Phase.141 『ハンターバグ』
ブウウウウウウウウン
パッと見ても5匹はいる。もしもあんなデカい蚊に血を吸われたら、いったいどうなるんだ?
【鑑定】
名前:ハンターバグ
種類:昆虫系魔物
説明:巨大蚊。長く太いストローの先端は、竹槍のように尖っていてそれで獲物を刺して吸血する。血以外にも果実も好む。
「ユキーー!! どうする!?」
「あれはハンターバグっていう昆虫系魔物らしい! 要はデカい蚊だと思う! 翔太は俺と一緒に、剣を構えろ!! 鈴森、北上さん、大井さんは遠距離からの攻撃を頼む!!」
『りょーかい!!』
北上さんと大井さんが、コンパウントボウで矢を放った。ハンターバグは、まるで矢が飛んでくるくる所を事前に察知しているように回避する。鈴森もバシュバシュと音を立てわ改造エアガンを連射するが上手く弾丸を当てられない。そうしている暇にも、こちらに近づいてくるハンターバグ。
「ユキーー!! 孫いっちゃん達の攻撃が当たらない!! もう、そこまで接近してきているけど、大丈夫か!?」
襲ってきているのは、巨大な蚊だけどまるで蠅のようだとも思った。もとの世界では、蠅は見つけて潰して仕留めようとしても、ブンブンと飛び回りまるでこちらの一撃を予測しているかのように察知してよける。
しかも昆虫っていうのは、まるでマシーンみたいただ。表情や雰囲気だけでは、何を考えているのか解らない。
「仕方がない、まずは俺と翔太で突っ込んで、剣で攻撃するから他の皆は距離をとって援護してくれ!!」
「駄目だ、椎名!! 二人同時に相手してくれるとは限らないし、5匹で椎名一人を狙うかもしれないぞ!! 接近戦をするなら、数をもう1匹2匹減らしてからだ!!」
「でもどうやって!!」
鈴森は今度は両手に改造エアガンを握ると、俺達の方へと走ってきた。そして追い抜いて、もう目の前まで接近してきているハンターバグに向かって行った。
どういう事なのか。今、二人でも危ないって自分で言ったのに、5匹相手に一人で突撃するなんて!!
「鈴森――!!」
「孫いっちゃん!!」
「うおおおお!!」
バシュバシュバシュバシュ!!
ハンターバグまで3メートル位の距離。5匹固まっている。そこへ向かって鈴森は、両手に持つ改造エアガンをこれでもかって位に連射した。スチールの弾丸が撃ちだされる連続音。鈴森の雄たけびと、ハンターバグの羽音。それが森の中に広がった。
鈴森を援護しなければと思った俺と翔太は、剣を握って鈴森の方へと駆けた。刹那、緑色の液体が宙に飛び散る。破片。
迫ってくるハンターバグ5匹のうち、1匹の足に鈴森が撃った改造エアガンの弾が命中。ハンターバグの体勢が崩れるのを皮切りに、更に3発4発と改造エアガン用のスチール弾がハンターバグの身体に命中し、粉砕した。宙に散布した緑色の液体は、ハンターバグの体液。
更に後方からコンパウンドボウの矢。北上さんと大井さん、それぞれが1匹ずつ仕留める。
「うわああああ!!」
今だ!! 鈴森の直ぐ後ろにまで迫っていた俺は残る3匹のハンターバグ目掛けて剣を振った。しかし一瞬早く察知して、剣を振る前に避けられる。
「よっしゃ!! 頂きーーー!!」
俺の攻撃を避けたハンターバグを、翔太が剣で一刀両断した。
――残るは2匹。その2匹は、いったん真上に跳んで俺達から距離をとった。それを見上げる。
「よし、残り2匹だ!! これならいけるぞ、俺達が優勢だ!!」
『おお!』
「おそらくハンターバグには、鈴森の改造エアガン……その二丁拳銃で連射する攻撃が一番有効な感じがする!」
「ああ、手ごたえがあったから解っている! グロテスクなフォルムにビビっちまったが、どうやら装甲は丈夫じゃなさそうだしな。空を飛べる事と、ストローだけ気にしてればいいな!」
2匹のハンターバグは、俺達に脅威を持ったのかどんどん上昇していき、木の上の方にある無数の葉っぱに紛れた。
「おおーーーーい!!」
拠点の方からこちらへ、誰かが大声をあげて駆けてくる。和希と小貫さんだった。
次の瞬間、木の上の方まで逃げたハンターバグは、和希達に狙いを定めて急降下してきた。まずい、和希と小貫さん二人なら容易に勝てると思ったのだろう。
俺はこちらに向かって来る二人に大きく手を振って叫んだ。
「気をつけろ!! ハンターバグ!! 巨大な蚊の魔物が、2匹いる!! 今、木の上に行ってそっちへ向かったぞおお!! 今行くから、武器を構えて身を守れええ!!」
声は届いた。和希と小貫さんは、急に立ち止まり慌てて武器を手に持つと真上を見回した。2匹のハンターバグが二人に迫る。
和希はナイフを、小貫さんは剣を抜いて構えていた。俺は皆に助けに行くぞと叫んで、和希たちのもとへ駆けた。
ダアアアアンン!!
いきなり大きな音がした。銃声。空からハンターバグの残骸が落ちてくる。
銃を持った何者かが近くにいる。
警戒し、皆にしゃがみ込むように指示する。そして周囲を見回していると、丁度和希と小貫さんのいる近くにある草野の茂みがザワザワっと動き、そこから一人の男ができてた。手には、散弾銃。
ガタイのいい、老人。俺はその人の事を知っていた。直ぐに立ち上がると、俺は笑みを浮かべながらその人に近づいていった。
「長野さん!!」
「椎名君。危なかったようだが、皆大丈夫かな?」
「はいっ! まさか、また会えるなんて」
「色々とあってな。ちょっと寄らせてもらった。いいかな」
「もちろんです。良かったらまた俺の拠点にどうぞ」
きょとんとする翔太達。でも翔太は、ああーーっと大きな声をあげた。そう、翔太には事前に長野さんの事も話していたから。
俺は皆に長野さんは以前この異世界で知り合った人でお世話になった人だと説明し、一旦拠点へ戻ろうと伝えた。




