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The way to the kings  作者: 使徒澤さるふ
第二章 逃亡、行商編
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第六十九話 〜宇宙船ボイジャー号〜

 魔光石と思われる光に照らされた遺跡の中。


大量の足音が響き、カールがそれを警戒して構える。


見慣れぬ武器で武装した、RE型のオートマター達。


そのオートマターを統括している女性が、前へと歩み出る。


「侵入者達、貴方達は格納庫の天井を破壊したのですか」


女性はどこか機械的で、RE2型と同じ顔をしていた。


統一された容姿のRE2型に比べ、髪型や装飾品が違う程度のもの。


「事故により崩落しました、と言って信じていただけますか」


ヒデヨシが、穏やかな笑みをうかべて話す。


「居住区の登録もございません、外部の侵入者は排除させていただきます」


女性の言葉で、後ろに控えていたオートマター達も一斉にかまえる。


それを受け、カールやヴェーゼも応戦のかまえを見せた。


静寂と緊張が走り、カールが動く事を決めた瞬間にヒデヨシの手が制する。


「まて、カール。ヴェーゼ様もお待ち下さい」


「我々が事故により、ここに居る事は偽りではありません」


「侵入が許されないのであれば、我々はここを去ります」


「ですが、出口がわかりません」


「力で排除する必要は無いでしょう、出口まで案内していただけませんか」


ヒデヨシは両手を広げ、にこやかに女性の前へ歩み出る。


非武装による話し合いの提案、女性は冷静な表情でヒデヨシを見ていた。


「交戦の意思無し、マスターの判断を仰ぎます」


女性が虚空に話しかけている様子を、ヒデヨシはマスターとの通話であると察していた。


「かしこまりました、お連れいたします」


女性は目を閉じ、オートマター達は武器を下げる。


「マスターがお会いになるそうです」


「ご案内致します」


「感謝します、私はヒデヨシと申しますが貴女は」


ヒデヨシが自己紹介をして、右手を差し出す。


「私はただのオートマター統括要因です、RE型のワンオフ機となります」


「呼び名が必要ならREO型、レオとでもお呼びください」


「こちらへどうぞ、ヒデヨシ様」


女性は、機械的に通路へ進むように促し、オートマターの列は割れる。


ヒデヨシ達は、女性の後へ付いてマスターのところへと向かった。


オートマターの一部は、崩落した瓦礫の撤去へと動き出していた。








 遺跡の中、歩く先は次々と照明が灯り、行き先を示していく。


女性型オートマター、レオに連れられている一行。


SFドラマの舞台セットのような光景を、物珍しく眺めるカールとヴェーゼ。


ヒデヨシは一人、先日見たばかりのドラマを思い出していた。


自動扉が開き、一室の中へと導かれる。


そこに座っていた男性は、RE1型のオートマターだった。


「ようこそ、召喚者のヒデヨシさん」


オートマターは、にこやかな表情で席を立ち、ヒデヨシに握手を求める。


「私はアレックス・マイナー、この宇宙船の船長をしている」


「まあ今の私はただの疑似人格で、RE1型にそれを入れているだけに過ぎないのだけれどね」


「はじめましてアレックス船長」


ヒデヨシとアレックスが握手をし、会議室と思わしき部屋で対座する。


「お茶も入れずにすまないね、実はあまり時間が取れないんだ」


アレックスが、手を組みかえながら話す。


「私が死んだのが、船の記録によると一万三千年ほど前」


「船長死亡時のバックアップが私」


「ここまでは理解出来るかな」


アレックスが、ヒデヨシへと問いかける。


「まるでSF映画のような話ですが、実現不可能な話とも思えません」


「映画か、そういえば誰かが宇宙間航行も、昔は夢物語だと言っていたな」


「そうなるとヒデヨシさんは、私より前の時代から召喚されたみたいですね」


「召喚の時代・・・、ですか」


「詳しくは船の記録を見て欲しい、ヒデヨシさんにこの船の船長権限を与えるから」


「なぜ、そのような重大な権限を私に譲るのですか」


「話が通じそうだし、さっきも言ったけど時間が無い」


「この権限譲渡が終わり次第、船は省エネモードに戻さなきゃならない」


「船は永久機関と、完全自立型供給システムにより、長期間航行を想定していた」


「だけどもう限界みたいでね、十数年もすれば永久機関は完全停止する」


「船内システムの稼働率によっては、数年で停止する可能性すらあるんだ」


「船長代行AIである私の稼働も、非常に負荷が高い」


「アレックス様は、私に何を望んでいるのですか」


「事情もわからない私には、荷が重いのでは無いかと思いますが」


「永久機関の修理、難しいようなら何も知らない住民を託したい」


「撃墜されて、本来の目的も失った哀れな船長の、最後の願いだよ」


「・・・わかりました、権限譲渡を賜ります」


「感謝する、・・・願わくばこの時代での平和利用と成されん事を」


「微力ですが、努めさせて頂きます」


「彼女も力になるだろう、元々が船長サポート機体だ」


アレックスが、レオを指し示して話した。


「矢継ぎ早に押し付ける形となって申し訳ない」


「だが、やはり同じ世界の出身であるヒデヨシさんだからこそだとも思う」


「アレックス様も召喚者なのですね」


「そうです、私の時代には数百万人の召喚者が居ました」


「召喚により、この世界は飛躍的に発展し、代償として魔王が生まれたのです」


「ですが、もう魔王すらも生きてはいないほどに、時間が過ぎたようだ」


アレックスが、空を仰いで複雑な表情を見せる。


「魔王・・・、聞いた事がありません」


「そうか、では私はもう失礼するよ」


「ええ、後ほど船の情報を確認させていただきます」


「さようなら、遥か未来に召喚された同郷の人よ・・・」


そう言うと、RE1型は機械的な表情に戻り、まるで何事も無かったかのように部屋を出ていく。


「ちょっとどういう事よ、ヒデヨシ君」


「あんた、今の話を全部理解できたわけ」


ヴェーゼがヒデヨシを詰め寄り、カールは考える事を拒否していた。


「全部なんて理解出来ていませんよ」


「それは、船の記録を調べてからの話です」


「管理権限の移譲を確認」


「ヒデヨシ船長、REO型が今後サポート致します」


無表情なレオが、機械的なアナウンスを伝える。


「今後、君の事はレオと呼んでも構わないかな」


「問題ございません、ヒデヨシ船長」


ヴェーゼの勢いを押しのけて、ヒデヨシがレオの名前を再確認した。


「しかし、こんなに簡単に船長権限を渡してしまって本当に問題無いのかい」


ヒデヨシの探るような言葉に、レオの表情は変わらず機械的だ。


「問題ございません、新しい船長の監視も任務のうちですので」


「監視か、選択を間違わぬように心に刻んでおくよ」


唐突に船長となったヒデヨシ。


SF映画のようなものが、一万年以上前にこの世界には再現されている。


今のヒデヨシにわかっている事は、その程度の事だった。

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