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Phase.125 『拠点への帰り』



 和希と一緒に草の生い茂っている所で、数種類の薬草を採取した。


 一応俺も和希も小さい片手で使えるスコップやビニール袋も持参してきているので、それを使って薬草を採取する。もちろん、採取する前にスマホに入っている【鑑定】のアプリ機能で調べた。




・フレーバーミント

 喉に良く咳止めにもなる薬草。香料の原料にも使用できる。


・ヒモッタスト草

 止血効果に優れている。


・ビンズ草

 強壮効果があり。


・ドクダミ

 別名、異世界ドクダミ。異世界のドクダミである。


 


 名前やそれがどういったものか、とりあえず解るのはありがたいけど……相変わらずざっくりした説明。


 特にドクダミの説明は酷いと思った。でも名前とか少しでも解ることがあれば、調べる足掛かりにはなる。ないのとあるのじゃ物凄い違いだし、10万の価値があるかと聞かれたら「ある」と答えるのも事実。贅沢は言ってられない。


「椎名さん。これ全部、回収していいかな」

「もちろんいいよ。根っこを傷めないように、丁寧に掘り出して採取するんだ。それで拠点に戻ったら、未玖と協力して畑を作って増やしてみようか」

「ええ!? いいの!!」

「いいよ。むしろ和希が研究したいというのなら、お願いしたい。【鑑定】を使用してもざっくりとしか解らないけど、研究すれば更に発見があるかもしれない。それに全部薬草みたいだしね。キュアハーブに関してはもう畑も作って増やしているけど、小貫さんが傷ついて戻ってきた時には早速薬草が役にたった。これらの薬草もきっと役にたつだろうし」


 アルミラージの角がいい例だけど、【鑑定】では本当にざっくりとしか説明されてなく、それがどういったものなのか解らない。


 アルミラージの角は浄化作用があるけれど、その他に植物を急成長させたりとか裏の隠れた効果もあった。きっとこういった薬草にも、隠れた何か効果とかそういうのがあるかもしれない。


 それに薬とかそういうのであれば、他の何かと合わせる事によって、また別の何か効果があったりとか、更に強力なものになったりとかそういうのもきっとあるはずだと俺は思う。


「兎に角、拠点に戻ったら未玖や不死宮さんにも相談して協力してもらえばいい。未玖はノリノリだろうし、不死宮さんとはまだそんなに会話したりしていないけれど、そういうのは得意分野で好きな気がする」

「ありがとうございます、椎名さん! 僕、本当に椎名さんのこのクランのメンバーになれて幸せです。僕がずっと求めていた異世界ライフはこれですよ! 色々不思議なものを調査したり研究したり、冒険ももちろんですけど」

「そ、そうか」

「ほら、あれもどうですか? 椎名さんあれです!」


 すっかり興奮してる和希。でも俺だって例外ではないから解る。佐竹さん達があんな目にあって、それを目の当たりにした後だというのに、こんな事を思うのは不謹慎かもしれないけれど、異世界で見た事もないものを目にして調べたりすることは確かにワクワクする。


「椎名さん、ほら見て!! 凄い色のキノコですよ」


 今度は木の根元。少し黒ずんだ、紫色のひじょうに毒々したようなキノコを発見する。和希がそれに手を伸ばそうとした時、俺は咄嗟にその和希の手を掴んだ。


 咄嗟の事でびっくりする和希。腕を掴んだまま、スマホを取り出してキノコを調べる。




・毒紫茸

 非常に強力な毒を含んでおり、触れるだけでも皮膚が被れたり、場合によっては毒に侵される。




「和希……ほら」

「あぶないー!! あ、あ、ありがとうございます、椎名さんがいなかったら、触れてしまいそうでした!」

「『異世界(アストリア)』は、まだまだ謎に包まれている。ゾンビだってそんなのが存在するなんて、ついさっき知ったばかりだろ。このキノコもそうだ。注意して行動しよう」

「は、はい。すいません。でも、このキノコ……毒紫茸でしたっけ? じゅうぶんに気を付けますから、これも拠点に持って帰っていいですか?」

「ああ、ビニール袋を二重……いや、三重か四重にして入れるんだ。それならいいよ」

「わあ、やったーー!!」


 今、もしかしたら毒に侵されて、運が悪ければ死んでいたかもしれないのに、なんて無邪気なんだろうかと思った。


 まあ狂暴なウルフ共に噛みつかれて、足を5針も縫う程の怪我を負っても、懲りずにこの世界へやってきている俺も、とやかく人の事は言えないな。


「おい!! 何やってんだよー、ユキーも和希もーー」

「そろそろ行きましょう。まだ先もあるし、何か見つける度にその都度こんなに時間を使っていたら、拠点に戻るのは、夜になっちゃうよ」


 翔太と北上さんだった。その向こうには鈴森と小貫さん、トモマサがいて「早くしろー」って感じの顔をしている。俺と和希はクスクスっと笑うと、「ごめんごめん、すぐ行く」と謝って皆の後に続いた。


 それからも和希は楽しそうに辺りをキョロキョロと見回して、気になるものがないか探している。俺は翔太と鈴森に、和希から目を離さないでやってくれと頼むと、今度は北上さんと並んで歩いた。


「待たせてごめんね、北上さん。つい和希と一緒に夢中になっちゃって。異世界で見た事もないものを見つけて採取するっていうのも、凄く楽しいよね」


 北上さんは、フフフと笑った。笑顔が素敵だ。北上さんも大井さんもうちの会社になんでいるだろうっていつも思っていた。うちの会社にもったいない位に仕事ができて、しかも美人だ。


「椎名さんって会社で仕事している時と、『異世界(アストリア)』にいる時と随分キャラが違うよね」

「そう? 自分じゃ、解らないな」

「うん。会社じゃ、いつも山根課長に目の敵にされて、秋山君と一緒に怒られたりしているでしょ。でも『異世界(アストリア)』じゃ、ゴブリン相手でも全く引かずに勇敢に戦っている。なんていうのか、凄く勇気がある人だと思った」


 北上さんにそんな事を言われるなんて、凄く嬉しい。でも俺は、必死だっただけ。勇気があるとかじゃなくて、殺される位なら覚悟してやるしかない。それだけ必死に考えて、行動しているだけだと思った。

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