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Phase.158 『九条の販売方法 その1』




 九条さんは、このまま店でゆっくりとくつろいで少し待っていてくれと言った。そして奥の部屋に消えていくと、暫くしてまた店内に現れる。何かが入った大きなケースと、端末。


 そしてケースの蓋を開くと、その中には沢山の銃が入っていた。翔太だけでなく、皆驚きの声をあげる。そして何より、沢山の銃を見て一番飛びついたのは鈴森だった。


「す、凄いな! これは凄い! なあ、触ってもいいか?」

「ああ、構わんよ。ただ弾は入ってないにしろ、間違っても俺に銃口は向けるなよ」


 九条さんの許可を得て、鈴森が銃に飛びつく。翔太や北上さん、それに大井さんも気になった銃を手に取って眺めた。その光景を長野さんは、珈琲を飲みながら見ている。


 恐る恐る銃に触れながら、北上さんが言った。


「け、結構銃って重いんですね。拳銃でこれですから、大きな銃ならもっと重そうですね」

「ああ、それなりに重いよ。もし散弾銃やライフルなんかにも興味があるなら、今から出してこよう」


 散弾銃、ライフルと聞いて「凄いねー」っと声をあげる北上さんと大井さん。


 しかし気がつくと、この場で一番はしゃいでいるはずの鈴森が、なぜか一番沈んでいた。翔太もそれに気づいて声をかける。


「おいおい、孫いっちゃん。どうしたんだよ。銃だぞ、お前の大好きな本物の銃だ。ほれ、手にとってよく見てみろ、ほら!」

「やめろって、翔太! うぜーわ」


 すると鈴森は、手に取っていた銃を九条さんに見せつける形にして、不貞腐れた態度で言った。


「いや、これは銃じゃない。いくら今まで本物の銃に触れたことがないとはいえ、俺はこれでもミリオタだからな。だまそうとしても、解るんだよ。これは精巧に作ってはいるが、モデルガンだ」


 モ、モデルガン? 作り物の銃って事? どういう事だ。


 九条さんは、長野さんの知り合いだし俺達が本物の銃を買い求めにやってきたという事は解っているはず。それに長野さんがいるのに、俺達にモデルがンを売りつけるような事をするだろうか?


 そもそ俺達の拠点を襲ってきた時に長野さんは、銃を使用して応戦していた。あの時に使っていた銃、成田さんに貸していたハンドガンも含めて間違いなく本物だった。あの銃で撃たれたゴブリンには、風穴があいていた。


 じゃあ、なぜモデルガンなんか……長野さんを見たが、変わらず落ち着いて成り行きを見守りながらも珈琲を飲んでいる。ふーーむ。


 鈴森は、偽物を売りつけられそうになったのではと怒りをあらわにし、手に持っていた銃を床に投げつけようとした。刹那、九条さんは鈴森の腕を掴んで投げつけようとした銃を取り上げた。


「おいっ!! 大事な商売道具を壊す気か!! ここまで精巧な奴は、かなりの値段がするんだぞ!!」

「そんなの知るか―! 人に偽物を売りつけようとしやがって!! あいたっ!! てめー、何すんだ!!」


 俺が鈴森の脇腹に軽くパンチを入れると同時に、翔太も鈴森の襟首をつかんで強引に引っ張った。


「口が悪い。鈴森、九条さんは、長野さんの大切な知り合いで俺達よりも年上だぞ。ちゃんと敬意を払え」

「なんだとおお!! だって、こいつ……こんな玩具を俺達に……うげ」


 もう一度、翔太が鈴森の襟首を強引に引っ張った。


「うらああ!! 何すんだ、てめー翔太!! 殺すぞ!!」

「ああー、やってみろよ。孫いっちゃんごときに、俺は負けねーよ!」

「おいおい、こら!! 待て、二人とも落ち着け」


 ニヤニヤと笑う翔太と、不貞腐れる鈴森。長野さんから本物の銃が手に入ると聞いてから、凄く楽しみにしてここへ来た。それは、傍から見ていても解る程。だから、本物だと思っていた銃が偽物で、期待が大きかった分、比例して裏切られた気になって怒っているのだろう。


「鈴森、もう少し冷静にできないか」

「ああ、だってなーー。こいつ、俺達が銃を知らねーと思って玩具を……」

「オイ!! こいつじゃない! 九条さんだ! ちゃんと名前を言って、さんをつけろ」

「…………」

「それにもう一度言うが、九条さんは長野さんと知り合いだ。その長野さんは本物の銃を持っている。全部嘘だと思うのか? もう少し、冷静に考えてみてくれ」

「……確かにそうだな。秋葉原でも俺は、異世界なんてないと決めつけていたからな。解った、椎名に従う。すまない、九条さん」


 やっと落ち着いた鈴森は、九条さんに謝罪した。すると九条さんは、はっはっはと笑い出した。


「九条さん?」

「はっはっは。すまない、誤解させてしまったようで悪かった。こちらも謝ろう。それでまずは、誤解を解きたいんだがいいかな? ちょっと説明させてほしい」


 頷く一同。


「まず先に注意点をいくつか。長野さんには、既に話している事なんだがな、トラブルがないように先に言っておく。まず、ここで銃やそれを使用する弾を購入する事はできるがな。ここでは渡せない。ここにある銃は全てモデルガンだ。それも本物にかな近い代物だ。つまり、サンプルだな。それとこれを見て、欲しいものがあれば購入してもらう」


 九条さんはそう言って、端末を操作して俺達に画面を見せてくれた。そこにはズラっと武器が羅列している。武器と思ったのは、銃だけではなかったから。


「この国、日本は銃を持つことを許してはないからな。極端な話、例えば俺があんた達にこの場でマシンガンやバズーカ砲を売ったとしよう。すると、お前たちはそれを持って中央線に乗って帰るのか、家まで」


 なぜ、九条さんがここでモデルガンを見せたか。そしてその考えがやっと、俺や鈴森も理解できた。


「ここでサンプル銃と端末のリストを見て欲しいものがあれば、選んで購入してもらう。ブツは後程、俺が『異世界(アストリア)』に行って、あんた達が指定する場所に送り届けてやる。つまりそういうシステムだ」


 なるほど。九条さんの話を聞いて、俺達は横並びに揃って唸った。

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