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Phase.142 『話は中で』



 森から戻る前、和希はちょっと待ってと言って、原形をとどめているハンターバグの死骸を回収していた。色々と調べたいらしい。


 しかも驚いたのは、北上さんも和希と同じく死骸を探していた事。どうやら魔物の身体がどうなっているのだろうという好奇心からの行動ではなく、単純に魔物がたまに体内で生成して持っているという魔石が狙いだったようだけど。


 因みに倒したハンターバグ5匹のうち、魔石を持っていたのは1匹のみ。それもよく調べないと見落としてしまいそうな位に極小のもの。それでも北上さんと大井さんは、喜んでいた。


 長野さんと再会を果たし、今周囲にいる皆に紹介し終えると、拠点へ戻ろうと言った。


 戻ると言っても、ここはその拠点の目と鼻の先だけど。でも話をするなら、拠点内がいい。その方が落ち着いて会話ができる。


「長野さん、本当に……本当に会いたかったです」

「そんなにも言ってくれるなんて、嬉しいよ。未玖ちゃんも元気かな?」

「ええ。凄く元気です。しかも今はこうして仲間が増えたから、未玖も喜んでいます。でも長野さんに会ったらもっと喜ぶと思いますよ」

「はっはっは。そうか、それじゃ椎名君の拠点にお邪魔させてもらおうかな」

「もちろん、喜んで! どうぞこっちです」


 長野さんとの会話を翔太や北上さん達も聞いている。長野さんを連れて皆で拠点へ戻ろうとしたら、長野さんが言った。


「椎名君。ちょっと待って」

「はい、何か」

「実は……連れがいるんだが、一緒に君の拠点へ連れて行ってもいいだろうか?」

「え? それはぜんぜんいいですよ。長野さんの連れなら歓迎しますよ。でも何処に?」


 周囲を見回す。すると長野さんが「出てきなさい」と大きな声で言った。長野さんが、先程身を潜めていた茂み。その近くにある別の茂みが動いた。そしてそこから、5人の男女が出てきた。5人は皆、大きな荷物を背負っていて服はドロドロでボロボロ。なんとなく初めて会った時の未玖のようだと思った。


「長野さん……この人達はいったい?」

「冒険の旅をしていて、出会った人達だ。儂達と同じく、歴とした日本人。だけど5人ともとても大変な問題をかかえている」

「問題? 問題ってなんですか?」

「ふむ。この5人は、【喪失者(ロストパーソン)】だ」


 長野さんの言葉に皆、驚いた顔をした。いや、小貫さんは特に驚いている。


 【喪失者(ロストパーソン)】っていうのは、この『異世界(アストリア)』においてスマホを失ったり壊してしまったりなんかして、もとの世界へ戻れなくなってしまった人の事。小貫さんや、未玖がそうだった。


「解りました。まあとりあえず、俺達の拠点で話しましょう。この辺はさっきもハンターバグっていう巨大な蚊の魔物に襲われましたし、最近ゴブリンがうろついていて、俺達の拠点を見ているようで物騒だから。落ち着ける場所に行きましょう」

「おお、そうだな。そうしようか」


 そんな訳で俺達は、長野さん達6人を引き連れて拠点へと戻った。川エリア、北側の森にいたので、とうぜん川エリアから拠点へ入る。その時、張り巡らせている有刺鉄線を見て長野さんが声をあげた。


「これは驚いた。有刺鉄線を引いて、拠点を広げたのか」

「ええまあ。仲間も増えましたし、畑とかもやり始めたましたし拡張しました。女神像のある草原地帯も、今やうちの拠点内になっているんですよ」

「本当か。それは凄い」


 有刺鉄線をこえて川エリアに入ると、今度は川を渡った。この先を越えて森を出れば丸太小屋や井戸のあるスタートエリアに出る。


「この川、あそこで確か……椎名君と未玖ちゃんと出会ったな。あの時の場所も今は、拠点内か。確かに広大な領地だな」


 長野さんはそう言って笑った。そう、長野さんと初めて出会ったのはこの川。


「椎名さん、いいですか?」


 和希だった。


「なんだ?」

「僕はちょっとこれからこのハンターバグを調べたいんですが、いいですか?」

「ああ、もちろんいいよ」

「ありがとうございます。じゃあ、僕はこのままこの川エリアに残っていますんで」


 鈴森もてっきり川エリアに残ると思った。だけど俺達についてくるようだ。ちょっとそれが意外だったけど、理由は直ぐに解った。


 鈴森の目線の先は、ずっと長野さんの所持している散弾銃。それに装備したガンホルスターに入ったハンドガン。あとで、入手先でも長野さんから聞き出すのだろうか。まあ、長野さんが嫌がらなければこの拠点の防衛力にも繋がるし、いいけど。


「それじゃあ、何処で話しをすればいいかな?」

「スタートエリアじゃないかな。空が相変わらず変な感じだし、雨が降ってきそうでしょ。スタートエリアのタープを張っている場所なら、焚火もできるしテーブルや椅子もあるから落ち着けていいんじゃないかな」

「確かに。それじゃあそうしよう」


 大井さんがそう言ってくれたので、そうする事にした。


 ぞろぞろとスタートエリアまで歩く。その間、長野さんの連れてきた5人は、キョロキョロと俺達の拠点内を見回しては驚いているような声をあげていた。


 未玖と同じ【喪失者(ロストパーソン)】だとすれば、この5人はずっと『異世界(アストリア)』を彷徨い歩いていたのかもしれない。


 心が落ち着かない場所で、雨風にさらされ食料や水の調達を考えながらも魔物の脅威にさらされていたのかもしれない。


 そう考えると、この場所は彼らからしてみればとても興味深い場所に見えているだろう。そう考えると、拠点内を見回して驚いている彼らの様子は、なんら不思議ではなく当然の反応だと思えた。

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