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Phase.110 『話しておきたい事 その1』



 いよいよ、華金がやってきた。


 会社から帰宅すると、『jungle』等のネット通販で購入した物が続々と届いていた。


 今の時代、手渡しでも置き配でも選べるから便利でいい。例えばだけど、有刺鉄線などそういう盗む奴もいないだろうと思われるような物は置き配にしている。


「さってとー! それじゃ、行きますか!」


 服を着替えて持っていく荷物を整理して持つと、『異世界(アストリア)』へと転移した。そして急いでいつもの草原地帯にある女神像から、拠点に移動する。


 柵を動かして中へ入ると、直ぐに未玖が走ってきたので笑いかけた。俺の持っている荷物を見るやいなや、運ぶのを手伝うと手を出してきたので、俺は未玖の為に買った服やお菓子にジュース、新たな漫画や小説などを手渡した。


 結構な量になっていたので、重量がそれなりで未玖が悲鳴をあげる。


「う、うううう! こ、これは……」

「あははは。そこに一旦置いて、分けて運ぶしかないな。どうせこの拠点内は俺達の仲間しかいないし、盗まれる心配もないよ」

「い、いったいこれ何が入っているんですか? 何を持ってきたんですか?」

「え? 未玖の服とかお菓子とか漫画とか……」


 持ってきた物の名前を羅列しようと順に言っていくと、服、お菓子、漫画の所で未玖は大急ぎで持ってきた物を再び必死になって運び始めた。


 良かった、予想以上に喜んでくれている。因みに未玖に頼まれていたノートやペンなども持ってきている。薬草にキノコに芋だっけ? 色々と育て始めたし、そういうのの記録をつけたりするのかな。


 自分の荷物も丸太小屋の方へ置くと、拠点内をうろうろと歩き回った。もちろん拠点を囲む柵のチェックもする。その途中で鈴森にあった。


「椎名、話したい事がある」

「ああ、なんだ?」

「今日、今から椎名や翔太、北上に大井は土日とここで過ごして、月曜の朝までいるんだろ?」

「まあそういう予定かな。俺はそういうつもりだけど……でも他の3人も、特に昼飯の時に何も言ってなかったから俺と同じだろうな」

「そうか。それなら良かった。実は、ちょっとな……俺ももとの世界へ戻りたい」


 当然だなと思った。鈴森は実家暮らしだっけ? ニートって言ってる位だから。実家なら長く留守にすれば家族が心配しているだろうし……なのに俺は、鈴森にずっと未玖の事を任せてしまっている。


「ああ、もちろんいいよ。鈴森には悪いと思っている。俺達が仕事でいないから、未玖の事を鈴森に頼んでしまって」

「気にするな。未玖……あの子はいい子だし、俺も気に入っている。おもりに関しては、なんのストレスもない。そうじゃなくてな」

「うちだろ? あれからずっと、ここにいるもんな。家族が心配しているだろうし、そろそろ家の布団が恋しくなる頃だよな」


 鈴森はじっと俺の顔を見つめた。え? ち、違うのか?


「それはいい。別に帰りたいとかじゃない。前に話したろ? トタンとかベニヤ板をもとの世界からここへ持ってきたいんだよ。ブルボアの件もそうだ。もっと武器がいる。そう言ったものを取りに戻りたいんだ。なに、直ぐに戻ってくる」


 なんだ、そう言う事か。


「別にいいよ。でもちょっとだけ待ってくれ。皆はもう集まっているのかな? 成田さん達も?」

 

 頷く鈴森。


「これから集会を開きたい。色々考えてそれがまとまったから。それが終わったら、行ってもらってもかまわない。ただ、小貫さんの話を忘れないでくれ。拠点の外には小貫さん達を襲った、規格外のブルボアがいるかもしれないから」

「了解。それじゃ、他の皆にも声をかけてくる」


 鈴森と代わる形で未玖が戻ってきたので、未玖にもこれから皆に言って話しておきたい事があるから、集めてくれと頼んだ。


 集合場所は、あのタープの張ってある場所。鈴森が一日費やして作ったウッドテーブルとウッドチェアのある場所。まあメンバーも増えて、椅子が全然足りないけれど、それならそのまま石か地べたに座ればいいし、そこに決めた。


 到着すると、もう皆集まっていたので俺は考えていたこれからの事を皆に伝えた。


「集まってくれてありがとう。それじゃ早速でなんだけど、これからの予定を話そうと思う」


 翔太や鈴森、北上さん達に、小貫さん。新しく仲間に入った成田さん達も俺の言葉にちゃんと耳を傾けてくれている。


 俺はあまり人前で話すのが得意ではないし、リーダーとかそういう他の人達を引っ張るみたいな事も今までした事もないし、やりたくもないから逃げ続けていた。


 だけどこの拠点は、俺が1から一人の時から創り始めた。だから未玖や翔太が、俺がリーダーになっていいって言ってくれてちょっと恥ずかしくて、反面結構嬉しかった。


 だから、俺がリーダーだなんてぜんぜん役不足かもしれないけれど、精一杯頑張ろうと思う。俺達のプラスになるだろうと思う事や、やった方がいいと思った事は前向きに考えて行動して行こうと思った。


「まずは、ブルボアの件について話しておこうと思う」


 後ろの方で聞いていた、小貫さんが眉を動かした。


「まず小貫さんと小貫さんの仲間、佐竹さんと戸村さんと須田さんという人達がいるんだけど、皆知っての通りブルボアにやられてしまった。それでその佐竹さん達なんだけど、きっと今もそのままになっていると思うんだ」


 河北君が手を挙げつつ言った。


「つまり、椎名さんの友人でもあるその佐竹さん達の遺体をちゃんと埋葬してあげたい。そう言う事ですか?」


 この話をしていると、小貫さんはより一層つらそうな顔をする。だけど今も小貫さんを狙ってこの拠点に、ブルボアが忍び寄っているかもしれない。


 この拠点には、俺の大事な仲間達がいるんだ。なのに脅威に対してなんの対抗策も考えないっていうのは、あり得ない事だと。だから例え小貫さんがつらい顔をしても、このブルボアの件についての話は積極的に行わなくてはならないだろう。

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