表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
193/470

Phase.193 『緑を探せ』



 ――――荒野が広がっている。気が付けば、完全に見渡す限り、一面荒野になっていた。荒地には、岩岩岩――そして大量の砂に、カサカサになった枯れた草木。


 いつの間にか先頭を歩いていた僕は、後ろを振り返って二人の顔を見た。


「ど、どうしよう。このまま真っすぐに歩いて大丈夫なのかな」

「行くしかないだろ。我は信じて歩くのみ」

「とりあえず、このまま真っすぐであっていると思うでござる。もしも間違えていたとしても、拙者も小早川氏も良継殿と同じ考えなので、責任は三人共にあるでござるよ」

 

 間違えていても、僕の責任にはならない。カイはそう言ってくれた。


 だけどもしも間違えていたら……間違えていたね、ははは……じゃすまないと思った。こんな荒野で彷徨うという事は、かなり体力の消耗を覚悟しなくちゃならないだろうし、もしも夜があければきっと灼熱のような温度になるだろう。そうすれば水ももっと必要になるし……今持っている分なんて、直ぐに飲んでなくなってしまうだろう。


「むっ、どうしたのだ大谷氏」

「え? うん、ちょっと待って」


 僕は足を止めると、もう一度周囲を見渡した。そして近くに大きな岩を見つけたので、小早川とカイにちょっとここで待っていてと言って、その岩に登りに行った。そして上にあがるともう一度、周囲を方々まで見渡した。


「……うーーん、何もない。あるのは、砂……石……岩……焼けてひび割れた大地」


 これはますますもって、やばいと思う。荒野も冒険はしてみたいけど、今は無理だ。それ用の装備や準備もできていないし、何よりも知識も力もない。早く軌道修正して、緑の豊富な方へ向かわないと……魔物に出くわしてやられるというか、このままじゃ干からびて死ぬかもしれない。


「ん? なんだろう、あれは?」


 荒野の空は凄く晴れ渡っていて、二つの月が煌々と大地を照らしている。夜だというのに遥か向こうまで眺める事ができた。


 森などよりも、荒野の方が良い点。それは、地形が解りやすいこと。


 僕は手を振って、自分のいる所までくるように小早川とカイに、こっちへ来てくれと合図を送った。二人共こっちに来ると、僕のいる位置まであがってくる。小早川はやはり、身体を動かすことが得意ではなく、僕とカイの二人で引き揚げた。


「はあ、はあ、はあ。やっと上まであげれた」

「ふう……すまんな。戦闘なら我の右に出る者はいないと自負しているが、どうも岩登りや走りとなるとな」

「確かにそうでござるな。今度トロルが現れて襲われた際には、小早川氏にお任せするでござる」

「うっ……そ、それは……残念ながら、いくら戦闘が得意といっても、トロルは苦手なのだ。ああ、そうだ! スライム! スライムなら、我に任せよ! フハハ、蹴散らしてくれん!!」


 小早川を見て、目を細めるカイ。ハハハ、でも二人がいてくれてよかった。今もし、ここで僕一人だったらどれだけ心細い思いをしているか。二人が一緒にいてくれるから、前向きにものが考えられる。


「それでどうしたでござるか、良継殿」

「ああ、そうだ! あれ、あれ見て!」


 僕はそう言って遠くの方を指さした。見える景色の向こう側、小さく木々が見えたからだ。少し距離があって、ここからじゃ豆粒のように小さく見える。だけどあれは、木々だ。風で揺れている風にも見えるから間違えないと僕は思った。


「あ、あれは!! あれはもしかして木でござるか!!」

「うん、枯れている木じゃない。ちゃんと葉をつけている木だね。ここからじゃ、大きな岩山などでそこまで詳しく解らないけれど、きっと向こうに森か草原があるんじゃないかって思う」

「ほう、森があるとなれば当然、川や泉もあるかもしれぬな」

「きっとあるに違いない。とりあえず、ここからあそこまで少し距離があるし、荒野を突っ切っていかなくちゃならないからあれだけど、夜のうちなら問題なく歩けるはずだから今のうちに、急いで移動しよう」


 二人共頷いてくれた。昼になれば、灼熱地獄を向こうまで歩かなくてはならない。そう考えると、悠長に休憩もしてられない。とりあえず、向こうの緑のある場所まで移動してから、休憩をとればいい。


 なんにしても、今の僕達じゃ荒野はまだまだ力不足だ。そのうち、力も備わって準備もできればこの辺の探索に挑んではみたい。だけど今は、確実にその時じゃない。このまま荒野を歩き続けても、それは無謀でしかないだろうから。


 僕達は乗っていた岩を降りると、そのまま休みなく木々が見えた方へ移動を開始した。そこへは目の前の荒地をこえていかなければならないけれど、もうひと踏ん張りだった。しかも夜の気温なら、余裕で到着できるだろう。朝までも時間もある。


 荒野を脱出し、森か草原を見つけたならばそこでちょっと休憩できる所を探して、睡眠や食事をとればいいし。


 また気が付くと、僕が一番前を歩いている。その後ろにカイと小早川。二人共、まだ一日も経過していないのに、既に何週間もこの異世界にいるような、疲労を蓄積した顔になっている。だけど、気力はまだまだあるようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ