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Phase.126 『逃がさなかった理由』



 俺はちょっと気になっていた事があった。そう、北上さんの言った事。それを聞こうとしていたのだ。


「そう言えば気になった事があって」

「何かな? 私も海も、彼氏はいないですよ」

「はは、そうじゃなくて……いや、それも聞きたかった情報かな」


 ジョークにジョークで返す。翔太とはもっと泥臭い会話をしているので、どうかと思ったけれど北上さんが笑ってくれたので良かったと思った。


「それで気になっている事って?」

「ああ、単なる質問なんだけど――小貫さんが佐竹さん達の事で色々とあって、走って何処かに行こうとした時に俺は追いかけただろ? 北上さん達も俺の後を追いかけてきてくれた。その時、ゴブリンに遭遇して倒した」

「うん、倒したね。見事に倒したよ」

「あの時、北上さんは逃がさないでって言ったよね。仲間がやられて、戦意喪失したゴブリンを逃がさないでって。それは皆殺しにしろって意味として解釈したけど、そこまでする理由ってなぜかなって思って」


 俺の質問に、北上さんは深く息を吐いた。


「いや、責めているつもりは1ミリも無いから安心して。あの時は全滅させて正解だ。翔太に聞けばわかるけど、俺はかなり用心深いんだ。殺しておいて正解だと思ってはいる。ゴブリンに襲われて、死にかけた事もあったし」

「ゴブリンは――」


 北上さんは俺の質問に答えてくれた。


「ゴブリンはね、戦意を喪失したからと言って放っておくと、必ず仲間を連れてやってくるの。私と海がいたクランでもそういう事が何度もあって、痛い思いをしたの。ゴブリンは人間を見つけたら、絶対に襲ってくる。しかも生息する場所の近くには、だいたいそのゴブリン達の縄張りがあって巣があるわ」

「巣……」

「そう。洞窟とか、そういう所を巣にしている場合が多いけど……私達がいたクランの皆もまだこの『異世界(アストリア)』の異世界人に会った事はないんだけれど、かつて異世界人がいただろう廃村とかがあって、そういう場所を根城にしているゴブリンもいたかな」

「じゃ、じゃあ、この辺りにもゴブリンの巣があるって事か」


 北上さんは、深く頷いた。


 確かに俺と未玖、まだ二人だけで丸太小屋にいた時にも、寝ている間にゴブリンが忍び寄ってきて俺達を襲った。


 もし逃がしたゴブリンが仲間を大勢連れてきて、拠点を襲撃してきたりしたらと思うと、ゾっとする。


「動物と一緒で魔物にも、大人しいものとそうでないものがいるの」

「つまりゴブリンは、後者という訳か」

「うん、そうだね。ゴブリンは追い詰められれば恐怖し、逃げたり服従するといった態度を見せるものもいるけど、決して改心する魔物ではないの。以前、私と海がいたクランでも仲間の女の子が降参しているゴブリンを許して逃がしてあげた。でもその後、その女の子は背後からその逃がしてあげたゴブリンに背中をナイフで切り付けられた」

「その女の子は無事だったの?」


 頷く北上さんだったけど、目は沈んでいる。それ程に、衝撃的な経験だったのだろう。


「他にも何度もあった。また別の仲間がゴブリンを逃がしてしまって……逃がしたゴブリンが仲間を20匹位連れてやってきて私達のキャンプを強襲した事もあった」

「に、20匹!?」

「うん、20匹もよ」


 俺は考えた。もしも今、そんな数のゴブリンが俺達の拠点に攻め込んできたらどうなるのだろうか。北上さんや大井さんは、凄く頼りになる。二人の使用するコンパウンドボウは強力だ。


 それに翔太や、鈴森、トモマサや小貫さんという戦闘で頼りになりそうな仲間もいる。だけど20匹っていう数はとんでもない。そんな数を相手に俺は未玖を守りながら……仲間を守りながら戦えるのだろうか。


 でも……


「……ありがとう、北上さん」

「え?」

「ゴブリンに対する忠告も、ゴブリンがどれほど恐ろしいかという事も教えてくれてありがとう。北上さんから今教えてもらった事は、とても大きい。これから『異世界(アストリア)』で生き抜く為に、どういった対策をすればいいのかとか考えないといけないけれど、凄く参考になるよ」


 素直に感謝した。だから真面目に北上さんの目を真っすぐに見てそう伝える。すると、北上さんは急に赤くなって横を向いた。


「わ、私と海の方こそ、仲間に入れてくれて椎名さんには凄く感謝しているよ」

「北上さんにそう言ってもらえると、俺も凄く嬉しいよ」


 にっこり笑う北上さん。とても可愛い女の子だと改めて思った。俺と同じく『異世界(アストリア)』に凄く興味を持っていて、冒険を好んでいる。しかも優しくて勇気があって、協調性もあってとても頭のいい人だ。


 ちょっとほめ過ぎかもしれないけれど、事実だから仕方がない。大井さんも北上さんと同じくとても素敵な人だけど、俺達にそんな仲間ができて本当に良かったと思った。


 そんな感じで辺りを警戒しつつも色々な会話を続けていると、急に翔太が走り出した。


「おい、待て翔太! いきなりどうおした?」

「ユキーー!! あれ見てみろ!!」


 少し丘になっている場所。そこまで翔太は走ると、更に向こうの方を指さした。


 何事かと俺や北上さん、小貫さん達も後ろを続く。丘にあがり、翔太の隣に並んで指す方を見ると

目の前には大きな湖が目に飛び込んできた。

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