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The way to the kings  作者: 使徒澤さるふ
第一章 グリムウェル編
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第三十九話 〜逃亡と集まる運命〜

 「ヒデヨシ様、ローレンタール様からの報告です」


ローレンタール邸のメイド、ルシア。


彼女からの報告が、ラボを震撼させる。


「ガラデアとの国境、ヴィンクスにジェロニアの軍が到着致します」


「軍の規模は二大隊級、二千人規模の部隊が進行しております」


真剣な眼差しで語るルシアに、ヒデヨシは疑問を投げかけた。


「目的は」


「わかりません、しかし、ヒデヨシ様はお逃げになった方が良いと判断されました」


「狙いが私にある可能性は高い、だがそうなると召喚がバレたという事か」


「そう判断し、部隊を編成しつつ、事情説明で時間を稼ぐおつもりのようです」


「既にシュタイゼルへ報告をさせておりますので、ダリス様とお会いください」


「わかった、ルシア、君はどうする」


「私は、旦那様のところへ戻ります」


「そうか、死ぬなよルシア」


ルシアは、綺麗な一礼を見せ、ヒデヨシ邸を後にする。


騎竜を早駆け、ルシアはグリムウェルへ急ぐ。



 犬車の手配を急ぐ、幸いにもタダンがいち早く手を上げ、素早く事が進む。


「ヒデヨシ様、わたくしたちも共に参ります」


出立を急ぐヒデヨシに、その家族達はいっせいに声をかけた。


ローズとアクア、そしてリール。


問答をしている時間は惜しい、ヒデヨシはただ現実を皆へつきつける。


「お前達・・・、これは恐らく運命が大きく変わる分岐点だ」


「そして私は反逆者として追われる可能性が高い」


「それでも付いてくるというのなら止めはしない」


「僕はヒデヨシ様を信じています、それに全てを記録するのが僕の使命です」


リールは一歩前へでて、自然と敬礼のように胸に手を当てた。


「わたくしもヒデヨシ様のそばを離れる気などございません」


アクアは、強い意志と共にそれを言葉にする。


「わたくしも同じです、ここに居るものはヒデヨシ様と共にあります」


ローズも、迷いなく続く。


「わかった、すぐに出る、荷物は最小限のみだ」


ヒデヨシの声を受け、四人はタダンに従い犬車に乗る。


「ヒデヨシ様、ラボはしばらくこのわたくしがお預かり致します」


太っちょタダン、その大きな体で、タダンは真っ直ぐにヒデヨシを見た。


「ああ、済まない、出来るだけ早く戻る」


「ええ、わたくしはそれまで貴方の意志を引き継ぎ、すぐにでも再開出来るようにお待ち致します」


「それでは、行ってらっしゃいませヒデヨシ様」


タダンは、深く一礼し、犬車が見えなくなるまで見送り続けた。


貴方はここで死ぬべき人ではありません、そして必ずお戻りになると信じております。


貴方の人を見る目は確かです、その運命がきっと守ってくださるでしょう。



 一陣の風、風のように騎竜が走る。


目的地は定まっており、それはグリムウェルではない。


金髪の青年、カールはラボへ向けて一直線に走り抜けていた。


オルカーの率いる部隊を置き去りに、エリザベートの部隊を追い抜き、一人駆ける。


誰よりも早く、ジェロニアの来訪を知らせるために。


カールはラボに着くなり、ヒデヨシ邸の前へ騎竜を止め、そのまま扉を開け放った。


「ヒデヨシ様」


入り口から辺りを見回すが、静かな邸の中、ただ一人が座る。


「やはり、いらっしゃいましたねカール」


タダンは、その予想通りな来訪者を手早く迎え入れた。


「タダン・・・さん、ヒデヨシ様はどうした」


「既に知らせを受け、出立致しました」


「すぐに追いなさい、ここから南西へ進むと街道に当たります」


「そのまま街道を西へ向かえばシュタイゼルへ着きますから、ダリス様を訪ねなさい」


タダンは、手紙と共に高速街道使用許可書をカールにわたす。


「これがあれば街道を通れます、手紙はダリス様の部下に見せればヒデヨシ様と会えるでしょう」


「貴方が間に合って良かった、やはり運命はつながっておりましたね」


タダンは、嬉しそうにカールの手を取り道を示した。


「ありがとうございます、タダンさん」


「ええ、急ぎなさい」


カールは素早く騎竜へ戻り、その手綱を握りしめる。


ヒデヨシ様を守る事が最善、その思いだけがカールを先へと突き動かしていく。



 ヴィンクスに緊張が走る、一触即発。


ゴルダンは、不遜な態度で使者を眺める。


「ジェロニアの貴族様方は、どのようなご用件でいらっしゃったのでしょうか」


ローレンタールの代理、使者を買って出たグリムウェルの役人は、命を覚悟してここへ立つ。


「グリムウェルが召喚者を匿っている事は知れている」


「今すぐ召喚者と首謀者を引き渡しなさい」


ゴルダンは、冷たく命令を伝える。


「そんな、召喚者など私は存じておりません」


「グリムウェルは、ジェロニアに税も収めて前線にも貢献しております」


「もうよいゴルダン」


神輿の上、天上人が顔も見せずに言い放つ。


「喋らぬのなら、徹底的に聞けばよい」


「かしこまりました、エリザベート様」


その声とともに、後ろで控えていた騎士が使者の逃げる手段を奪う。


「・・・っ、がっ・・・」


使者の男性は足を貫かれて悶絶し、その血を辺りにばらまいた。


「なぜ、このような事を・・・」


「早めに喋ったほうが気が楽だぞ」


騎士は、嗜虐的な視線を使者に向け、その剣で使者の顎を上げさせた。


これは交渉でも、話し合いでも無く、ただ欲しい物があったところへ取りに来ただけ。


決して対等な関係では無く、求められるものは交渉では無い。

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