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The way to the kings  作者: 使徒澤さるふ
第二章 逃亡、行商編
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第六十四話 〜魔法訓練〜

 酒場の裏手、増え続ける畑の隣で魔法が放たれていた。


ヒデヨシの手から放たれた火は、火の粉となって藁に取り付いて消える。


「今の私では、この程度の事しか出来ません」


ヒデヨシは、後ろで構えるヴェーゼへと向き直った。


「いまのでわかったのは」


「あんたが規格外の魔力を持ってる事と、魔法の基礎を知らないって事」


ヴェーゼは呆れた顔で首を振っている。


「魔法の・・・基礎ですか」


「人間種は魔力が低いから、基本的に魔道具で補佐して使うのよ」


「術式の構築と魔力の増幅を補佐しないと、形にすらならないわけね」


「魔道具無しに、手元を燃やす魔法を無理やり飛ばして見せた」


「手元を燃やす魔法・・・・」


ヒデヨシは、手元を確かめて同じ言葉を繰り返した。


「やっぱりわかってなかったのね」


「今の術はファイアハンドって言う近接魔法」


「そもそも飛ばす事が出来ない魔法を、術式を追加して無理やり飛ばしてるわけね」


「術式も全部あんたが考えたものかしら」


「構文から何からめちゃくちゃだけど、出力の高さだけでなんとかしちゃった」


「カールが闇雲に剣を振り回したら、相手に当たったようなものか」


ヒデヨシの回答に、ヴェーゼが笑う。


「そうね、あんたには魔法の師が必要で、あたしはそれが出来る人材」


「一応、世界最高の魔法使いを育てた事もあるわ」


「報酬が高そうですね」


「そうねえ、それなりに高いわよ」


「私がカザルへ提供出来るものは、すべて提供しよう」


「ぶっちゃけこの畑の知識だけでも、カザルに教えてくれると嬉しいわね」


その言葉にヒデヨシは、うなずき微笑む。


「早めに覚えたい魔法がある」


「なに、めちゃくちゃ強い魔法とか」


「守ったり、仲間を助けられる魔法が欲しい」


「・・・あんたらしいわね」


「ヴェーゼ様にもう一つ見てもらいたい魔法があります」


そういって、ヒデヨシは自分の指を傷つけた。


そのまま何も言わずに回復魔法を行使し、その傷を直して見せる。


「回復魔法。でも始めて見る発想ね」


「自己再生能力を高めて治療する魔法です」


「術式の構造はむちゃくちゃだけど、効率化すれば最高の回復魔法になりそうね」


「やはり、これも基礎がありませんか」


「オリジナルだとしたら、あんたの発想は天才」


「普通の回復魔法は、失った部分を魔法で作り直すのよ」


「なるほど・・・」


「治癒力を高める私の魔法と併用すると、どんな負傷にも対応できそうですね」


「あんたと女王アザゼルが組めば、魔法の革命が起きるんじゃないかしら」


「まあでも、仲間を守る魔法の前に基礎練習ね」


畑へ水やりをしているノートリスが横目で見ている中、魔法の基礎練習が進められていた。






 酒場の裏手、畑に倉庫に修練場。


すっかりヒデヨシ一家の住居となっている倉庫。


映像魔導機、通称テレビにすっかり虜になったアクア、リール、ローズ。


創作物語の映像に釘付けとなり、三人は朝からほとんどここを動いていない。


そして畑にはノートリス、にやにやうろうろ変質者のようだが、ただ畑仕事に夢中なだけ。


修練場では、ヒデヨシとヴェーゼが魔法の訓練に励んでいる。


「術式なんて、最初はあたしが教えるものをそのまま詠唱すれば良いから」


「詠唱してもらうのは、基本防御魔法プロテクション」


「まず自分の魔力がどう流れて、術が形になるのかを感じなさい」


「はい、ヴェーゼ様」


ヴェーゼが見守る中、ヒデヨシがプロテクションの術式を組み上げる。


見逃しそうになるほど手早い作業、魔法陣がヒデヨシを包んで、そして消えていく。


「プロテクション」


詠唱が終わり、ヒデヨシが自分の体を確かめる。


「とんでもない演算能力してるわね・・・」


ヴェーゼは、再度呆れて顔を覆う。


「ただ、出力任せで魔力の消費も浪費もすごすぎるわ」


「魔法ってのは、適切な配分で魔力を使わないと意味がないの」


「私の魔法は、そんなに酷いですか」


「そうねえ、今は酷いけど、訓練を積み重ねれば、女王アザゼルに匹敵する資質がある」


「でも、あの子みたいな強大な魔力を持つのはおすすめしないわ」


ヴェーゼが目を伏せ、悲しげな表情をしている。


「なぜです、私が強くなって皆を守れるなら、良いのではないですか」


「魔力はね、絵の具みたいに濃いところと薄いところがあるの」


「だけど、水の中に絵の具を入れると色が薄まるように」


「高すぎる魔力を持ったものは、魔力の薄いところではその魔力を維持出来ない」


「女王アニー・アッシュファフロム・アザゼルは、世界一の魔力を持った人間種」


「あの子は世界一濃い色の絵の具だから、その色を維持する事が難しい」


「魔力の濃いカザルを出る事が出来ない、それが高い魔力の代償」


「魔力の薄いところでは、体を維持することが出来ず消滅してしまう」


「それが魔人王、世界最強の魔道士アザゼル様・・・」


「そして魔力の代償・・・」


ヒデヨシが、その言葉を反芻する間もなくヴェーゼが話す。


「ああ、そういえばカールって子も高い魔力を持ってるわ」


「稀に居るのよね、自身の魔力を全て肉体強化にのみに使えちゃう特異体質の子」


「カールは、やはり特殊なのですね」


「勇者の力と呼ばれている、魔力を集める者」


「集めた魔力で、肉体を強化して戦う」


「魔法の王、魔人王を討伐しうる資質だと言う伝承があるわ」


「カールが勇者か・・・」


「魔人王の資質を持つあんたと、勇者の資質を持つカールが一緒に居るってのも変な話しよね」


ヒデヨシが、しっかりとヴェーゼの目を見て決意を固める。


「ヴェーゼ様、訓練を続けましょう」


「そして今夜、少し皆に話しておきたいことがあります」


遺跡調査への道筋が立たない中、ヒデヨシだけが知る情報があった。


もはやこれは想像ではなく確信。


古代魔法文明は、自分と同じ世界から召喚された、召喚者が深く関わっていると。

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