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The way to the kings  作者: 使徒澤さるふ
第一章 グリムウェル編
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第三十八話 〜進軍〜

 ジェロニアの貴族街。


「ゴルダン、それはまことか」


美しいドレスに包まれる絶世の美女。


エリザベート・ダーデン・ワイマーク。


小太りの壮年男性、綺麗なスーツは似合わず、着られている感が強い。


ゴルダン・ディーク男爵は、唾を飲み込み報告を続ける。


「はい、グリムウェルの伯爵から接触がございまして、国主に反逆の疑いがあると」


「召喚者を使い、ジェロニアを妥当しようと言うのか」


「召喚については、何やら証拠もあると言っております」


「ガラデアにやらせた召喚は、召喚者が反抗的で殺したという話しではあったであろう」


「そのように報告はございました、実際には逃亡だったのかもしれませぬ」


「グリムウェルは、ガラデアと隣接しておったな、なるほど・・・」


「逃亡してグリムウェルに潜伏したと仮定すると、合点が行くな」


「グリムウェルは逃亡した召喚者を保護し、戦力として起用した」


「エドガーの奴に対峙できる可能性がありそうじゃな」


エリザベートが笑う。


「召喚者を捕らえ、エドガーを討つ刺客として使う」


「グリムウェルへ兵を派遣しろ、名目はそうじゃな反逆の嫌疑で制圧したでよい」


「ゴルダン、グリムウェルの統治は貴様に任せる」


「反逆は罪じゃ、抵抗するものは殺せ」


ゴルダンは、膝をつきその命令を承服する。


「かしこまりました、エリザベート様」


「そういえば、召喚されたのは生きのよい男との報告じゃったな」


エリザベートは、笑いながら舌なめずりした。


「なかなか楽しめそうじゃな、妾も見物に行くとしよう」



 美青年、ジャスティン。


オルカーにもたらされた一報。


「エリザベート様と共に、グリムウェルへ出陣する事となりました」


「狙いは、召喚者の確保と国の制圧です」


その報告に、カールは跳ねるように反応した。


「ヒデヨシ様が危ない」


オルカーもまた、その重要性を察して動く。


エリザベートが動くほどの事態、その価値があると判断した何かが召喚者にある。


急ぎエドガーの王宮へ入り、王の間へ向かう。


王は変わらず玉座にて、その力を示す。


「エドガー様、エリザベート様に動きがありました」


「グリムウェルに反逆の疑い有りとして、征伐隊を編成して出陣する模様です」


「反逆だと、確信があっての話しだろうな」


「グリムウェルで召喚がなされたとの事です、それについてはカールから証言があります」


カールは前のめりになり、懇願のような形で話す。


「グリムウェルはヒデヨシ様を召喚しました」


「でも、反逆が目的ではありません」


「ヒデヨシ様は、ただ国を豊かにしてくれて、戦争も戦うことも好きじゃないって言う人です」


「あの人は戦争じゃなく、対話でこの状況を変えると言ってました」


「だから俺は、グリムウェルが襲撃されるなら助けに行きたい」


カールの素直な言葉、エドガーはただ黙って聞いていた。


「反逆についてはともかく、召喚自体は事実のようです」


「エリザベート様も何かしらの情報をつかみ、重要案件として直々に出陣準備をしております」


「何かがあるようだな」


オルカーの言葉に、エドガーは考える。


「オルカー、部隊を編成しろ、俺も出る」


「留守はトーレスに任せる」


「かしこまりました、すぐに団長へ連絡します」


そう言って、オルカーとその配下達は慌ただしく準備を始める。


カールは、その中でも特に早く動く、その目的は最初に誓ったものを果たすためだった。



 オーガスト伯爵は、領内にて出撃準備を始めていた。


ゴルダン卿からの連絡を受け、征伐の参加、そして征伐後の統治権を得る為に。


あっさりと召喚を信じた事に少しの違和感を感じつつも、ヒデヨシを打倒出来る事に喜ばずには居られなかった。


次男オズワルドに部隊指揮を任せ、自身を総大将として出陣し、その影響力を示す。


国の統治権を得、エドガー様への忠誠を示せる最良の策。


これこそが、真に国を発展させる。


そう盲信することで、自身のプライドをギリギリのところで保つ。


オーガストは、自分の苛立ちに気がつき、その理由をよく理解し苛立った。


だが、苛立ちの要因はまもなく消え去る。


ヒデヨシは討伐される、そうこの私の手によって。



 ジェロニアに春が来る、花が咲き、暖かく、冬の間に中断気味だった戦争はまた活性化する。


その戦列とは別の目的を持った部隊が二つ、グリムウェルを目指していた。


前方を行く部隊、エリザベートを総大将とした征伐隊。


「不快じゃな」


エリザベートは、一言吐き捨てて、ジャスティンの顔を触る。


ジャスティンは、エリザベートの乗る神輿のような犬車の中で、傍らに居る事を許された。


「エドガー奴は、なぜ妾の目的に気が付いたのか」


「常日頃から警戒されておりましたので、御身自らが出陣された事で何かを感じられたのでは・・・」


ゴルダンは、率直な意見を上申する。


「どうじゃろうな、何か確信めいておる気がするのう、ジャスティン」


エリザベートは、クスクスと笑いながら美男子を見る。


ジャスティンは、普段よりも死を意識し、脂汗をかく。


「それでは、わたくしは部隊の様子をみてきますので、失礼致します」


ゴルダンは、唐突に何かを察して犬車を後にする。


その扉が閉まると同じ時に、エリザベートはジャスティンに怪しい口づけをした。


「っ・・・、んっ」


「何、を・・・エリザベート様」


糸を引きながら、艶のある瞳で見つめ、その頬を怪しい指がつたう。


「どうやらお仕置きが必要なようじゃのう」


そう言って、エリザベートはジャスティンの男を握りしめ、促した。


揺れる犬車、時折漏れる声もその揺れも、誰一人その真実を確かめるものは居ない。


この二人だけの空間を侵す大罪人など、ありはしないのだ。

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