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Phase.152 『ゴブリン その4』



 ゴブリンと戦闘になった。


 ゴブリン共は、どれも俺達人間に対して恐ろしい顔で襲い掛かってきた。どう恐ろしいのか。その顔……というか表情を見てそう感じたのだけれど、上手くは説明できない。


 でもあえて説明するなら、俺達人間が普段生活している中で、家のキッチンなどでゴキブリを目にした時に似ているかもしれないなと思った。俺達がゴキブリを見ている感情……ゴブリンが俺達に向ける目は、それかもしくはそれに近いものに感じた。


 鈴森が、改造エアガンを撃ちまくっている。そして背後から迫ってきていたゴブリンに気づくと、そいつの首に躊躇いもなくナイフを突き立てた。


 翔太やトモマサもそうだった。


 翔太がゴブリンと剣でやり合っている横で、トモマサは持ち前の腕力と、喧嘩慣れしているのか次々と周囲にいるゴブリンを両手に持つ二本の斧で、叩き潰していた。


 もう木を伐るのには、使えない斧。そんな斧なので、ゴブリンを真っ二つにするというよりは、潰している……そんな感じだった。


 拠点にいたはずの俺達転移者が、迎撃に転じている事にやっと気づいたゴブリン達は、激しく動き始めた。


 北上さんが言っていた。こいつらを逃がしては、いけない。戦意喪失していても可哀そうに感じても、一匹たりとて逃がしてはならない。逃がせば、また仲間を連れて襲撃してくると。ゴブリンという魔物は、絶対に改心する事はないとの事だった。


 そう考えると、本当に人間とゴキブリやネズミなどの関係を連想させられる。解り合えるなんて事自体がありえないのだ。


 また一匹、目の前に躍り出てきたゴブリンの首元を槍で突き刺して、引き抜いた。鮮血が辺りに飛び散るが、全て雨が洗い流してしまう。


 俺にぴったりとついてきている堅吾も、更に2匹をナイフで突き刺して倒す。俺の方を向いて「やった!」とばかりに勝ち誇った顔を見せた所で、木の上から何かが落ちてきた。ゴブリン!!



「なっ、上からだと!? ぐあああっ!!」

「堅吾!!」


 ギャギャッ!! ウゲギャ!!



 木の上から飛び降りてきたゴブリンは、手に持つナイフで真上から堅吾に襲い掛かった。堅吾も慌てて避けようとしたが、そのゴブリンにナイフで左胸を刺されてしまった。


 俺は咄嗟に堅吾を守ろうと、彼を襲ったゴブリンの背中に槍を突き刺した後、続けて腰に装備しているナイフを引き抜いてそのゴブリンの背中を何度も刺した。


 ゴブリンは血を吐いて転がって死んだが、左胸を刺された堅吾もゴブリン同様にその場に倒れこむ。口からは吐血。胸には深々とゴブリンの使用していた、ナイフが突き刺さっている。


「堅吾!! しっかりしろおおお!!」

「う……ぐふうう……幸廣さん……」

「待て待て待て!! まだ、死ぬなよ!! 直ぐに助けてやるから、諦めるな!! トモマサーー!! トモマサこっちへ来てくれ!!」


 こっちに気づいて、トモマサと翔太が駆けてくる。


「どうした、やられたのか?」

「ユキーー、大丈夫か!?」

「俺は大丈夫だ。トモマサ、頼む。堅吾を背負って、スタートエリアまで運んで行って、大井さん達に傷を見せてくれ。それと未玖に、もしもの時は例のポーションを使ってくれと伝えてくれ」

「俺がか」

「ああ、トモマサ。お前に頼んでいるんだ。お前なら余裕で背負っていけるだろ?」

「ああ、もちろんだ」


 トモマサはまだ戦い足りないといったような顔で、ゴブリン共が潜んでいる森の中をチラっと見ると、堅吾を背負った。堅吾の悲鳴。


「ナイフは抜くな。そのまま大井さんの所へ頼む。頼んで、大丈夫だよな」

「おいおい、俺なら余裕でいけるって言ってくれたよな」

「ああ、そうだ」

「220だ」

「え?」

「俺が普段、トレーニングで持ち上げているベンチプレスの重量だよ。任せろ」


 トモマサはそう言って堅吾を背負って拠点の方へと走り出した。少しは離れた所から鈴森がこちらを見ていたので、大丈夫だと手を挙げて見せた。


 4人でもう10匹以上は倒している。まだ、辺りにいるとは思うが、ここで決着をつけておきたい。俺や翔太は明日またもとの世界へ戻らなければならないのだ。


「ユキー」

「ああ、まだ隠れて様子を見ている奴らがいる。このまま殲滅しよう木の上から飛び掛かってきて、堅吾はやられた。上もしっかり注意して、進むぞ」

「わ、解った」


 ギャーーーッ!!


 ゴブリンの悲鳴。鈴森が向こうでやり合っている。


 助けに行くべきか考えていると、少し向こうの森の中をいくつもの影が横へ走っていくのが見えた。こ、こんなにゴブリンがいるなんて!!


「翔太、鈴森を助けに行ってくれ!」

「え? ユキーは? 一緒に戦わないと危険だろ?」

「ああ、でもそれは鈴森も一緒だ! いくら度胸があるからって言ったって、複数に囲まれて一斉に槍で刺されでもしたらひとたまりもない」

「しかしなあ……」

「ほら、行けよ!! 迷っている暇はない!!」


 翔太を向こうで戦っている鈴森の方へ行かせようとした。そこで後方、拠点の方から誰かの悲鳴が聞こえてきた。


「うわああああああ!!」


 翔太と顔を見合わせる。こ、これは大変な事になった。


「椎名!! 今の悲鳴、聞いたか! 誰か男の声だった!!」


 なんと、鈴森が自分の周りにいたゴブリンを全て仕留めてこちらに駆けてきた。翔太は、鈴森の事を初めから頼りになる奴だと言っていたし、俺もようやくそうだと解ってきていたけど……まさかこれ程までとは……


 でもその事に驚いている暇は、今はない。拠点から誰かの悲鳴が聞こえてきたっていう事は――


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