【1】なんでこんな所に!?
「やった!新刊ゲットできた!」
心の中でそう呟きながら次の目的地の場所に向かって歩き出した。次のお目当ての品は前から好きだった方の新刊だ。たまたまSNSで見かけ、絵柄とストーリーがとても好みでそこから追っていた。今までは通販でしか出していなかったが今回初めて即売会の参加をしている。そんな情報が耳に入り即売会に行く事にした。
サークルの前に行くと何人か並んでいた。待っている間にお金の準備をしていると前の人が買い終わったようだ。前に進んで「新刊ひとつ下さい」と言い前を向くと見知った顔が写っていた。
「姫野……さん?」
姫野さんは陽キャに分類される人で、クラスの中でも一際目立っている。そんな人がこんな所にいる訳無い、見間違いだと思いさっさとお金を払おうと思っていると予想外の言葉が飛んできた。
「げっ…成瀬!なんでここにいるのよ!?」
正直、本物の姫野さんがいると言うことより名前を覚えられている事の方が衝撃だった。
クラスメイトだから名前を憶えているのは当然かもしれないが、僕は影が薄い方なので名前を憶えているとは思わなかった。
僕の考えなど知る由もなく姫野さんは話を続ける。
どうやらこのスペースは姫野さんのサークルらしい。
そして今は一人ではなく友達と一緒に来ているという事も教えてくれた。
しかし、僕には関係ないと思いすぐにその場を離れようとしたのだが呼び止められてしまった。
このまま無視して立ち去ることも出来たけど後々面倒なことになりそうな気がしたので仕方なく話すことにした。
話をすると言っても僕は特に話すことはないので聞き専に徹した。それから少し経つと話したい事が無くなったのか会話が終了してお互いに自分の作業に戻った。
僕は他の本を買いに並ぶためその場を離れた。
姫野さんから離れて安心したせいか緊張が解けてしまい思わず大きな溜息が出てしまう。
周りを見渡せば沢山の人がいた。この人達の中に知り合いがいなくて良かったと思った。もし知り合いと鉢合わせでもしたら何を言われるか分かったもんじゃない。そんなことを考えながら、僕はそのまま帰るつもりだったが、ふとあることを思いつき姫野さんの所に戻ろうとしたが、やはり止めて帰ることにした。なぜなら僕みたいな陰キャが話しかけたところで何になるんだ?という疑問が出てきたからだ。
それならまだ知らないフリをして帰った方がいいだろう。
僕はそう決めて姫野さんのサークルから離れるように歩いた。
それからしばらくして目的の物を買って家に帰る途中にある公園に立ち寄ってベンチに座って休みながら、さっきの事を思い出していた。まさかクラスメイトにあそこで会うなんて思ってもなかったし、しかも姫野さんだとは思いもしなかった。それにしても、あんな所で同人誌を売っているとかオタクにも程があると思うんだけど……。まぁ人の趣味はそれぞれだし別にいいんじゃないかな。
そんな事を考えているうちに日が落ちてきて辺りが暗くなってきた。そろそろ帰らないと親に怒られると思い立ち上がり家に帰り始めた。
歩き始めて数分後にスマホを見ながら歩いていたら人とぶつかってしまった。慌てて謝り相手を見るとそこには今一番会いたくない人物だった。
ぶつかった相手が姫野さんだと気づき咄嵯に逃げようとしたが腕を掴まれ逃げられなかった。
そして案の定文句を言われた。
しかし、それは僕の予想していた内容と違っていた。なんでも、あの場所で会った事は内緒にして欲しいとのことだった。僕としては誰にも言うつもりはなかったのでありのままを伝えて了承した。するとなぜか感謝された。
その後、何故か連絡先を交換する流れになり交換してしまった。
交換した後、急いで別れ帰宅したが、この時に交換したのが間違いだったと後悔するのはもう少し先の話である。




