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【書籍化】円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語  作者: 時岡継美
本編

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騎士団の体験訓練2

 ウォーミングアップ、走り込み、木刀を持っての素振りでいい汗をかき、ランチタイムになった。


 騎士団の食堂の一角に固まり、肩を並べて実際に騎士団のみなさんが普段食べているものと同じメニューを食べた。


 体を動かす職業のため、昼でも肉料理が多いらしい。

 この日は、塩気がしっかりきいた厚切りのベーコン、キャベツの酢漬け、レバーペースト、ハード系のライ麦パン、ひよこ豆のスープ、柑橘ゼリーで、おかわり自由というメニューだった。


 ライ麦パンの真ん中を手で開くと、中にレバーペーストを塗り、ベーコンとキャベツを挟んでかぶりついた。


 ああ、体をしっかり動かした後の食事はなんて美味しいのかしら!

 しかも堂々とお行儀悪く、大きな口を開けてかぶりつけるだなんて、素敵!


 もぐもぐしながらふと隣を見ると、女子軍団は「ナイフはないのかしら?」とキョロキョロしながらベーコンをどう一口大に切るかで頭を悩ませている様子だった。


 騎士団の食堂ではそんな上品な食べ方なんてしないのよ?

 あなたたち、何しに来たの? 


 そう思いながら食べ続けていたら、次兄のスタンが食堂に入ってくるのが見えた。


「見て、スタン様よ。やっぱり、かっこいいわね」

「同僚の方と笑ってらっしゃるわ、笑顔も素敵ね」


 ―――っ!

 この人たちまさか、お目当ての騎士を間近で見たいがために体験訓練に参加しているの!?

 そりゃ、命がけのわたしと温度差あるわけだわ。


「ねえ、アーシャさんは、スタン様やレオン様とご親戚なんでしょう?」

正面に座る女子が話しかけてきた。


「え!ああ、うん。でも曾祖父同士が兄弟っていう遠縁でね、あまりお話したこともないのよ、ははっ」

 親しい間柄と言おうものなら、私物をもらってきて欲しいとかせがまれそうだ。


 スタンお兄様は、レオンお兄様以上に粗野でお馬鹿なのにどこがいいのかしら。


 長くつなげたテーブルの一番向こうで学生と一緒に食べているレオンは、男子たちからあれこれ質問されているのか笑顔で談笑している。

 面倒見の良さは、さすが長男だと思う。 


「そういえば先日の学年末パーティーで、レオン様がレイナード様と何か揉めてらしたそうよ」

「妹がないがしろにされているんですもの、正義感の強いレオン様が黙ってらっしゃるはずはないわよね」


 あらら、あの場面を誰かに見られていて、しかももう噂になっているのね。

 噂ってこうやって広まっていくのね?


 まさか、その揉め事の当事者がもう一人ここにいますとも言えず、黙って彼女たちのヒソヒソ話に耳を傾けながらスープを飲んだ。


「でもレイナード様は、長期休暇を利用してナディア様の国をご訪問されてらっしゃるのよね?」

「ええ、ナディア様ご本人が、レイナード様と一緒に里帰りするとおっしゃっていたから、間違いないわ」

「あのお二人って、もうそこまで進展していたってことね…ではステーシア様は、このままでいくとやっぱり…」


 ストップ!ストーップ!!

 レイナード様がナディアの国へ?それは初耳だけど、彼があのとき「もうしばらくしたら全部解決する」と言っていたのは、まずナディアの両親に自分たちのことを認めてもらって味方につけてから、わたしとの婚約を破棄するってことなのかしら。


 随分と用意周到であり、なりふり構わずという気がするけれど、やはり一度盛大に発表している王太子の婚約を破棄するには外堀から埋めないといけないということか。

 レイナード様とナディアは何一つ隠そうとはせず、いちいち目立つことを堂々としているから噂の的になるのもよくわかるし、もしも自分が当事者ではなかったら、きっとわたしもその噂話に首を突っ込んで興味津々だったことだろう。

 貴族のご令嬢は噂話がお好き。

 よく覚えておいて、自らの行動も律することにしよう。


「とっ、ところで!あのパーティーのステーシア様のドレスは、服飾科のマーガレットさんが手がけたものらしいわね!」


 あまりに唐突に、強引に、話題を変えてみた。

 自分のことを「ステーシア様」と言うだなんて背中がむずがゆくなるが、致し方ない。


「まあ、あの素敵なドレスは生徒の作品だったの?」

「わたくしもステーシア様ご本人がそうおっしゃっているのを聞きましたわ」

「ダンスのときにふわりと広がってキラキラ光っていたあのスカートが素敵だったわよねえ、わたしも機会があればマーガレットさんに仕立ててもらおうかしら!」


 唐突な話題の変更にもフットワーク軽く乗ってくる彼女たちは、ある意味優秀だ。


 マーガレットのドレスのいい宣伝になったのかしら。


 彼女たちに噂話でこれを広めてもらって、日頃お世話になっているマーガレットへの恩返しになりますように。





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