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Phase.159 『九条の販売方法 その2』



 九条さんは、更に続けて銃などの武器に関する取引について説明した。


「もう一つ。俺がここで販売している銃だが、それは俺が気に入った者にしか売らないことにしている。その点では、お前さん達は長野さんの知り合いという事だし、クランも作ってちゃんとしているように見える。リーダーもしっかり者のようだ。だが、俺が気に入らないと判断したら、一切の武器取引は行わない。それはちゃんと肝に銘じておいてくれ」


 鈴森が食い気味に聞いた。


「それはなんだ? あんたが気に入らないことっていうのは?」

「まず、俺の商品についてだ。俺が何処でこれを入手してくるのか、そう言った事をいちいち聞かれて詮索されるのは、非常に気分が悪い。だからそう言った事は、質問無しだ。それとこれは、取引をしたものをわざわざ『異世界(アストリア)』まで届けてやるって言っているんだから、当然理解しているとはおもうが……こちらの世界に、銃を持ち帰ってくるような真似や、持ち帰って人を脅したり何かに使用しようとしても駄目だ。お守りとしてとかも、それは認められない。それらがもし発覚したら、俺はそれなりの出方を取らせてもらうから、それはちゃんと考えて責任をもって行動してくれ。簡単だろ? それができなければ、銃を買わなければいい。なにも強制ではないんだ」


 鈴森が顔を顰める。


「好奇心で聞くだけだ。不快ならもう二度と聞かんし、答えなくてもいい。当然、俺はきちんと約束をしたらそれを守るが、もし守れなければそれなりの出方にでるんだよな。それって具体的になんだ? それは聞いてもいいんだよな」

「ふむ、まあいいだろう。簡単にだが、答えよう。あっちの世界で利用する目的の武器をこっちの世界で、使用する。この日本は、そもそも銃なんて持っちゃいけねえ国……というか社会だ。持っていいのは、警察官かちゃんと資格免許と許可を得ている猟師くらいのもんだ。だから、俺を巻き込んでそういう悪いことをしようとする輩は、ちゃんと然るべき所に一本連絡を入れて、然るべき対処をしてもらう。それだけだ。然るべき所ってなんだってもう聞くなよ。俺があんたたちのような転移者に武器を売る存在のように、この世には面倒な転移者をどうにかしてくれる奴らもいるって事だ」


 質問はここまで――そんな感じに言われたので、鈴森は押し黙った。そしてモデルガンと商品情報が羅列している端末に手を伸ばしたので、俺もそれを覗き見ようとすると、九条さんが新たに2つの端末を用意して、ひとつを俺に、もう一つを北上さんに渡した。


 とりあえず、アイスコーヒーを一口。そして気持ちを落ち着けて、商品に目をやる。


 銃と言っても、ハンドガンにライフル。散弾銃にと色々と種類があるんだなと思った。しかもハンドガンオンリーにしてみても、長野さんの使用していたオートマチックのものもあれば、リボルバーなんかもある。


 そして多種多様、様々な種類にメーカーなど。どれを選べばいいのか解らない。ううーーん、ううーーん。


 唸り声を出すと、うるさいって言われそうな位に俺は心の中で唸っていた。そして銃の値段が記載された欄にたまたま目をやった時、丁度また口に含んでいたアイスコーヒーを吹き出しそうになった。


「ちょ、これ長野さん?」


 長野さんに見せようとした所で、九条さんが前にくる。


「そうだった。もう一つ重要な事を伝え忘れていた。うちじゃ、銃を売るか売らないかは俺が判断して決める。俺が気に入れば、直ぐ商品は手に入る。免許なんかもいらない。だがな、うちの商品はとても高額なんだ」


 銃の入手方法、それを長野さんに聞いた時に、実は長野さんは『異世界(アストリア)』で行商のように移動しては取引をしているという人もいると話してくれたけた。だけど、その時の感じから察してどうも長野さんは、九条さんよりその人の方を俺に紹介したい様子だった。その答えは、これかと思った。ずばり商品の値段。


 値段のことを聞いて、鈴森も目を見開いて驚いている。念願の銃が手に入ると舞い上がって、一番大事な値段の記されている所を見ていなかったのだろう。まあ、俺もそうなんだけど。


 俺はミリオタの鈴森のように銃の事は全く詳しくないけれど、兎に角とんでもない値段だという事は理解した。


 鈴森が呟くように言う。


「こ、この38口径の銃なんか……合法化している海外で購入すればもっと安いはずだ」


 九条は、真面目な顔で鈴森に言った。


「それなら、その合法化している国で購入すればいい。いいか、商売っていうのは需要と供給からも成り立っているんだ。需要があれば、高額にもなる。高値で売れるんだから高値で売るに決まっているだろ? それに俺はこの商売にリスクをしょっている。それを考慮して欲しい」


 九条さんの言った事は、確かにその通りだと思った。買いたくなければ買わなくてもいい。九条さんに関しては、俺達を認めてくれていて武器を売ってもいいと言ってくれている。それだけでも、願ったりの話なのだ。翔太も頷いている。


 長野さんは笑いながら言った。


「まあ、どうするか。値段はさておき、儂らの住んでいる近くで、こういう店があるという事を教えておきたかった。だから今日ここにきて、九条さんと君達を引き合わせただけでも、儂は意味があると思うておるんじゃ。だから今日は、なにも無理して決めなくてもいいのではないか。買うも買わないも自由なんだしな」

「その通りだ。別に買っても買わなくてもいい。たまに珈琲だけ飲みに来てくれても歓迎するし、銃が欲しくなったらいつでも相談にのる。そう言う訳だ」


 さて、どうしたものか。腕時計を見ると、もう21時を回ってしまっていた。今日ここで何か決めるにしても決めないにしても、そろそろ店を出て帰宅しなければと思った。


 『異世界(アストリア)』で未玖達が、待っている。ゴブリンもまた襲撃してこないか心配だ。

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