Phase.147 『長野さんの銃』
銃の入手方法は、意外とあるようだった。
一番まどろっこしくない方法。それは、この『異世界』で入手できるという方法だった。長野さんもそうだし、佐竹さんや成田さん達もそうだけど、この異世界へは何人もの転移者が出入りしている。
その転移者の中に、銃を持っていて売ってくれる者がいるという。
「それは、長野さんが今持っているタイプと同じような銃ですか?」
「様々だな。散弾銃やライフルなんかもあるしの。しかしそちらの鈴森君は気づいていおるようじゃが、散弾銃やライフルは儂らのいた世界、日本でも入手はできる。だが拳銃――ハンドガンは、手に入れる事ができん」
頷く鈴森。
「散弾銃の所持は、免許と警察への届けがいる。ライフルもそうだが、日本では銃を持つ理由……それは、狩猟を行う為に所持するんだが、猟銃を扱うようになって10年の経験がないとライフルは所持できない。まあエアガンを違法改造したり、銃刀法違反になるボウガンを所持している俺がこんな事を説明するのも、滑稽な話だがな」
「まあ、やむをえんじゃろ。『異世界』で、武器も持たずにいるなんて無謀じゃからな。ボウガンがあるなら、絶対所持するべきじゃ」
じゃあ、長野さんが買ったというハンドガンは……俺は、そのことも聞いてみた。
「その長野さんに銃を売ってくれた方ですが、どうやって銃を仕入れているんですか? 今の鈴森の話だと、ハンドガンは日本では手に入らないんじゃないですか?」
「それは儂にも解らん。儂はこの『異世界』で冒険の旅が続けられればそれでよかった。それとその者は、あまり余計な質問を嫌うようでな。銃を買っても、使用すればまた弾が必要になる。儂はその銃の入手経緯を知りたいとも思わんかったし、売ってくれる相手の機嫌を損ねたくもなかったのでな」
もとの世界じゃ銃なんて持っていたら大ごとだけど、『異世界』では持っていても罪などない。
それで人に危害を加えるというのなら話はまた違ってくるけれど、それを他の冒険者に売買したり自衛手段として持っている分には、俺も何も悪くはないと思った。むしろそんな物があるなら、当然手に入れる。
「それで、その人からどうやって銃を手に入れられる?」
長野さんは、一口珈琲を飲むと煙草を取り出し、咥えて火をつけた。
「煙草はどうかね?」
俺も鈴森も首を横に振った。二人とも煙草は吸わない。
「まず、その銃を売ってくれる者の居所だが、儂も正確には解らん。儂のように旅をしていたりもするのでな。でもよくいる居場所は、知っている。儂がその者から銃や弾を購入する時は、だいたいそこへ行く」
鈴森は本物の銃が手に入るかもと、気持ちを高ぶらせているようだった。それが自分で解るからこそ、あまり自分から長野さんに身を乗り出してグイグイ押して聞くという風な事はしなかった。そうしてしまう可能性があるからこそ、俺に任せてしまって話を聞きに徹している様子に見える。
「その人がよくいる居場所って言うのは、ここから近いんですか?」
「そうだな、ここから北だ。それ程遠くないから、行こうと思えば行けるが……だが、今そこに行って本人がいるかどうかは解らん」
なるほど。でも、行ってみる価値はあると思った。
その方角には行った事がないから、調査がてら出かけてもいい。その人と会えればそれに越したことはないけれど、いなかったとしても、その人が良くいるという居場所を知ることができる。
行ってみて悪いっていう理由は、見当たらない。まあ、雨がザーザー降っている今日みたいな日は、とてもいく気にはなれないけれど。
「それとな。その者から銃を買いたいのなら、条件があるんだよ」
「条件?」
「以前話したと思うが、レベルだ。その者は、レベル5以上の転生者でないと相手をしない」
え!? なるほど、だからか! だから長野さんは俺達のレベルに拘った。
「その者が言うには、銃の売買をするにしても、その相手がどういった者が見極めてから取引をしなければならないのだという。以前、銃を売ろうとした相手に銃を向けられてた事があったらしくてな。あと銃の扱いについてだが、この異世界でレベル5まで到達していれば、それなりに『異世界』にも順応しているのだろうっていう判断材料になるらしい。まあ兎に角、その者が決めた事じゃよ。銃が欲しければ従うしかない」
「で、でも。でも、俺達はレベル4です!」
「そうだな。それなら方法は二つじゃな。その者に会いに行く前にレベル5にレベルアップしておくか、もしくは4のまま行ってみて、銃を売ってくれと説得する。その場合は、もちろん儂もできる限り取引してくれるように頼んでみるがの」
なるほど……そんな銃を売ってくれる人がいるなんて。
「解りました。因みに、他にも銃の入手方法もあるんですよね」
長野さんは、煙草を吸って思い切り煙を吐き出した。
「運営っていうのか何かは知らんが、儂らをこの『異世界』に転移させてくれた人達……その人達から購入できる」
ええ!!
「あ、あの、俺や翔太、鈴森は秋葉原のメイドカフェのようなお店で転移アプリを購入しました。もしかして、そこで銃なんかを売ってるって事ですか?」
マドカさんが銃を売っている? あの店を見ても、到底あそこに銃が置いてあるなんて思えなかった。
「儂は秋葉原店には行った事がないからのう。それは解らんが、おそらく椎名君達が転移アプリを買った店には置いてはないだろう」
「では何処に?」
「儂が知っているのは、2店舗。因みにこれは儂も同じ転移者から存在を教えてもらって知った。運営側……転移アプリを取り扱っている側の者にそれを言っても、答えてはくれんじゃろ」
ここまで聞いたら、もう全部聞いてしまいたかった。銃がもしも入手できるなら、欲しい。それがあれば今以上にこの異世界ライフが、より安全に過ごせるに違いないから。
だけど正直に言うと、同時に銃社会ではない、銃にまったく慣れていない日本人である俺達が銃を持とうとしている事の不安さも感じていた。




