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Phase.104 『ブルボア その3』



 『異世界(アストリア)』に来るようになってから、物凄い睡眠時間が少なくなった気がする。まあ来る前もネトゲのイベントとかそういうのがある日は、睡眠不足で翌朝出社したりはしていたけど。


 それでもネトゲにハマっていた頃は、コントローラーを握って座り込んだままの毎日だったからな。


 小屋や柵を作ったり、魔物相手に走り回ったり、剣を振ったりと身体の方もフルスロットルに使っている今は、正直睡眠をしっかりとって休息していないと、いつか限界がやってきてバタンと倒れてしまいそうだなと思った。


 できればあんな会社、スッパリと辞めてしまってこっちの世界中心で活動したい。だけどこっちの世界にいるのには、もとの世界のお金がかかる。その額なんと月額10万だ。はははは。今の会社に身を置いて、練馬のボロアパートと共になんとか家賃を支払えると言った感じだ。


 あんな会社でもアルバイトよりは稼げるし、今すぐに辞める事はできないよな。


「ヒャッヒャッヒャ、それでよーユキーったらよー!! あんな感じで実は女好きでさ!! ユキーみたいなのをムッツリって言うんだよね」

「あははは、秋山君って本当に面白いよね」

「うんうん」


 何を翔太は北上さんと大井さんと酒を飲みながら盛り上がっているんだ? 焚火を囲んで自分達で仕留めた獲物の肉を食らいながら、美味い酒を飲んでっていうんだから盛り上がりもするとは思うけど。だけど今、俺の名前が出てたような気もするけど。


 ブルボアの肉はとりあえず、切り分けて塩付けにした。肝臓や心臓などホルモンと言われる部分は、このまま捨ててしまうのももったえないので、折角焚火をしているし、焼くだけだけどそれで食べてみた。


 味はとんでもなく美味しかった。あんな凶悪な顔をしたブルボアが、こんなにも美味しいなんて夢にも思わなかった。次、ブルボアが俺達の前に現れたらきっと俺はそいつを上質な肉に見えるだろう。


 だけど……本当にこの旨味の塊と言ってもいい猪の魔物が、本当に佐竹さん達を……


 小貫さんが目覚めれば答えは解るんだけど、何も考えずにはおれなかった。俺自身、『異世界(アストリア)』でウルフやゴブリンに襲われて何度か死にかけたけれど、知り合いがもしも魔物に襲われて亡くなっているのだとしたら……


 ……死がとても身近で、直ぐ近くにあるように思える。


「お、美味しいですね。ゆきひろさん」

「ああ、美味しいな。なかなか食べられる物じゃないかもしれないからな。未玖もしっかり食べておけよ」

「はい」


 小貫さんは、いびきをかいてすっかり熟睡してしまっているとの事で、ようやく未玖は安心して小貫さんから離れた。まあ小貫さんが横になっている場所は、ここからも近い場所にあるので、何かあれば直ぐに様子を見に行けるだろう。


 鈴森は、ちょろちょろとここによっては肉を攫ってモッチャモッチャと食べながら、また拠点内を歩きまわっている。


 大は小を兼ねるの精神で、何も考えずに敷地を大きくしてしまったから、守るのも大変だ。だからこうやって拠点内や拠点を囲っている柵に、異常が無いか巡回して見て回っている鈴森には感謝していた。


 とりあえず、そろそろ眠りについて明日にまた備えようと思った。俺は30分程すると「明日も仕事だぞ! 俺はもう寝る」と翔太や北上さん達に言って、小屋の中へ入った。すると未玖も一緒に寝ると入ってきたので、「その方がいい」と言った。


 俺と未玖が横になってからも、翔太達は1時間程起きている様子だった。所々で鈴森の声もする。ブルボアとの戦闘で興奮止まずって所なんだろう。俺もウルフ共を丸太小屋から追っ払った時は、恐怖よりもやや興奮が勝っていたような気がする。


 目を閉じる、あっという間に意識が何処かへ吸い込まれていった。色々とありすぎて、身体が疲れていたのだろうと思った。






 ――――翌日。早朝、翔太を叩き起こしてもとの世界へ戻る。昨日はあんな事があったので、北上さんと大井さんともしっかりと4人固まって草原地帯の女神像まで向かった。


 拠点の留守についてと小貫さんの事は、未玖と鈴森にしっかりと任せた。大丈夫だ。


 そう思って俺達4人はいつも通り会社に出勤し、また仕事を終えて弾丸のように猛スピードで帰宅すると『異世界(アストリア)』へと転移した。


 仕方のない事だけど、『異世界(アストリア)』に来るともう日が暮れて夜になろうとしている。平日は仕事だからまあ諦めるしかないんだけれど、仕事さえ終わればパっと転移してこれる事に関しては恵まれていると思わないとな。


 それに今日は木曜日。明日頑張れば、また待ちに待った土日がやってくるのだ。


 これは最近思ったんだけど、平日は夜からしか活動できないし、拠点でのできる事を中心に進めた方がいいかもしれない。そして休日は、折角明るいうちから行動できるし、心強い仲間もできた事だしそろそろ『異世界(アストリア)』の調査、つまり冒険を少しずつでも進めていきたい。


 考えてみれば、俺は未玖がここに来る前にいたっていう洞穴にしか行った事がない。それとこの拠点と近くの川だけ。女神像のある草原地帯もその近辺がどうなっているのかも知らない。


 だからもう少し活動範囲を広げて自分達の拠点の周辺位の事は、調べて知っておこうと思った。


 …………もしも。もしもだけど、この付近にドラゴンのねぐらがあるとかそういう可能性も全くのゼロとは限らないのだから……俺は用心深い性格とはよく言われるけど、この世界では用心に越したことはないと思う。

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