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Phase.153 『ゴブリン その5』



 俺達の拠点に、以前ゴブリンが攻めてきた。たった2匹だけだけど、恐怖した。まだここには、俺と未玖だけだった時の話。


 そして今は、もっと多くのゴブリンに襲撃されている。


 北上さんに、ゴブリンは集団で襲撃してくることがあるという事を前もって知らされた。それでこの拠点にまたゴブリンが攻めてくる、もっと大勢で襲撃してくるんじゃないかという事は、以前襲われた事から薄々考えていた。


 北上さん達から聞いた情報の他に、俺は『異世界(アストリア)』に転移してきてからも用心して、あまりこの拠点から離れるという事をしなかった。守りばかりに力を入れていた。


 なのにゴブリンとは何度か遭遇し、戦闘にもなった。つまり、この異世界……というか、この辺りにはゴブリンが数多く生息しているという事を物語っている。


 だからここを襲われるのも時間の問題だと思って、可能な限り防衛力を高めて、仲間を集めて対抗策を練っていた。けれど、まさかこの数で襲ってくるとは思わなかった。


 まず出鼻は、思ったより上手く挫けたと思った。外へ打って出た俺達だけで、かなりの数を打ち倒した。だけど森の中には、まだゴブリンはいる。かなりの数。


「ユキーー、どうするんだ!?」

「今の悲鳴、あれは拠点にいる仲間の誰かだ!!」

「そ、それって……つまり……」

「別の場所からゴブリンが、有刺鉄線や柵を抜けて拠点内に侵入してきているんだ! 急いで拠点に引き返そう!!」

「で、でもここはいいのかよ!」

「仕方がないだろ!! 拠点にもう侵入されているなら、そいつらを先に叩く。そしてまた新たに攻めてくる奴は、拠点で迎え撃つ!! 柵や有刺鉄線越しなら、鈴森の改造エアガンやボウガン、それに北上さん達の弓が有効だ」

「わ、解った!! そうしよう!」


 翔太は返事をしたが、鈴森は森の奥の方を振り返った。なんとなく、「俺はここに残ってまだ森の中から様子を窺っているゴブリンを止めてみせる」とでも言いだしそうだった。そんな鈴森の腕を掴んだ。


「約束したよな、鈴森! お前は、拠点と未玖を優先して守ってくれるんだよな!」

「ああ、解ってるよ。言われなくても解ってる。約束したからな」


 鈴森は俺に捕まれた腕を振り払うと、不服そうに後をついてきた。


 翔太にツンツンと、肘を入れられている。でも、これでいい。これも俺の第六感だ。俺はゲーマーだからゲームで例えてしまうけど、アドベンチャーゲームなどであるターニングポイントが、ここだ。


 ここで選択をミスると、きっと大きく未来が変わる気がする。具体的に言うと、鈴森を失う気がするという事だった。だから、鈴森が不服そうにしていても、もしもブツクサ文句をブーたれてもこれでいいんだ。これが正解。


「椎名さん!! 今、拠点内で悲鳴が!!」


 北上さんに小貫さんに最上さん、そして団頃坂さんが駆け寄ってくる。


 俺達は、有刺鉄線をくぐって拠点の内側に戻ると、北上さん達にまだ森には多くのゴブリン達が潜んでいる事と、おそらく別の場所からもゴブリンが襲撃してきて拠点内に侵入している事を伝えた。


「鈴森はここに残って、守りを固めてくれ。北上さんもだ。飛び道具を持っている二人は、有刺鉄線越しにでも、ゴブリンに有効な攻撃が与えられるから。そしてくれぐれも、拠点の外にはでないと約束してくれ」

 

 二人とも、ちゃんと頷いたのを確認する。


「他の皆もここで守りを頼む」

「ユキー、俺は――」

「翔太は俺についてきてくれ! おそらく悲鳴があったのは、スタートエリアとかの方だ!」

「わ、解ったぜ。急ごう!!」


 川エリアの森を抜けて、スタートエリアの方へ移動する。すると丸太小屋の前に、ゴブリンを見つけた。2匹いる。そしてその前には、誰か女の人が倒れている。


「ユキー、あれ!!」

「不死宮さんだ!! 行くぞ、翔太!!」


 ギャギャーーーッ!!


 こちらに気づいて向かって来る2匹のゴブリン。こちらも二人で向かって行く。ゴブリンは2匹とも、棍棒を手にしていた。これならリーチも殺傷能力も、俺達の方が上だ。


 ギャッ!!


「うるせーー!! このやろおお!!」

「翔太、油断するな!!」

「ゆきひろさん!!」


 刹那、未玖の声に振り向く。丸太小屋の中から未玖が姿を現す。その周りには三条さんに宇羅さん、出羽さんの姿も見えた。良かった、皆丸太小屋の中に避難していたんだ。


 すると倒れている不死宮さんは、逃げ遅れたという事か……


 ギャーーッ!!


「ぐはっ!」

「ユキーー!! 気を取られるな、戦いに集中しろって!!」


 未玖達が大丈夫でホっとしたのもつかの間、槍を握る腕をゴブリンに棍棒で叩かれた。いってーー!!


 俺は距離を取らず、ゴブリンに余計な考えをさせないように、叩かれた腕の痛みを気にせず槍で突いて攻撃を続けた。翔太も同様に、ゴブリン相手に剣を振り回して同様に戦っていた。


 ギャハッ!!


 追い込んだ! そう思った所で何処からともなく矢が飛んできて、俺が戦っていたゴブリンの首を射貫いた。見ると、大井さんだった。


「翔太、一気にケリをつけよう!!」

「おう!!」


 言葉が解っているのか解らないけど、俺と翔太が同時に襲って来ると悟ったゴブリンは、あからさまにまずいといった顔をする。そのまま振り返って逃げようとしたので、俺は全速力で追いかけて逃げるゴブリンの背中に槍を突き刺して押し込んだ。


 ギャアアアアッ


 響き渡るゴブリンの断末魔。ゴブリンの危険性は、もはや十分に理解した。絶対に逃がしてはいけない。


 ダーーーンッ


 今度は草原エリアの方で、銃声が聞こえた。長野さんだと思った。

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