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【書籍化】円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語  作者: 時岡継美
本編

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閑話・コンドルがコンドルになった日1

「どうしよう、俺、大丈夫かな」


 ゴーグルをつけたコンドルが震えている。


「コンドルとコンドルの絆が試される瞬間ね!」

 わくわくしながら言うと、コンドルが大きなため息をついた。


「それ、励ましにも慰めにもなってねーから!さらにプレッシャーかけてどうしたいんだよっ、赤毛!」


 ちなみに、わたしはもう髪を赤く染めてはいないのだけれど、二人っきりの時だけコンドルはわたしのことを相変わらず「赤毛」と呼ぶ。

 なぜ二人っきり限定かというと、騎士団の体験訓練に参加していた赤毛のアーシャが実はわたしだったということを知られたくないから…だけでなく、レイナード様が拗ねるからだ。


 コンドルがわたしのことを、特別な呼び名で呼ぶのが気に入らないらしい。

 コンドルはわたしにとってはただのコンドルであって、コンドル以外の何者でもないといくら説明しても

「それでも気に入らない。ていうか、それ意味が分からない」

の一点張りだ。



 今日は、ルシードとディーノが中心となって作った「コンドル1号」のテスト飛行を実行する日で、わたしとコンドルは今、学院の校舎の屋上にいる。


 鳥が羽を広げた形を模して組んだ木枠に軽くて丈夫な布を貼り、風魔法を付与したもので、補助の素材はコンドルの風切り羽とグリフォンの羽。

 その下に革製の丈夫なベルトとグリップを付け、乗り手の上半身を固定する設計になっている。



 コンドルが乗り手となったきっかけは、わたしとコンドルが魔導具研究室で鉢合わせたあの日のことだった。


 コンドルを乗り手に推したものの、怖いと断られ、じゃあわたしが!と思ったら、わたしには魔導具禁止令が下っている事実が判明して、いきなり暗礁に乗り上げたように思われたのだけれど、ルシードの一言で事態が好転した。


「コンドルさん、試しに魔力を測定してみてもいいですか?」


「ちなみに俺、フレッド・ハウザーな」

「え、コンドルさんじゃなかったんですか?」

 そんな会話を交わしている二人に近寄って、コンドルの手のひらに乗せられている魔力計測器を見て驚いた。


 黄緑色、すなわち風の魔力が円の4分の1。

 ルシードが「えっ」と驚いてそれをディーノに見せる。


「すごいな」

「コンドルすごい!あなたやっぱりコンドルなんだわっ!」

「コンドルさん、すごいじゃないですか!僕より風の魔力あるかもしれませんよ!」


 わたしたちに「すごい、すごい」と言われたコンドルは、気をよくして魔導飛行機が完成した暁には自分が乗り手になることを了承したのだった。


 チョロいわね。

  

 

「ところで去年の設計図、あのときまだ僕、入学したてで口を挟めなかったんだけど、魔導回路、少しおかしかったよね」

「そうなのか!?」


 ルシードの発言に驚いたディーノは、研究室の奥から丸められた大きな図面を持ってきて机の上に広げる。


 ここと、ここ、おかしいよね?と言うルシードに、ディーノは少し考えている様子だった。

「でもさ、これって先生が最終的にGOサイン出してるんだろう?先生も気づかなかったってことか?」


「うーん、そこまではわからないけど、失敗を繰り返しながら少しずつ完成に近づけばいいと思っていたのかもしれないよ?」


 その大きな設計図を横から覗いてみたけれど、わたしには何が何やらさっぱりわからない。


 邪魔をしても悪いと思って、「じゃあ、わたしはこれで…」と暇を告げて、まだグリフォンの羽を持ったままであることに気づいた。

「これ…もう必要ないってことでいいのよね?」


「ちなみにそれ、ずいぶん小さいですけど、グリフォンのどの部分の羽かわかりますか?」


 振り向いたルシードに尋ねられて、コンドルとともに首をかしげた。  


「どこかしら?」

「幼鳥の羽だから小さいけど、グリフォンは下半身がライオンなんだから、上半身のどこかだよなあ?」


 そりゃそうでしょーよ!


 しかし、コンドルのその言葉に、グリマン兄弟は「「ええっ!?」と声をそろえた。

「幼鳥って…子供だったんですか?」


「そうよ、餌を狩る練習をしている巣立ち前の子供だったの」


「わあっ、すごいな」

「それを早く言えよぉ!」


 いやいやいや、あなた方が興奮するポイントがいまいちわからないんですが?


 ルシードからの説明によれば、幼鳥の羽は「伸びしろ」がたくさんある「超レア素材」なんだとか。

 多少状態が悪くても、メリットのほうがはるかに上回るらしい。


 俄然張り切りだした魔道具師の二人は、コンドルに体重は?とか胴回りを測らせてくれとか言い始め、わたしはグリフォンの羽の使い道が決まったことに安堵して、レイナード様と共に研究室を後にしたのだった。

 


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