表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The way to the kings  作者: 使徒澤さるふ
第一章 グリムウェル編
26/71

第二十五話 ~氷のアザゼル~

 カザルには、世界で一番最初に冬が来る。


この極寒には白く美しい城塞が良く似合う。


カザル本国、荘厳な城の主はアザゼル、白銀の美女。


この世界の言葉ではないが、アルビノと呼ばれる特異体質は全身を白へ統一する。


鬼と呼ばれる、世界一強靭な肉体を持って生まれる少数種族。


アザゼルは、その中で異質な魔力を持って生まれた。


幼少期にはすでに大人を軽くあしらい、とある魔導士へ弟子入りしてからは並ぶ者さえいなくなる。


アニー・アッシュファフロム・アザゼル。


世界最強の魔導士。


「アザゼル様、最前線の報告を致します」


「ああ、いいよ別に、好きにやってくれれば」


アザゼルは、特に興味を持たず、皿のブドウを一つ取る。


「しかしアザゼル様・・・」


「別にあなた達で十分制圧できるでしょう」


「それは、そうなのですが・・・我々はアザゼル様の為にも王を名乗って頂きたいのです」


「あんた達はそればっかりだね、まあいいけど」


「必ずや世界を魔力で満たし、アザゼル様に王として君臨して頂く、というのが皆の総意です」


「あたしはここの生活を気に入ってる、いつもそう言ってる」


蝙蝠のような翼を持った二本角の魔人は、アザゼルに跪いて話す。


「それでも、我々はアザゼル様の自由が奪われている事に我慢がならんのです」


「これは誰の責任でもない、あたしの力が問題だし、別にそれで君たちが動く必要は無いよ」


「強大すぎる魔力が原因でカザルを出られないなど、これほどに理不尽な事がありましょうか」


「それが魔力の法則だもの、濃度はなるべく一定になろうとする」


「大陸龍ミドガルズオルム様が居るからだと思うけど、カザルは特別魔力が濃い」


「ジェロニアとかだと、あたしの魔力が散ってしまって維持も出来ないし」


「あたしが住めるようにするなんて、数十年はかかっちゃうのよ」


「世界の全てを制圧すれば、世界を魔力で満たす事が叶うと考えております」


「そう、期待して待っているわ、サツォガルオ」



 アザゼルの自室、城の最上階で臣下からの愛に溢れた最高級の部屋。


「ああ、本当どうしたらいいんだろ」


「あたし、別に出られない事を不便に思ってないんだけどな~」


「なんとかならないの、ミニちゃん」


「ミニちゃんはやめてください」


竜人種の女性、鱗に覆われ翼を持つ、美しいと言える緑の体。


「ちっちゃいミドガルズ様なんだから、ミニガルズオルムのミニちゃん」


「かわいいと思うのに」


「母から見たら世界の全てがミニです」


「一応私にはヴェーゼ・ミドガルズオルムと名前があります」


「齢二千年を超える私にミニちゃんはどうかと思いますよ」


「ミニちゃんも、世界を魔力で満たすべきだと思ってるの」


「そんなこと、母がやっても百年はかかるような大事業です」


「私はアニーが王になる事には賛成ですが、現実味の無い事業にはコメントできません」


「でもまあ、あの子達はやれると思ってるしさ」


「皆、あなたを心から尊敬し、崇拝しているのです」


「この国を支える全ての魔法は、あなたが作り上げたのですから、それも当然なのですが」


「いやまーね、あたしも伊達に長生きしてないっつーか」


アザゼルは、照れて頭をかく。


「まあ、ほとんどがお師匠様の功績ですけれど」


「ミニちゃん、そういうところ意地悪だと私は思うな」


「私はミニちゃんではありません」


「自分の半分程度しか生きていない小娘に、ちゃん付けされるのは嫌です」


「またまたそんなこと言って~、本当はうれしい癖に~」


ヴェーゼは深くため息をつき、アザゼルと目を合わせる。


「アニー、もう止められない事はわかっているでしょう」


「あなたの意思とは無関係に、あなたの為に世界は統一される」


「ええ、そうね」


「あなたが、統一された世界の王にならなければいけない」


「うん、そうなると思う」


「エドガーとも決着は付けないといけない日が来るわ」


アザゼルはその言葉を受けて、ワインをあおる。


「・・・小さい頃のエドガーは可愛くてね、ちっちゃい手であたしの手を引いてさ」


「あたしの事を迎えに行くって、僕と結婚してくださいって息巻いちゃって、真っ直ぐ私を見るの」


「あたしに、あの子を殺せると思う・・・」


「殺せないでしょうね、こうなってしまったのは、残念です」


「そうね・・・」



 サツォガルオが前線の報告を聞く。


「サツォガルオ様、徐々にではございますが、ジェロニアからの離反が出ております」


「エドガーの脅威に対抗しうると、少しずつ認識され始めたという事ですね」


「ええ、内地にも諜報部隊を入れており、こちらも報告が来ております」


「なんでも、グリムウェルが農業研究を熱心に行っているとか」


「そちらで改良されたイモ類を手に入れる事が出来まして」


「ほう、そのイモはカザルでも栽培できそうなのか」


「カザルでの栽培も出来なくはないと思います、痩せた土地でも良く育つと評判がありました」


「ただ、カザルの寒さに対応できるのかが不明です」


「グリムウェルとカザルでは気候が違い過ぎるからな・・・」


「もし、グリムウェルの様な力が我々にあればよいのだが」


「それで、実はグリムウェル国内の領主から接触がございまして」


「イモもその使者から提供されました」


「わかった、前線のマクベスに対応させろ、出来るかぎりグリムウェルとの親交を深めるように」


「了解いたしました、マクベス様にお伝えします」


カザルに雪が降る、これからカザルはアザゼルの様に白へ統一されていくのだ。


カザルの食糧事情は世界一厳しい、サツォガルオはグリムウェルがこれを改善できるのではと、考えていた。

続きが気になる時は、応援の意味も込めてブックマークや感想など頂ければ、モチベーションにつながります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ