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Phase.164 『皆の事』



 釣り竿を手に持ち、最上さんと仲良く並んで夜釣りを楽しむ。


 餌は何かしらの幼虫。昼間の間に、最上さんが森の中で見つけたそうだ。倒れて腐った木の幹をほじくると、その中にいた幼虫だそうだ。見た目はカブトムシの幼虫に似ている。それのかなり小さいもの。

 

 最上さんとほぼ同時に、川に向かって釣り糸を投げる。すると早くも最上さんの竿に当たりがきた。


「も、最上さん!」

「おっ! 早速釣れたか! そりゃー」


 ザパッ


 釣り上げられた魚はビチビチと暴れる。最上さんは焦る様子もなく、手際よく自分の方へ手繰り寄せて針から魚を外した。そして二人して魚に近づいて、懐中電灯で照らし出す。


 なんだこれは? 岩魚に似てはいるけど、なんとなくフォルムはドジョウに近い。


「最上さんちょっと、調べて見てもいいかな?」

「ああ、いいよ」


 【鑑定】の出番だ。俺はスマホを出して、最上さんの釣り上げた変わった形状の魚を調べてみた。




【鑑定】

名前:夜行魚  

種類:魚

説明:淡水に生息する川魚。夜行性で、昼間は岩などの隙間に隠れている。その為、ドジョウに似た姿をしている。味は美味で食用にできる。




 味は美味。それが一番重要な情報だった。この【鑑定】アプリはとても便利だが、これで解る情報はかなり限られている。だが今、一番知りたかった事は食用にできるかどうかだった。


「最上さん、これ美味しいらしいよ」

「そうなんだ。それは、釣った甲斐があったね。それじゃ、これに入れて後で食べてみようか」


 最上さんはそう言って、大きな網を取り出した。それに釣った夜行魚を入れて、川に沈める。なるほど、こうしておけば魚には逃げられないし、生きたままだから、新鮮さも保つ事ができるという訳か。

 

 うーん、俺も釣りたい。


 再び、最上さんと川に並んで夜釣りに勤しむ。魚はまだぜんぜんいる気配はするけど、今度はなかなかかからない。


 暫くして、俺は最上さんにちょっと気になっていた事を聞いてみた。


「最上さん」

「なんだい」

「最上さんは、ここに来て間もないけど……最上さんから見てこの拠点はどうかな?」

「どうかなっていうのは、どういうこと?」

「住みやすいとか、居心地がいいとかそういう事なんだけど」

「ああ、そう言う事か。それならぼかあ、こんな居心地のいい拠点の仲間に入れてもらって、凄く感謝しているよ。ぼかあ【喪失者(ロストパーソン)】だからね。もとの世界へも戻れないし、この『異世界(アストリア)』でなんとか生き延びるしかない。だけど、この世界は危険すぎるからね。椎名さん達には凄く感謝している」

「そうか……それなら良かった」

「しかも拠点内に、こんな川やそれに草原に森まであるからね。僕にとっては少なくとも楽園のような拠点だよ」


 最上さん達をこの拠点に入れて、クランメンバーとして迎えた時点で、皆俺達の正式な仲間だ。だからまあ満足してくれていると解っていても、ちゃんと言葉で聞いておきたかった。


 だが気になっていた事というのは、この事じゃなかった。


「それはそうと、最上さん。最上さんや最上さんと一緒にここへやって来た堅吾とか皆は、もう他のメンバーとも仲良くできているのかな?」


 俺の質問を聞いて、最上さんは満面の笑みを見せる。


「もちろん! 椎名さん。君の仲間は皆優しいよ。僕もすでにこの川エリアで、秋山君や鈴森君と仲良くやらせてもらっているし。年齢はあの二人より、僕の方が上だけど、それを感じさせない感じで遠慮なく接してくれるし、もしかしたらもっと以前から友達だったんじゃないかって錯覚する程かな」

「それ聞いたら、二人共跳びはねて喜ぶよ。それで……ふと思ったんだけど、最上さん達【喪失者(ロストパーソン)】以外の人達、成田さんとかトモマサとか……皆は、俺や翔太達が平日いない間にどうしているのかなって思って」


 今更ながらだけど、実際それを皆には聞いていなかった。


 例えば、俺や翔太や北上さんに大井さんは同じ職場の同僚でもある。平日は会社に行かなくてはならない為、もとの世界へ揃って戻ってしまう。


 そして未玖や最上さん。小貫さんに堅吾、出羽さん、宇羅さん、団頃坂さんは【喪失者(ロストパーソン)】だからずっとこの拠点にいる。

 

 長野さんや鈴森は、もとの世界へ戻る事ができるが、基本的には【喪失者(ロストパーソン)】の人達と同じくこの異世界にいる。


 そうなると、俺達と同じくもとの世界へにも戻る事ができる転移者のトモマサや成田さん、和樹、松倉君、三条さん、不死宮さん。彼らは、いつもどうしているのだろうか。


 もとの世界での生活、仕事などしているものもいるだろうし……トモマサは現役プロレスラーだと言っていたし、和季は中学生だったんじゃないか。


 ネトゲとかで根掘り葉掘り、プライベートな事を聞くはマナー違反だ。だからあまりそういった事を聞いたり、首を突っ込むような真似はしないで、この『異世界(アストリア)』での事だけに集中しようと思っていた……だけど気にならないと言えば嘘になる。


 最上さんが言った。


「わざわざこの『異世界(アストリア)』という危険な世界にやってくるような者は、何かあったりする者が多いと思う。全員がそうじゃないのは確かだが、でも多い。だから僕もあまりそう言ったプライベートの事を聞いたりはしない方なんだけどね。でも一昨日ゴブリンの襲撃があったけど、ああいう事があると解った以上、クランメンバーの誰がいつ、もとの世界に戻ったり、拠点を留守にするのか位は知っておきたいよね。だって拠点に人がいないと、その分この拠点は手薄になるって事だもんね。でも例えば成田さんや松倉君などは、バリケード作りとかで必要な資材の調達に転移はしているようだけど、椎名さんのように仕事に出かけているようには見えないけれどね」


 ふーーむ。やはり、せめて成田さんやトモマサとかもとの世界へ戻る事のある仲間の都合……っというか、予定は知っておくべきかもしれない。


 例えば、普段の生活や仕事で『異世界(アストリア)』から、もとの世界へ戻らなないといけない日や時間などの予定は、予め聞いておいた方がいいと思った。

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