兄弟1
ルシードは、ほんの少し会わなかった間に急に背が伸びていた。
グリフォンの羽を持って魔導具研究室を訪れてみたら、わたしと同じか、少し背が低いぐらいだったはずのルシードをやや見上げる状態になっていて、あんぐり口を開けてしまった。
「どうしたの、ルシ?妙な魔法で細長くなっちゃったの?」
まさか!といってルシードが笑う。
「16歳でやっと成長期が来たみたいで、毎朝起きるたびに背が伸びている気がするんですよね」
ルシードの足元を見ると、制服のズボンから細い足首がにょっきり出ている。
やっとじゃないわ、あなた本当は14歳なんだもの。
いま成長の適齢期真っ只中なのよ!
「ルシ…あなたきっと、とんでもなくかっこよくなるわよ」
あなたのお兄さんみたいにね。
思わずそう言いそうになったけれど、それを「シア」といつもより低い声で呼ぶレイナード様に止められた。
ひとりで行くと言ったのに、レイナード様はどうしてもついて行くと言って聞かなかったのだ。
「今、聞き捨てならないことを言ったね?『とんでもなくかっこいい』っていうのは、俺よりもかっこいいということかな?」
なに張り合ってるんですか!
「レイ、あなたがお花を見て綺麗だと思うのと同じよ。この蕾はきっと大輪の花を咲かせるだろうと思っただけよ」
あら、自分で使ってみると、これって便利な言い訳ね。
そこへ、ルシードの継兄のディーノとともにコンドルが入って来た。
「あら、コンドルじゃない、元気そうでよかったわ」
コンドルもわたしの顔を見て「あ!」と言った後、くしゃっと笑った。
「ステーシアさんも、元気でよかった」
コンドルと会うのは、あのキャンプ以来だ。
あの体験訓練に参加していた生徒たちには、「赤毛」の正体がわたしであることもレイナード様のことも秘密のままになっているけれど、コンドルはあの後、父親であるハウザー辺境伯を通じで騎士団のほうに「赤毛」の安否確認と、グリフォンから助けてもらったお礼を言いたいと言ってきたらしい。
そこで父が、実はあの「赤毛」がわたしだったことと、救出されて元気にしていることを伝え、学院内ではこの件に関して何も知らないという態度で振る舞って欲しいとお願いしたんだとか。
「コンドルくん、何の用かな?」
同じく部外者のはずのレイナード様が、いきなり高圧的な態度に出ている。
あらあら、なぜかレイナード様の機嫌がさらに悪くなってしまったわ。
「赤毛の友人に、コンドルの羽を手に入れたらここに持っていけって言われて、場所がよくわからなくてウロウロしていたら、案内してくれたんだ」
コンドルはそう言ってカバンから立派な風切り羽を取り出し、横に立つディーノを見た。
「赤毛のお友達?」
首をかしげるルシードに慌ててわたしが補足する。
「あのね、コンドルはきっとコンドルと相性がいいから、もしもコンドルがコンドルの羽を持ってきたらそれで何か作ってあげて欲しいってことだと思うわ!」
「言ってることがよくわからないんだが?」
ディーノがつぶやいた。
「ああ、人間みたいな飛べないコンドルってあなたのことなんですね」
納得したようにポンっと手を叩くルシードに対し、コンドルは戸惑いながら
「いや、俺、普通の人間だけど」
と言ったのだった。




