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Phase.116 『初調査 その1』



 時間はまだ早朝。天気もいいし、絶好のピクニック……いや調査日和だと思った。


 俺達の拠点から森を経由し、女神像のある草原地帯――女神像のある位置から、ひたすら東へ歩き続ける。方角については、小貫さん――それに流石だなと思ったけれど、鈴森もコンパスを持参していたのでそれを頼りにした。


 草原地帯の先には、荒地のような場所が今度は広がっていた。草原を出る手前で1匹のスライムを目にする。スライムも俺達の存在に気付いたようで、どんどんとこちらに向かってきた。


 まだ『異世界(アストリア)』に来て間もない頃に、スライムと遭遇してボコボコにされた俺と翔太は異常に警戒を強めた。ゼリー状の身体をブルブルと揺らせながらこちらに向かって来るスライムに対して、武器を手に取り向けて構える。すると坪井さんが前に出た。


「ほほう、スライムか!」

「坪井さん、気を付けて!」

「まあ今度は7人いるんだからな! 一気に全員でかかりゃ流石に勝てるだろ?」


 翔太の言葉に坪井さんは、大笑いした。翔太が怪訝な顔を見せる。


「な、なんだよー」

「おいおいおい、向かって来るのはスライム一匹だぞ! わざわざ全員でかかるまでもねーだろーよ!」


 俺と翔太は顔を見合わせた。坪井さんはきっと、この世界のスライムをファンタジーゲームの雑魚的モンスターと一緒に考えている。俺達もそう思っていたら、酷い目にあった。


 命からがら逃げだしたけど、あの時そのままとどまっていたら、なぶり殺されていたかもしれない。


「坪井さん、ここは十分に警戒して皆で当たった方がいいんじゃ……」

「いいよ、それなら俺がやってやるぜ!! もしも……そんな事は万に一つもねえが、もしも俺がやられるような事があったら全員でかかればいい」

「坪井さん!」

「とりあえず、任せろって!」


 止めようとしたけど、逆に北上さんに止められた。首を振っている所をみると、こうまで言っているならやらせてみればという所だろう。まあ、俺達も直ぐそばにいる訳だし、スライムにはおそらく一撃必殺の攻撃はない。危なければ全員で助けに入れば大丈夫か。


 俺達の拠点に来る前に坪井さんと一緒にいた河北君も、特に動揺したり心配している様子はなかった。


 キシャアアア!!


「オラオラオラ!! かかってこいやああ!!」


 坪井さんはスライムに向かって前進した、するとスライムは坪井さんに狙いを絞り、俺や翔太にも喰らわせたあの体当たりを坪井さん目掛けて放った。


 スライムの身体が宙を飛んで、坪井さんに跳びかかるように当たる。そのまま吹き飛ばされる……とは思わなかった。坪井さんは現役のプロレスラーらしく身体がでかい。スライムも思っていた大きさよりも大きさがあったが、坪井さんにはかなわない。


 坪井さんは真正面からスライムの体当たりを身体全体で受け止めると、そのまま両手で掴んで思い切り地面にスライムを叩きつけた。


「どりゃああああ!! 潰れろおおおお!!」


 ビシャアアアッ!!


 う、嘘だろ。い、一撃!?


 坪井さんに力任せに地面に叩きつけられたスライムは、その強烈な衝撃で坪井さんが叫んだように潰れてしまった。


「あっはっはっは! まあ、こんなもんだ!! どうだ、俺のパワーに恐れ入っただろ?」

「ああ、俺や翔太はスライムにかなわなかった。流石だな」


 坪井さんは自慢げな顔をすると、北上さんにハグを迫った。北上さんは、溜息を吐くと坪井さんを無視して辺りを見渡し始めたので俺と翔太は、ハラハラして見守っていた。


 すると坪井さんは照れ笑いして、北上さんとハグする事を諦めて俺の方へ拳を突き出してきた。だから俺も拳を突き出して、ポンと坪井さんとぶつけた。


「坪井さん坪井さんって言われるのは、どーも変な感じよ。俺達仲間なんだろ? トモマサでいいよ、皆それで呼んでくれ」

「じゃあ俺も椎名でも幸廣でもなんでも呼びやすいように呼んでくれていいよ」

「おう! ユキーって呼ばれてたろ? じゃあユキって呼ぶぜ」

「じゃあ俺は、翔太だからショウって呼んでくれていいぜ。別に翔太君って呼んでくれてもいいけどな。てへ」


 翔太を無視すると、俺はトモマサに笑顔を返した。


 ふーむ。これは、とんでもない仲間が入ったと考えていいだろう。トモマサなら間違いなく、また拠点にゴブリンが攻めてくることがあっても、10匹や20匹程度なら簡単に蹴散らしてしまいそうだ。これは心強い仲間ができた。


 スライムを倒したところで、北上さんがその辺にあった枝を拾ってスライムの死骸を漁った。


「な、何をしている?」

「うん、たまに魔物から黒い石が取れるんだけど……ないみたい」


 黒い石? それってどこかで……!!


 そう言えば、未玖が持っていた黒い綺麗な石。あれの事だろうか? あの石は魔物から取ったものなのか?


「その石が何か役に立つのか?」


 北上さんに聞くと、河北君が自分のスマホを取り出してその画面を俺に見せてくれた。『アストリア』のアプリ画面。そこには、メールという項目がある。


 河北君は更にそのメールをタッチして文章を見せてくれた。


 その内容は、例えばネットゲームなどで運営とかがプレイヤーにあてたようなものに似た内容の事が書かれていた。

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