしたり、勝手に拠点の外へ出ちゃ駄目だからね。死んでもいいから出るっていうのなら、引き留めないけど……それでもちゃんと椎名さんか、私には言ってからにしてね」

「は、はい、解りました。それで寝る場所なんですけど」


 美幸さんは、はっとした表情でポンと手を叩く。


「そうだね。それ必要だよね。そう言えば、君達がコボルトに襲われて負傷して、ここへ運ばれてきた時にテントの中へ運び込んだんだけど、あのテントそのまま使っていいから」

「え? いいんですか?」

「うん、いいよ。そのままその場所で寝泊まりしてもいいし、拠点内なら何処か別の場所に移動してもいいし。だけど、近くに既に誰かがいる場合は、ここにテント張っていいかちゃんと事前に聞いてね。後は……拠点南側エリアは行ってもいいけど……私達の拠点にしてから、まだそれほど経ってないし、鹿とか野生の動物をそのまま閉じ込めちゃってるから危険かもしれない」

「でも行きたければ……」

「行きたければ自己責任で行ってもいいよ。一応、そこも拠点内だしね。でも行くなら、椎名さんとか秋山君とかさっきのトモマサとか、誰か一緒についていってもらった方がいいような気もするけど……まあでも拠点内には違いないし、それも君達に任せるわ」

「は、はい。ありがとうございます!」

「うんうん、それじゃ私もそろそろ自分の場所へ戻ろうかな。海も待っているし。丸太小屋のあるスタートエリアに女の子で集まってるから、良かったら後で来てね」


 女の子で集まっている。良かったら来て、という言葉に鼻の下を伸ばす小早川。もちろん僕やカイも例外ではないし、はっきり言って行きたいと思ったけれど、それでも先にこの拠点内での僕達の拠点を見つけようと思った。


 お菓子をもらいに行くにしても、それからだ。鰻丼と焼き魚でお腹いっぱいになった僕達は、さて何処にテントを移そうかと考え始めた。


 拠点内は、その鹿とかいて池があるという南側以外は、ある程度は見て回った。


 月曜朝までとなると明後日だし、この『勇者連合(ブレイブアライアンス)』のメンバーに入れてもらえれば、その後もここへは来る訳だし……ちゃんと考えて場所を決めようと思った。

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